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主人公のまわりで  作者: 菜々子
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佐々木君2

大沢さんに惹かれている事に気がついてから、早速行動に移した。

今までの自分では考えられないぐらい、必死だったと思う。

食堂に始まり、番号やアドレスを書いた付箋を貼って書類を渡したり、大沢さんが帰るぐらいの時間に廊下やエレベータで捕まえて話したりした。

それなのに番号もアドレスも教えたのに、なかなか連絡をくれない大沢さんにじれて

直帰してもよかった出張後にわざわざ総務課まで迎えに行った。


「もう仕事終わりますよね。待ってます。」

大沢さんの目を見つめて、断言する。

案の定大沢さんは

「なっなんで待つの。」

動揺したように真っ赤になった。

おどおどした様子が、可愛い。

わざと会話をかみ合わないようにして、笑いながら大沢さんにプレッシャーを掛けた。

早く帰るよ。

しぶしぶ着いてくる大沢さんを確認してから、

すごい顔の谷さんに忠告する。

「大沢さんの事俺が勝手に好きなだけだから変な事しないでね。」

周りからぎょっとした視線を感じたが、気にならなかった。

男達には牽制にもなるだろう。


「あんな事言ってどういうつもり?」

大沢さんはちょっと怒ったように俺に視線を合わせた。

やっぱり、手料理は無理そうなので俺がよく行く店に連れて行った。

席に着いたとたんに、これだ。

俺は大沢さんから視線をそらさずに言い返す。

「そのまんまのつもりですけど。」

「そっそのまんまって」

また大沢さんは真っ赤だ。

「だから、そのまま。俺は大沢さんが好きってことです。」

なっ、そっ、うそっ。

赤い頬を両手で隠し、ぼそぼそとつぶやきだした。

このまま見てるのも面白そうだけど、

「嘘じゃないですし、番号もアドレスも教えたのに連絡が無いから結構へこみました。

だいたい、これだけアプローチすれば普通察するもんでしょう?」

連絡をくれていたら、今日のような事はしなかったのにと言えば

「そんなの。言ってくれないと分かんないよ。」

真っ赤な顔を俯かせて、大沢さんはつぶやいた。


それから大沢さんの番号とアドレスを教えてもらい、毎日メールする約束を取り付けた。

大沢さんはちゃんと毎日メールを返してくれたし、週末にデートする事も出来た。

だから、浮かれていたのだ。

大沢さんが、嫌がらせを受けているのに気がつかなかった。

家に着いて直ぐ、携帯が鳴った。

田端課長からで、大沢さんが泣いてること。罰ゲームといわれた事など聞いた。

迎えに行きます。

そういって電話を切ると、会社近くの居酒屋へ車で向かった。

運転しながら思ったことは、三上ちゃんと田端課長の時の事だ。

三上ちゃんが受けている嫌がらせに何故気がつかないのかと、田端課長にじれた事があった。

でも、今なら分かる。

好きだから、周りが見えなくなるんだ。

大沢さんから好きとはまだ言われていないが、両思いかもしれないと、期待して舞い上がって。

俺は。

グッとハンドルを握って自分の不甲斐なさを実感した。


「ありがとうございました。」

深々と頭を下げて、酔ってフラフラしている大沢さんを車に乗せた。

途中で悲しそうに罰ゲームとつぶやかれて、心がぎゅっと痛くなった。

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