Program 2
「大変だぁぁぁぁぁ!!」
朝7時。早くから来夢が騒いでいた。
「来夢ちゃーん?どうしたのー?」
「大変なんだ!茉莉音が、風邪ひいたんだ!!」
なんだ、風邪か。風邪なら騒ぐほどのことでもないじゃないか。
「ぅー、お前らうるさいぞ!!」
来夢と貴春の声を聞いて出てきたのはむっつーだ。おそらく、今起きたのだろう。
「あっ!むっつー!!大変だ!茉莉音が風邪なんだ!!」
「なっっ!?風邪!!?」
だからそんなに騒ぐようなことなのか…?風邪なんて1日寝てたら治るだろう。
「そんな…!それじゃあ…」
「「誰がご飯を作るんだ!!!!」」
そこかよ…。
香ばしいトーストの香りがする頃、なぜか私は茉莉音の代わりにキッチンに立っていた。
「さっすがきぃちゃん!!花嫁修業完璧だね!!」
フォークをカンカンと鳴らしながら椅子に座る来夢。
「何で私が…。他に料理できる人いないの?」
茉莉音が寝込んでしまい、誰も料理ができないということらしく、仕方なく私が作っていた。
私も料理は得意ではないが、他の3人に任せては不安すぎる。
「ふぅ、まぁこんなもんでしょ!」
テーブルに四人ぶんの朝食を並べ、自分も席についた。
「桔梗ちゃん何でも出来るんだ!!」
「いや、何でもじゃないけど…。」
料理だって調理実習くらいでしかやったことない。いや、調理実習もまともにやってないか。
「でもおいしいよー!」
「え!?来夢ちゃんもう食べてるし!」
フライングする来夢に続けて貴春、むっつーも食べはじめる。
「なんか、あれだよな。調理実習で作ったみたいな…。」
むっつーが味噌汁を飲みながらドストライクすぎるコメントし、他の二人も「ちょ、調理実習…。」みたいな顔をした。
「ど、どうせ調理実習以外で料理したことないわよ…。」
料理もできない人たちに言われたくないわ!!?
「大丈夫だよきぃちゃん!私、スパゲッティを炊飯器で炊いたことあるもん!!」
なぜ炊飯器に入れようと思ったの…。私は水で冷ましたことならあるわ…。
「二人とも、料理してる時点ですごいよ!僕、電子レンジの使い方わかんないもん!!」
それは料理以前の問題ね!?機械オンチにも程があるわ。
「俺は、キッチンに立つことすら許されなかったぞ。」
茅ヶ崎家では一体何があったの…。
あ…そういえば…。
「ここって、テレビもカレンダーもないよね。」
そう、テレビがなければラジオも新聞もない。まるで外の情報を遮っているかのように。
「うん!でもいらないかなって!」
まぁそうなんだけどね。ちなみに、時計はちゃんとある。
「はぁ…なんでこんな…。」
朝食を食べ終えた私たちは、いつもは基本自由な時間、というかすることがないんだが、私は食器を洗っていた。
あと、もう一度茉莉音の様子見に行かないと…。昼食、夕食も作らなきゃいけないし、茉莉音は毎日これをやってるんだと思うと、本当に大変なんだと思った。
――コンコン。
「茉莉音?入るよ。」
茉莉音の様子を見るために、私は彼女の部屋にやって来た。
「あ…桔梗ちゃん。ありがとう。」
茉莉音、少しつらそうだったが、そんなに重症ではなさそうだ。
「朝食、桔梗ちゃんが作ってくれたんだよね。」
「あ、うん。なんか、茉莉音大変だね。毎日料理してて。」
茉莉音の仕事は実に大変だった。
「そんなことないよぉ、私、料理するの好きだし。」
あっ…すっごいいい子だ。他の3人にも見習ってほしいよ、本当に…。
気がつくと、もう11時を過ぎていた。
「私、そろそろ昼食の準備しないと。じゃあ、また来るね。」
「うん。」
そうして、キッチンへ向かった。
私は昼食なんてもちろん作ったことはない。なにを作ればいいんだ…?いつも給食とかなに食べてたっけ?
棚を適当に漁っていると、あった。私にも作れるものが。
「なんかすっごいいいにおいするよ!!」
鼻を利かせてやって来たのは来夢だ。
「むむむっ?この香りはまさか!みんな大好き!!カレーライス!!!?」
そう、カレーライスだ。これを作れないという人はいないだろう。
来夢は、今度はキッチンと向かい合わせにあるカウンターに座った。
「ん!?まさか、カレー!!?」
匂いにつられたのか、次のやって来たのはむっつーだ。
「ふふふっ私ね、カレーに水いれなくて、ルーが溶けてないパッサパサのカレー作ったことあるよ!」
また始まった…謎の大喜利…。流行ってんの?
「俺、カレーよりハヤシライス派!!」
「えーっ!?カレーのほうが美味しいよぉ!!きぃちゃんは?」
「私、カレー派。」
もちろんカレー派だ。ハヤシライスなんて邪道だ!!
「ハヤシライス美味しいのに…。」
むっつーの呟きも「はいはい。」と適当に聞き流し、今回はカウンターで食べる感じなので、カウンターにカレーを並べた。
「わぁぁ!カレー!!僕、カレー派なんだよね!!」
まるでさっきまでの会話を聞いていたかのようにやって来る貴春。
さらに、むっつーに追い討ちをかけるように、「ハヤシライスなんて邪道だよね!!」と言って席につく。そこだけは同意だわ。
「ひさしぶりにカレー食べたなぁ。」
早くも昼食を食べ終えた来夢は、満足そうに言った。
確かに、私もカレーはひさしぶりだ。四人とも食べ終え、食器を片付けているときに、むっつーが勇気を振り絞って出した、「カレーも美味しいよね…。」という一言には、3人とも見事スルーした。
どうしよ…。夕飯なんて何を作ればいいんだ…(2回目)
またもいろいろな棚を適当に漁る。
「ん?なにこれ…?」
一番下の段の奥の方に、何か大きなものがあった。棚からひっぱり出してみると、
「これは…!!」
私はそれを見て、冷蔵庫のなかを確認した。
「よし…いける!!」
19時前、夕食の準備を進める。
「きーぃーちゃーんっ、今日の夕食なーあーに?」
スキップをしながら寄ってきたのは、もちろん来夢だ。基本、料理をしているときに一番食いついてくるのは来夢だ。
「おぉぉぉ!!これは、まさか!!!?」
来夢は台所に置いてあったものを見ると、「まさか!?そんな!!!?」とそれを眩しそうに見て言った。なんとノリがいいことか。
驚くのも無理ない。またもみんな大好き!そう、今夜は…
「焼き肉だぁぁぁぁ!!!!」
先に言われてしまったが、そう、焼き肉だ。棚の中にあったのは、大きなホットプレートだった。
「す、すごいよ!きぃちゃん!!」
来夢は跳び跳ねて喜んだ。まさかこんなに喜んでもらえるとは…。
テーブルにホットプレートと肉を並べ、焼き始めた。
きっと匂いにつられたであろう、貴春とむっつーも来た。
「ま、まさか焼き肉!!?」
やはり二人も焼き肉は好きなようだ。私たちは、肉を焼きながら少しずつ食べた。
「あ、これ焼けてるわ。」
私が言うと、むっつーはその肉をとった。
「ん…これ、まだ中赤いぞ。」
「…牛肉だから…大丈夫よ。」
「いや、これ豚肉だし…」
「……。」
な、なによ!むっつーがとったのが悪いんじゃない!!
「これ、二種類あるけど、違うやつなんだよね?」
「焼いたらどっちかわかんないよ!!」と加え貴春は言う。確かにそうだ。
でもどっちもあんまり変わんないよね!?大丈夫だよね!?
夕食後、私は不細工に切られたリンゴを持って、茉莉音の所に行った。
「なんか…茉莉音、いつもありがとね。」
「えぇ~?どうしたの、急に。」
茉莉音は、クスクスと笑った。
今日私は、心から茉莉音に感謝した。
やはり、茉莉音はただの少女ではなかった。
彼女なら、私と違っていいお嫁さんになれるはずだよ!
なぜか、自分のことが情けなくなる1日だった。
はい、2話です
なんか、もうあとがきのネタ無いですね、はい。(笑
ちなみに、ちょいちょい入ってるエピソードは、たまに実話です。
私がやらかした実話です。
というわけでですね、次回、新キャラ登場です!
あっ言っちゃった!
前回のあとがきを見直したら、あまりに長くて!ビックリ!!
なので、反省して今回はここまで!
あ、最後に一つ!
新作「If Not」よろしくお願いします…(チラッ
ではでは、さようなら!