Program 3
朝9時ごろ、朝食を食べ終えた私は外に行き、大きく背伸びをした。
「んんーっ今日もいい天気!」
この森は、基本的にいつも晴天だ。不安になるほど全く雨が降らない。
「きゃぁぁぁっっ!!」
突然、遠くで女の子の声が聞こえた。家の方ではないようだ。
声のほうへ行ってみると、そこには二人の赤髪の少年と少女がいた。
「おーい!なんか声聞こえたけど、どうしたのー?」
家のほうから来夢が走ってきた。
二人はもちろんパニックで、少女は「ど、どうしよう!!どこ?ここ!?」と少年に言っていた。なのに少年は、「…あ?なにこれ?」とのんきなことを言っている。
「あれれ?もしかして、新入りかなー?」
来夢は、座り込んでいる二人を見ると、手を差し出した。
「とりあえず、中においで!」
「はぁーい!私、若桜れみっていいます!!」
155cmほどの身長の少女、れみは手をあげて言った。どうやらこの二人も気がついたらこの森にいたようだ。
「それで、こっちのイケメンさんは若桜幸紀くんでーす!」
若桜…?どこかで聞いたことのある名字だ。茉莉音も私と同じのようで、「若桜…?」と呟いた。
テレビを全く見ない私が知っているのだから、芸能人とかじゃなくて、もっと誰もが知っているような。
全く思い出せない。
「あれー?ちょっと待って!」
まさか、来夢は思いだした…!?なんて、そんなわけもなく。
「んー、カップル?」
ぜんっぜん違った。でも、確かにそう見える。
「そうだよ!れみたち、ラブラブカップル…」
「じゃなくて、双子だから。」
幸紀の鋭いツッコミ。
って…
「「双子!!!!!?」」
思わず叫ぶと来夢と声が重なった。
無理もない。二人は全く顔が似ていなかった。でも、言われるとわかる気がする。ノリとか。
それにしても、れみの幸紀へのデレっぷりはとてつもなかった。まるで本当のカップルのように。身長差もおよそ20㎝ほどで、いわゆるベストカップルだ。
「あーあっ、お兄ちゃんがばらしちゃうからー!!」
あ…本当に兄妹なんだ…。ていうか幸紀は全く気にしてないのね…。
「くだらない嘘つくなよバカ。」
「はぁーい!」
でも、仲良しそうでなによりだ。私には兄弟も姉妹もいないので、少し羨ましかった。
れみ、幸紀がやって来て2日ほどがたったある日。
「すごぉーい!!池があるよぉ!!」
「いや、湖じゃね。」
森を散策していた二人が湖を発見した。
「これ、入っていいの?泳いでいいの!?」
湖だから泳げないことはない。でも、この湖は驚くほど水が綺麗だった。さらに、太陽が反射してより美しく見えた。入りたくなるのもわかる。
「私も入りたいけど、どうやってはいるの?服のまま入るわけにもいかないし…。」
来夢は運動好きの血が騒いだのか、少しうずうずしていた。でも来夢が正論だ。
「来夢ちゃん!!」
湖の反対側から貴春が叫んだ。
「こっちに何故かスク水が置いてあるよ!しかも律儀に人数分あるよ!!」
この森の管理人(いるのかもわからないが)はなんて準備がいいんだ。
「おぉぉぉっ!!さっすが春くん!いい仕事するね!!」
来夢は水着を貴春から受けとると、すぐに家へ走っていった。
「プーーールだぁぁぁぁぁ!!」
早速着替えたのか、スク水姿の来夢が家から走ってきた。そのまま湖に飛び込み、勢いよくクロールを始めた。
他の人たちも着替えを済ませ、やはりみんな勢いよくプールに飛び込んだ。
むっつー、貴春たちは来夢同様泳ぎ始めた。れみと茉莉音は一体どこにあったのか、何故か湖でビーチバレーを始め、幸紀はこっちもどこから持ってきたのか、浮き輪で優雅に浮いていた。
「はぁ…。」
なにこれ…。湖で水遊びを始めた私たちはなんというか、かプールで遊ぶ高校生みたいな。
「痛っっ」
頭になにかが当たった。そのまま落ちたそれを拾い上げると、それはビーチバレーボールだった。
「きぃちゃんもバレーしようよー!」
来夢が手を降りながら呼んでいたので、おそらく当てたのは彼女だ。
「来夢ねー!ボール当てたのー!!」
私は立ち上がると、来夢にボールを投げ返した。そのボールは見事来夢の顔に当たった。
「何すんだよぉー!!」
来夢は地団駄を踏んで「むきー!!」と怒った。私もボールを追いかけるように来夢のほうへ走っていった。
もし、私に友達がいたら、高校でも誰かと仲良くなれていたら、きっとこんな感じだったんだろうな。
私たちは、あれから若桜双子ともすっかり仲良くなった。
れみは来夢といつものように外へ出ていった。
お互い一人になった幸紀と私はカウンターに座って話をしていた。
幸紀は、基本人の話を聞かなくて、いや、聞いてない。
さらに、幸紀から話をふってくることはあまりなかったので、私から質問をした。
「なんでれみはあんなになついてんの?」
「あー、なんでだっけな。」
大事な妹のことくらい覚えとけよ…。
「幸紀は外行かなくていいの?」
「オレは、中にいたいんだ。」
「ふーん…。」
やっぱりこの二人は正反対だ。まるで、それぞれ別の場所で育てられたかのように。
双子だから親は同じなんだろうけど。
「れみはさ…」
幸紀が珍しく話し出した。きっと大事なことなのだろう。私は、黙って聞いていた。
「昔から、ずっと一人で友達がいなかったから、きっとこんなにたくさんの人に囲まれて幸せだと思う。だから、これからも仲良くしてやって欲しい。」
私は、幸紀は本当にれみが大切なんだとわかった。れみは、多少あざといところがあるが、何より素直か人だ。いわゆる、憎めないタイプだ。
今までここで過ごして気づいた。
おそらく、この森に来る人たちは訳があってつれてこられたのだろう。
貴春とブランコで話したときや、れみと幸紀の話や、自分のことだって。
なにか理由があってここに集められたのだろう。でも、きっとその理由は簡単に人に話せるようなことではないことは、私もよく知っている。
だからこそ、こういう空間につれてこられたのだろうか。
私だってなにか訳が…訳が…。
なんで…だ…?私は、なぜこんなところにいるんだろう。普通に高校へ通っていて…。私は、高校ではどんな人物だったんだっけ。中心にいる人だっけ。はじっこで静かにいる人だっけ。そもそも高校へは通っていたんだっけ。
なぜだろう。この森に来る前のことが全く思い出せない。
――ゃん、ちゃん!!
「きぃちゃん?」
「…えっ!?」
突然名前を呼ばれ、びっくりしてしまった。
「どうしたのー?ボーッとして!」
「あ…なんでもないよ。」
来夢ももしかしたら、この森に来る前は…。
「来夢はさ、いつからここにいるの?」
「え?うーん、だいぶ昔からいるよ。今が何年かわかんないからうまく言えないけど、一年半くらいかな。」
一年半…。そんなに長くいるんだ。
「ここに来る前、なにしてたか覚えてる?」
ずいぶん思いきった質問だ。でも、来夢なら。
「ごめんね、覚えてないんだ。」
「そっか…。」
やっぱり、私と同じように覚えてないのか。
「でもね、それはみんな同じだよ。きぃちゃんもそうでしょ?」
来夢の発言に少し驚いたが、確かにそうだ。
「…うん。」
「でしょ!大丈夫、きぃちゃんだけじゃないよ。私も一緒!」
来夢は、いつも何も考えていないようにみえるが、私が悩んでいるときや落ち込んでいるときに、いつも安心するような答えを出してくれる。
こんな人だからこそ、みんな来夢についていくんだろうな。
「きぃちゃんやみんなが困ってるときに、支えてあげるのが私の仕事!というか、それくらいしかできないから。」
ニッと笑って小さくガッツポーズをする。加えて、「私が助けるよ!!」と言った。
前にも、誰かにこんなことを言われた気がした。
いつのことだったのかも思い出せない。
第3話!!
新キャラです!
いやー、この2人はホントにラブラブで…
言っちゃうと顔も全く似てません。
あ、設定では親が違うとかそんなことは全くありません
正真正銘双子です
それにしてもですね、この話はどうのあとがきのネタが無くて困ってます(笑
というわけで、今回はここで!
みなさん、よいお年を!