表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/12

Program 4

朝早く、全員が窓辺に並んで外を眺めていた。

「嘘…。」


なんと、今日、この森に雨が降ったのだ。



「雨だぁぁぁぁぁぁ!!すごーいっ!何ヶ月ぶりだろう!!雨!!」

たかが雨に恐ろしいほどのテンションで暴れまわる来夢。

「雨ーーーーっっ!!」

あげく、茉莉音の肩をつかんで前後に揺らした。

「茉莉音ぇぇ!!雨だよぉぉぉ!!」

「あっあわわわわっやめてぇぇぇ」

確かに、久しぶりの雨だ。いや、私がここに来てから初めての雨だ。


それにしても、雨が降っては外に行けない。とても暇だ。



「みんなぁー。」

パタパタと小走りで歩いてきた茉莉音が手に持っていたのは、なんと


「じゃぁーんっ!人生ゲームっ!」



「あっ貴春、離婚だって。」

「えぇぇ!?離婚!?」

「あーあ、春くんの幸せもここまでだね!!」

「そんなっ!!」

私たちは、茉莉音が持ってきた人生ゲームをテーブルに並べ、全員でゲームをしていた。でも、5人用なので、れみと幸紀は二人で一つだ。


「あ、私、社長になる。だって!やったぁっ!」

「えっ!?また茉莉音儲けてるじゃん!!」

さらに、みんなの意外な一面も。茉莉音は人生ゲームが得意だ。だから持ってきたのかも知れないけど。

「れみたちもうすぐゴールだよぉ」

あと何マスかでゴールの所にきている若桜コンビ。

「でもこれってゴールしたら死ぬんじゃね?」

「…。」

幸紀の一言に空気が凍りついた。

「人間、いつかは死ぬんだよ…。」

冷や汗をタラタラ流しながら来夢が言った。

「そんなっ!それじゃあ終わってしまうの!?れみとお兄ちゃんの美しき薔薇色ライフが!!!?」

「美しくも薔薇色でもないけど終わるな。」

「だ、だめっ!ゴールしちゃだめ!!」

誰だよ、さっきまでゴール目前で浮かれてたやつは…。

「ふふーんっじゃあ俺が先にゴールするぞ!!」

むっつーは勢いよくルーレットを回した。

「4だ!まさか、これは…!」

いち、に、さん、とマスを進むむっつー。そしてついに…


「よっしゃー!ゴーールっっ!!」

今回、初のゴールだ。

「むっつー、御愁傷様…。」

「えぇぇぇぇ!!!?生きてる!!まだ生きてるぞ!?」

来夢がむっつーに向かって手を合わせた。私も手を合わせて、頭を下げた。

「やめろぉぉぉぉぉ!!!!」



無事人生ゲームが終わり、時刻は12時前だった。

むっつーの直後に死ん…ゴールした茉莉音は早くも昼食の準備をしていた。

「おっ!今日は焼きそばですかっ!!」

早速出来上がった焼きそばをテーブルに運んだ。

未だにゴール出来ていない貴春からコマを奪い取り、「春くんの人生はまだまだこれからだよ!!」と来夢は言った。

なんかかっこいいこと言ってたけどしれっとコマ没収したよね…。


久しぶりにこういう1日もいいな、と思った。人生ゲームなんて初めてやったし、(借金に追われたままゴールしたことは忘れたい)何より楽しかった。



15時半頃、少し空腹になる頃だ。

キッチンの前を通ろうとしたところで、誰かに呼ばれた。

「桔梗ちゃん、ちょっと。」

声のする方を見ると、キッチンに茉莉音が立っていた。

「ちょっとお腹が空いたから、ホットケーキを焼こうと思ってるの。桔梗ちゃんも一緒に作らない?」

「えっ!?私が!!?」

もちろんホットケーキなんて作ったことない。でも、目の前のホットケーキミックスと玉子などを見ていると、つい…。


「もういいかな?」

「うーん、まだもう少し。」

結局誘惑に負けた私は、茉莉音とホットケーキを作ることになった。

ちなみに、私を誘ったのは「桔梗ちゃんとおしゃべりしたかったの。」ということらしい。

確かに、茉莉音とはあまり二人きりで話したことはなかった。

「すごい…茉莉音、ホントに何でもできるのね。」

「えへへ、料理くらいしかできないよ。」

料理ができることがすごいわ。私がこの間作った料理を見てほしいわ。もはや料理でもないけど。リンゴすらまともに剥けないのに。

「ほら、焼けたよ。」

茉莉音がフライパンからお皿に移し変えたそのホットケーキは、まるでカフェなどで出されるようにきれいだった。


ホットケーキを焼き終えた私たちはテーブルに移り、ホットケーキを食べながら二人で話した。


「そういえば、私がここに来たときに来夢が「夢音」とか言ってたけど、あれって何?」

「あはは。夢音はね、この森、そしてこの家の名前だよ。」

「名前!?あったんだ…。」

見たところ、あの一回しか聞いたこと無いし、いや、新しい住人にはいつも言っているが、まさか名前があったなんて…。

「…ていうか、夢音って何?」

そこが問題だ。なんなんだ夢音って。

「それはね、うーん、まず、一番最初にここに来たのは来夢なの。私は二番目。」

「へぇー…。」

「しばらくは二人で過ごしてたんだけど、来夢がいきなり名前考えよう!って言い出してね。」

茉莉音は、思い出したのか、クスクス笑いだした。確かに来夢なら言い出しそうだ。

「ふふっでもね、名前なんてそう簡単に決められないでしょ?だから、私たちの名前から一文字ずつとったの。」

一文字…?来夢と茉莉音から。つまり…

「来夢の「夢」と、私の「音」で「夢音」。簡単でしょ。」

そんな制作秘話が…!おそらく一文字ずつだそうというのも来夢が言ったのだろう。なんてベッタベタな!!

「まぁ、来夢が考えたんだけどね。」

ですよね…。


気がつくと、もうすっかり雨が止んでいた。

私たちが座っているテーブルに沿ってある窓の外から、来夢が話しかけてきた。

「あれー、二人とも何してんのー?」

来夢は窓から身を乗り出した。

「ふふっちょっと桔梗ちゃんとデート。」

「いいなー!私もデートする!!」

来夢はあわてて窓から降りると、今度は玄関から入ってきて、私の隣に、茉莉音と向かい合うように座った。

「きぃちゃーん、一口ちょーだい?」

「来夢…ホントはホットケーキ食べたいだけでしょ。」

「えへへー」


久しぶりに女子会?のようなまったりした空間にいられた。

そして、新たな訪問者がやって来るのだった。

あけましておめでとうございます!

今年初の更新です!

昨年は謎にあとがきが長かったので今年は簡潔にしていきたいと思ってます。


本編の方は変わらず大容量です!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ