大沢さん
華やかな結婚式場でのガーデンウェディング。
花嫁の三上ちゃんは、くりくりとした瞳に感激の涙をためて頬をうっすら上気させ新郎である田畑課長を見上げている。
小さくてかわいらしい彼女は、とても幸せそうに笑っている。
それを見つめる田畑課長も仕事中のクールな感じではなく、目を細めて彼女を見つめ返す。
お似合いだ。
私と同じ課の三上ちゃんと営業の田端課長は、すったもんだの末今日の日を迎えた。
わが社の結婚したい男ナンバーワンの田端課長との交際は、大変だったと思う。
その苦労を近くで見ていた私は、何度もそれとなく同期の佐々木君をすすめたことか。
でも今日の日を迎えられたのなら、それでいいのだ。
三上ちゃんの幸せが一番なんだから。
「幸せそうだなぁ」
のんびりとした声が聞こえてきた
声で誰か分かった私は
「残念だったね。」
「知ってたんですよね。」
「んー。あれだけ近くにいるとねぇ。目に入っちゃう。」
「俺、田端課長に大沢さんに賄賂でも渡してるのかって凄まれたことありますよ。
それとなく俺のことを押してるって。」
ああ。ばれてたか。
「なんで俺を?」
押していたのかってことだろうなぁ。
私と佐々木君の接点ってあんまりないし不思議に思ってもしかたないか。
「三上ちゃんの幸せを一番に考えてたからかな?
佐々木君さ、三上ちゃんが一部の女子から嫌がらせされてた時それとなく助けてたよね。
それに二人がギクシャクした時も、それとなく仲直りするように仕向けたよね。」
佐々木君も田端課長ほどではないが、それなりに人気がある。
でも彼はそれをちゃんと理解して、その上で三上ちゃんに迷惑がかからないように接していたのだ。
好きだ。愛してる。って言っているだけの田端課長はなにも分かってない。
まぁ、それとなく注意してからは改善が認められたけど。
「うわぁ。そんなことまで知ってるんですか?恥ずかしすぎてへこみますよ。」
人のよさそうな、柔和な顔に苦悩の表情を浮かべて頭をかかえてうずくまる。
そんな様子が可愛くて思わず
「ふふっ。大丈夫よ。私しか知らないから。」
といいながらよしよしと頭を撫でてあげた。
「なっ。お子様扱いしないでください。」
ぱっと上げた顔が真っ赤で、また笑いがこみ上げてきた。
かわいい。
あまりに可愛すぎて、もうちょっとなぐさめてあげたくなった。
「佐々木君は、すごくいい男になるよ。私だったら田端課長より佐々木君のほうが
いいよ。三上ちゃんにも薦めたぐらいなんだから。」
自信もって。
もうちょっと話していたかったが、今からブーケトスが始まるようだ。
「佐々木君、私ブーケトス参加しなきゃだから。」
ごめんねって言って中央に走って向かった。
結局、ブーケ争奪戦には負けたが(三上ちゃんは私の場所を確認して投げてくれたのだけど)
おいしい料理を堪能したのでよしとする。
帰ろうとロビーを歩いていると
佐々木君に呼び止められた。
「二次会参加しないんですか?」
「うん。二次会って営業部が企画したんでしょう?
私お酒あんまり好きじゃないし。それに…」
「佐々木くぅん。早く行かないと時間間に合わないよぅ。」
いつの間に来たのか同じ課の谷さんが、甘えた声で佐々木君を呼んだ。
ついこの間まで田端課長を狙って三上ちゃんに意地悪をしていたのに
勝ち目が無いと分かってシフトチェンジしたようだ。
お盛んなこと。
「じゃあね、佐々木君。」
私はひらひら手を振って地下鉄に向かって歩き出した。




