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主人公のまわりで  作者: 菜々子
5/9

大沢さん2

三上ちゃんの結婚式の翌週。

今日から10日間、三上ちゃんが新婚旅行でお休みなので気合を入れて仕事に取り掛かる。

私は総務課で仕事は、主に出張する営業さんたちの旅券やホテルの手配など。

それを三上ちゃんと谷さんとでやっている。

時間など間違うと大変なので、それなりに神経を遣う仕事ではある。


「大沢さん、お昼お先に行かせてもらいます。」

そういうと谷さんは、さっさと行ってしまった。

谷さんはいつも同期の子達と食堂でお昼を食べているようだ。

「また、谷さんが先番?大沢さんダメよ。ちゃんと言わないと。」

同じ総務課の先輩が声をかけてくれた。

「はい。でもまだ谷さんに遅番は無理なので。」

総務の半分以上が先番でお昼に行くのでこの時間は、数人しか残っていない。

もし何かあったら彼女だけでは、まだ無理だろう。

先輩も苦笑いしながらそうね。と言った。


遅番でお昼に行くと食堂はガラガラだ。

今日は何にしようか。

お昼は日替わり定食とうどんやカレーなどの定番メニューから選べる。

今日の日替わりは、白身魚の甘酢あんかけ。

私の好きなメニューだ、今日は日替わりにしよう。

窓際のカウンター席に座り、いただきますと手を合わせた。

「隣、いいですか?」

びっくりして、お箸を落としそうになった。

声の主は佐々木君だった。

「えっ。どうしたの?」

食堂で佐々木君に声をかけられたのは初めてである。

佐々木君はにっこりと笑うと

「隣、いいですよね。」

といいさっさと座ってしまった。


さっきから、隣の佐々木君が気になってご飯が美味しく食べられない。

時々、視線を感じるのだ。

なぜ。

「大沢さんは、どこら辺から会社に通ってるんですか。」

なんでもないことのように佐々木君が聞いてきた。

緊張してるのは私だけか。

そうだ佐々木君は三上ちゃんが好きなんだから、意識してしまった自分が恥ずかしい。

地下鉄で3駅の自宅の最寄り駅を答えた。

「ふーん、俺と近いですね。」

佐々木君と私の家は1駅しか違わなかった。

「一人暮らしでしょう?駅から近いんですか?」

心配するような感じで聞いてくるので、笑ってしまった。

お母さんのようだ。

「15分ぐらい歩くけど、商店街があって人通りが多いので大丈夫。」

現に5年住んでいるがなにもない。

「大沢さんは彼氏いるんですか?」

まるでなんでもない事のように佐々木君が聞いてきた。

どうしてそういう事をさらりと聞けるんだろう。

まじまじと佐々木君を見た。

「で、いるんですか?」

そう重ねて聞いてくる佐々木君が、飄々としていてムッとした。

「いないわよ。」

そう彼氏がいたこと無いわよ。そう言わないのは、わずかなプライドだ。

「じゃあ、好きな人は?あと気になる人とか。」

好きな人?

気になる人?

「何で。」

不機嫌な声になってしまって、しまったと思った。

きっと佐々木君はあの時私が三上ちゃんの事をからかったと思って、

仕返ししているのだ。

こちらが感情的になってはいけない。

「残念だったね。そんな人はいないよ。」

努めて冷静に言うと

「ん?何で残念なんですか?俺、めっちゃ嬉しいですよ。」

佐々木君はそう言って優しく笑って私を見つめると

私の頭を撫でた。

「いつも髪の毛アップにしてるんですね。この間みたいに下ろしてるのも似合ってましたよ。可愛かったです。」

一気に顔が熱くなるのが分かった。

絶対、今、私、真っ赤です。

「そうやって、俺の事もっと意識してください。今度は絶対捕まえるって決めてるんで。」

早く食べないと休憩なくなりますよ。

と耳元でささやいて来た時と同じように、にこりと笑うとさっさと立ち上がって行ってしまった。


大好きな甘酢あんかけは不本意ながら残してしまった。

あれはどういう事なのか。

素直に考えれば、私に好意を持っていると言う事だろう。

だが、相手は佐々木君である。

最近まで三上ちゃんが好きで、いや今も好きかもしれないし。

社内の人気もなかなかのものである。

わざわざ年上の地味な女を選ぶ必要も感じない。

はぁ。

仕事が進まない。

三上ちゃんが休みなのに。

結局、2時間ほど残業する事になった。

家に帰ってからも、悶々と考えてしまい。

今までこんなことで悩んだ事が無い私は疲れた。

なのに眠れない。

もうヤダ。

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