影が薄いです、夜の神ですし
「あま姐さんって、あと2人弟がいたんでしたっけ?」
ヘルに料理を出し、暇になったので雑談をふってみた
「たしかヨミさんと、スサノ…」
二人目を言いかけたところで
「その名を呼ばないで」
すごい目をしたあま姐さんがこちらに来た
『…はい』
僕とヘルは、まあ黙るしかなかった
「そんなに嫌いなんですか?弟第二号さんのこと」
確かあの人のせいであまねえさんいろいろ苦労したんだよなぁ
と、考えていると隣から
「それより、わたしの名前スルーされてませんか?」
「うわぁぉぉ!?」
いきなりの来客に変な声が出た
すごいステルス性能だ…
「えーと、どちら様で」
「ってなるわよねやっぱりぃ!」
「うわぁ!?」
名前を聞こうとした瞬間、すごい顔をずいいと近づけてきた
なんか泣いてる
「やっぱり、影、薄いですよね、私」
なんかすごい土下座して謝りたくなる
ってか本当に誰だろう
黒く長い髪に、白の着物、頭には三日月の形をした冠のようなものをつけている
そして特徴的なこの飾り気のない目
「あの、もしかしてヨミ?」
と、あま姐が1人の神の名前を呼んだ
「もしかしてもなく私はヨミいぃ!」
また僕に顔を近づけて泣き出した
怖い
「あの、ヨミさん、」
と、名前を呼びかけた時、ヨミさんはウィンクをしてぺろっと舌を出し
「ヨミちゃんでよろしく!」
なんかハートが語尾につきそうな勢いで言った
正直怖い、やっぱりこわい
「で、ウチに来店するのは初めてですよね、ヨミさん」
と、また顔を暗くし
「いやね、私、開店当時からいるよ…」
ほんっとすいません、マジで、ほんとに
「でも、本当に目立った神話とかないですよねー、ヨミちゃん」
さらっとヨミちゃんと呼んでるヘルに感謝
「まあ、そうなんですよね、生まれてから、アマテラスねぇさんと、いざ、じゃなくてクソ野郎の神話しかないですもんね、ほとんど」
泣いて、顔を近づけくる
よく見ると、美人だ
やっぱり女神様みんなきれいなわけだな
「へ?」
「へ?」
「ヴェ?」
最後、音変
ってか、何?俺やらかしちゃった?
思ってること言葉に出すとかやっちゃった?
「そのとうりです、大将」
「また他の女の前で女を淡々と口説くとは、アホですか?」
うぐぅ!
「と、とりあえず落ち着こ?ね?みんな?」
あまねぇもヘルも、いつものことなので免疫ついたのか、すんなりと許してくれる、はず
「まあいいでしょう、いつものことなので」
「そうですね、大将の女癖の悪さには、もう諦めてます」
「いやヘル!?その言い方は誤解招くからね!?」
「うるさいですヤリチ…」
「あーもーそこまで!下ネタそこまで!」
おさまったけど、二次被害がハンパない
で、ヨミさんはというと
「かわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいい…」
なんか壊れてます
「あ、あの、ヨミさん?」
「は、はいぃ!?」
目を丸くし、伏せた顔を勢いよく上げた
「そういえば、ヨミさんって、男か女、どっちかわからないんでしたっけ?」
このタイミングで聞くのもどうかと思うが、とにかく他の話題が欲しい
「あ、そうですね、ウィ○ぺディア見ても、わからないって書いてありました」
いろんな本に名前が出されてないので、男女かわかる資料がない、とは言わないでおこう
「トイレとかって、どうしてるんです?」
ヘルが、切り替えてすごい率直な質問をしてきた
「普通に女子トイレですが?」
こちらもすごい率直だ
「何なら今から証明しますよ?脱ぎましょうか?」
と、なんか上着とか脱ぎだした
「ちょっ!?一応男いますからやめてくださいヨミ!」
あまねぇがちょっと慌て気味で止めた
って一応ってなんだよ…
「え?いや、未来のお兄さんなら大丈夫じゃないかと」
「へ?」
ちょっと、思考回路が、追いつきません
「だってあまねぇと結婚するなら、あまねぇの姉妹である私はあなたの妹ですよね?」
…………………
「は?」
ちょっとの沈黙のあと、あまねぇが口をひらいた
「ちょっと、天岩戸に引きこもってきます」
「ちょおおお!?もうわけわかんなすぎて意味わかんないよぉ!?」
「あーさん、大将は渡しませんよ?」
ってこっちもこっちで武器出してるし!
「え?あら?違うんですか?」
ヨミさんはヨミさんですごいぼーっとしてるし
「あーもー、とりあえずみなさん落ち着きましょう」
「…原因が何言ってんですか」
「スイマセン」
謝るほかない…
「で、えーと、ヨミさん、注文は何にしますか?」
「あ、え、あの…じゃあ…」
何か迷って、メニューを見る
で、結局決まらなかったのか
「口から出さなければ何でもいいです」
「…え」
一つだけ、ヨミさんについての神話を思い出した
ヨミさんは、地上に出向いた時、出迎えでなぜか口から食べ物を出した神様を、刀でぶった切ったんですよね
衛生面は、気をつけます