Program 9
ふらふらと歩きながら、私はやっとこさで玄関のドアを開けた。
そして、背中に持っていた大きな荷物を床に置いて叫んだ。
「もう…無理…!」
時は遡ること1時間前。
外の森を散策していたところ、私は近くに小さな小屋を見つけた。
4畳ほどの、実に小さな小屋だ。
気になってなかを覗くと、そこには一人の少女がいた。
彼女は、小屋の中ですやすやと寝ていた。
ふわふわした衣装に身を包み、優しく結い上げたおさげ髪をした、鮮やかな金色の髪の少女だった。
第一印象は、まさに妖精。
と言っても、実に汚い小屋の中だが。なぜこんなところで寝ているのか…。
そこに、ある人物が現れた。
「なにしてんだ、こんなとこで。」
振り向くと、そこにいたのは幸紀だった。
幸紀は、小屋のなかを覗き、なかの少女に気がついたのか、軽く呟いた。
「なにそいつ、妖怪?間違えた、妖精?」
そう淡々と言い続けてる幸紀は、一切顔色を変えなかった。
妖精と妖怪間違えるって…。
「で、誰それ。」
頭を掻きながら呟くと、小屋の中に入っていった。
「んー…なんか、いたかんじ?」
どう説明すればいいのかわからず、とりあえず適当に言ってみた。
「なんだそりゃ、じゃあどうすんの?」
私の言葉に首を傾げ、複雑そうな顔をした。
「とりあえず、家に連れていく?」
私は、基本はこうするだろうと思い、提案した。
だが、幸紀は納得しなかったようで。
「お前それ、誘拐っていうんだぞ。」
「違うわよ!!」
そう言って私は小屋のなかに入り、少女を抱き起こし、幸紀に差出した。
「はい、幸紀。おんぶして。」
例え相手が女の子だろうと、誰かを抱えるなんて無理!と思った私は、幸紀に押し付けることにした。
そんな幸紀は、少女を見て言った。
「いや、無理だから。」
「えっ!?」
幸紀は「無理無理。」と言うように、首を横に振った。
「は!?じゃあ私が連れてけっていうの!?」
私は思わず落としそうになった少女を、もう一度抱き直した。
「いや、全然平気そうじゃん。」
私のそんな姿を見て、うんうんと頷きながら、幸紀は去っていった。
「ちょ、待って!?幸紀ー!?」
なすすべなく、幸紀に置いていかれた私は、仕方なく少女を連れていくことにした。
そうして現在にいたるわけで…
少女を抱えて現れた私の姿を見た茉莉音は、すぐさま駆け寄ってきてくれた。
「桔梗ちゃん!?どうしたの?」
茉莉音は、座り込む私に手を差し出した。
「そこの小屋で見つけて…連れてきた…。」
私は、息が切れて途切れとぎれの声で言った。
そして、そんな私なんてお構いなしに、テーブルで熟睡する幸紀を軽く睨んだ。
一生恨んでやるんだから!!
そんな小学生のような事を考えていると、近寄ってきたのは
「きぃちゃーん?誘拐したんだって?」
ニコニコしながらやって来た来夢だ。
「誘拐してないわよ!!」
私は、むっとして返した。
そんな来夢は「てへーっ」と頭を掻いた。
今、ちょっとイラッとしたわ。
隣では茉莉音が、床に寝転がって爆睡する少女を運ぼうとしていた。だが、少女は全く動かない。
「っ…くぅ…!」
頑張って抱き上げようとするが、ピクリとも動かなかった。
「うぅ…重いよぉ…!」
そんな声を漏らしながら力をいれるが、やはり動かない。
いやいや、その子そんなに重くなかったから!スリムな少女だから!!
なんか私が怪力みたいになってるけども!?
茉莉音は、私より身長は高いはずなのに、力は全く無かった。
来夢も参加して抱き上げようとするが、動かない。
そろそろその子がかわいそうになってきたよ…。今起きたらどうすんのさ!?
「ん~…ぅ…ふぁぁ~…。」
すると、少女は大きくあくびをして、目を開けた。
「ぅー…あれ、打ち上げは…?」
少女はむくっと起き上がると、目を擦りながら呟いた。
打ち上げって何!?どんな夢見てんのこの子!!
そんななか、起き上がった少女に向かって、来夢は言った。
「おはよう!私、来夢!よろしくね!」
いや、唐突すぎるから!?あきらかにこの子、頭に?浮かんでるよ!!
少女は「んん~?」と唸って、口元に手をあてながら首を大きく傾げた。
「ここ、どこですかぁ?」
今度は、周りをキョロキョロしながら呟いた。
「君の住む家だよ!!」
来夢は親指を立てて言った。
説明下手すぎ!!
「なるほどぉ!わかりましたぁ、よろしくお願いしますね。」
少女は手をポンッと叩いた。
えっ!?今ので理解したの!?理解力高すぎ!!
そして、また小さくあくびをして呟いた。
「私さっき、アカデミー賞の主演女優賞に選ばれる夢見たんです。」
そう言ってまたあくびをした。あくびしすぎ!
そんな話に一番食いついたのは、来夢だった。
「すごい!!何の映画に出たの?」
「えっとぉ、監督、シナリオ、全部私で、私は木の役をしたんですよ。」
全部自分でやっといて木!?どんだけ素晴らしい木だったんだ…しかも監督が自分なら、自ら木を選んだってこと!?
「へぇーっ!木の役なんてそうそうできないよ!ちなみに今の、ダジャレね!」
「え?あ、えと…はい。」
そんな来夢の一言には、少女も思わず苦笑いした。
だが、来夢ははっとしたように少し上を向いた。
「そうだ!君、誰!?」
遅っっ!!遅いよ!!一番始めに聞くべきじゃないの!?それ!!
「あぁ、私、三条えまって言います。よろしくお願いします、むーちゃん。」
「おぉ!えまちゃんね!ていうか寝起きの状態の一瞬で名前覚えてあだ名までつけたの?すごいね!天才だね!」
むーちゃん、と呼ばれた来夢は、小さく拍手をしながら言った。
すると、少女のお腹から「きゅるるる~」と、可愛らしい音がした。
少女はそんな音に気がつき、お腹を押さえて小さく丸まった。
「うーん、お腹が空きましたぁ。」
少女の、そんな一言を聞き逃さなかった茉莉音は、早速エプロンを着けてキッチンへ向かった。
茉莉音が調理をしている間、えまちゃんは持ち合わせていた恐るべし順応性で、すっかり夢音に溶け込んだ。
「また負けちゃいましたぁ!」
ババ抜きをしていた、来夢とえまちゃんと貴春は、テーブルに並べられたトランプを、回収しているところだった。
「えまちゃん弱すぎ!!全部顔に出てるから!!」
貴春が指を指して言う。そう、端から見てもわかるほど、えまちゃんは分かりやすいのだ。
「君たち、おもしろそうなことしてるね。」
そんななか、ババ抜きに乱入してきたのは声だ。
「僕も混ぜてよ。」
「えぇー!声が入ったらなんか怖いからやだー!罰ゲームとか追加されそうだし!」
ぶーぶー、と文句を言う来夢をはね除け、声は輪のなかに無理矢理割り込んだ。
「いいね、罰ゲームもつけようか!最下位の人は、貴春のモノマネで。」
「なんで!?ちなみに僕が最下位だったら…?」
「自分で自分のモノマネをするに決まってるじゃないか。」
「とりあえず勝っても負けても、僕にメリットはないんだね!?」
声とそんなやり取りをしていた貴春は、少し離れたところで見たいた私に気づいたのか、手を振って呼んだ。
「おーい、桔梗ちゃんもやらないー?」
「っ~やらないわよ!!」
私はそっぽを向いて断った。
そんな私を見て、えまちゃんは首を傾げて言った。
「私、ききちゃんとババ抜きしたいです…。」
口元に人差し指を添えて、じーっと私のことを見つめた。
「…やるわよ…。」
そんなに見つめられたら、そう言うしかないでしょ!?そんな純粋な目で見られたら!!
ぶっきらぼうに言ってしまったことを、少し後悔しながら、えまちゃんの隣に座った。
えまちゃんは、隣に座った私を見て、ニコッと笑った。
その笑顔は、まさに妖精のように可愛らしい笑顔だった。
だが、また新たに厄介な住人が増えたのに、変わりはなかったのだった。
ここでまさかの新キャラ登場!
えまちゃんです
ゆるふわ系女子です
個人的に女子では一番好きかもしれない子です
そしてまたも来夢のばかが発動します
ホント馬鹿だなこの子…。
ちなみにおそらく前回更新日、なんと、えまちゃんの誕生日だったんですね。
やっちまったぁぁぁぁぁぁっっ!!!!




