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第8話 魔法とジト目

 俺の戦い方は魔法使いのものではなかったらしい。ステータス以外にもなにかチートじみた異世界転移の恩恵か何かがあるのだろうか?いや、その戦い方を可能とするチートの結果ステータスが高いのか?どちらかはわからないがまあわからなかったところで問題はない。デメリットとかは見当たらなそうだしありがたく受け取っておこう。強いて言えば目立つことか。

 まあ魔法剣士的な感じでいこう、武器もドヴェラーグさんが作ってくれるし集中する必要もないから剣士としても魔法の分手数が増える。手数は大事、弾幕はパワーだ。いつかは弾幕を張れるようになりたい。今はまだ剣術なんてまともにはできないけど盾を扱った感じからすると武芸の素質が何とかしてくれそうな気がする。


「あー、魔法の才能と武術の才能を持ってるからそんな感じになるんじゃないですかね?」


「確かにその両方を持っている人というのは聞いたことがありませんね。それにしたってズナナ草といい何かおかしい気がしますが……何か隠してるんじゃないですか?」


「何も隠してませんよ! あ、ズナナ草! ズナナ草です! ズナナ草持ってきました! これです!」


 この話題は出来れば続けたくない。変なボロを出してしまったりしそうだ。話題逸らしのためにアイテムボックスからズナナ草の束を取り出す。ズナナ草の写真の右下には”697”という文字が書かれていた。一度では取り出し切れないので3回に分けて取り出し、カウンターに乗せる。サリーさんは不審な物を見る目でこちらを見ていたが、薬草の束を見るとあきらめたような表情になり、


「697本ですね。ツッコみませんよ。ツッコみませんからね。カエデさんと話す時には常識を投げ捨てることにします。20歳にもなっていないのにこの状態とか30歳になるころにはどんな規格外になっているのやら…」


 とか言いながらこの前薬草を調べた箱を持ってくる。この前来た時も気になったがどうやって数えているのだろう。カウンターに魔法の薬草数え機(カウンター)でも入っているのだろうか。カウンターだけに。


「ええ。すべてズナナ草ですね。20910テルになります。ところでグリーンウルフを倒したと言っていましたがグリーンウルフの討伐も常時依頼になっています。1匹10テルと値段は安いですけど。ギルドカードを見せていただければ清算しますけどどうしますか?あと死体もあるならそれも買い取りますよ。素材のほうは向こうのカウンターでの処理となりますが」


 そう言ってサリーさんは買取窓口を指差す。日本円に換算すると約21万円だ!薬草だけで金持ちになれる。

 こんなに大量に売ってもそのままの値段で買い取ってくれるということはズナナ草不足は結構深刻なのだろうか。

 もしかしたら不足していなくてもあればあるだけいいと言った品物なのかもしれないな。


「あ、お願いします」


 そう言ってギルドカードを差し出す。


「6匹ですね。5匹じゃなかったんですか?」


 サリーさんがジト目になってこっちを見る。金髪碧眼の美少女ってのはジト目でも絵になるものなんだな……。


「あ、それは帰るときに1匹だけで襲いかかってきたんですよ。」


「そうですか。では向こうのカウンターに死体を置いてください。」


 黒焦げの物も含めて7匹分の緑犬の死体をカウンターに置く。黒焦げが3匹、まともなのが4匹だ。


「……また1匹増えましたが?」


 ジト目が素敵だ。別にジト目フェチなどではないが素敵な物は素敵だ。


「ギルドで登録する前に倒したんですよ」


「そうですか。この黒焦げのは売れませんね。皮をはいで焼けば食べられないこともないと思いますが売り物にはなりません。他はアイテムボックスに入っていただけあって新鮮ですので1匹200テルで買い取らせていただきます。いらないならこちらで処分しますがどうしますか?」


 火魔法で焼けば非常食くらいにはなるだろうしアイテムボックスもまだまだ余裕だ。持っておくことにしよう。

 皮をはぐとか女の子なのに随分怖いことを言う。まあこの世界ではその程度のことで残酷も何もないのかもしれない。


「じゃあ黒焦げのは持って帰ることにします」


「わかりました。合計で21770テルですね。そこそこ大金ですしギルドに預けることもできますが……それだけの容量のアイテムボックスがあるなら必要ありませんね」


 笑顔のサリーさんに金貨2枚、銀貨1枚、銅貨77枚を渡される。数えてはいないが全部まとめてインベントリに入れたところ68枚から145枚になったので合っているのだろう。ジト目はやめたのか、ちょっと残念な気もする。


「ありがとうございました。ではまた」


「はい。またのお越しをお待ちしております」


 今日もお礼を言ってギルドを出る。ギルドに行っても寒気はしなかったが。たまたまだろうか?


 飯屋への道を歩きながら、俺は考えていた。

 いくら薬草採りしかしていなかったとはいえ、戦闘を軽視しすぎていたのではないかと。

 確かに盾も用意しているし、剣も用意する予定がある、というか明日焼き入れした剣ができていなかったら普通のをとりあえず買うつもりだ。

 しかし俺の現在のメインウェポンはあくまで魔法だ。しかしこの魔法もほぼぶっつけ本番で適当に作ってできたものを使っているにすぎない。

 俺のMPは昨日のレベルアップで2000を超え、自然回復量も1分に2を超える。それだけ魔力があるのにMPを1も消費しない魔法しか使わないのはもったいないのではないだろうか。

 MPを気にせずに撃ち続けられる魔法は確かに便利だがやはりMPをしっかりと消費してでも強い魔法がほしい。

 テレポートとか使えれば危険から逃れられるのだろうがなんとなく使えない気がする。使えそうだとしても失敗した時が怖い。

 *いしのなかにいる*なんてことは勘弁だ。

 ということでまずはどんな魔法が使えるのかを調べなくてはならない。今日はもう暗いので明日にするが森の浅めの場所で実験してみよう。


 と、考えていると飯屋についた。


「へいらっしゃい!」


 安定のテンションだ。時間が遅いからか店の客は俺以外には二人しかいなかった。

 大剣を背負った大男と、金属製の大盾をつけ、槍を背中に装備した男――これだけなら騎士みたいな装備だが、鎧は皮だ。が談笑しているようだが、何を話しているのかはここからでは聞き取れない。盗み聞きをするような趣味でもないが。

 ん?道行く人を勝手に鑑定?あれはほら、あくまで統計的な情報を得るためのものであって個々人のことなんて覚えちゃいないし。


「グリーンウルフ定食1つ」


「へいおまち!」


 普通の飲食店ではここのセリフは「かしこまりました」とかなのだろう。一体どうやって用意しているのかはわからないがまあうまいものが早く出てくるに越したことはない。

 メニューはオーク定食、ガルゴン定食、グリーンウルフ定食しかないが、このメニューの少なさが速さの理由なのかもしれないな。

 いつも通りグリーンウルフ定食を素早く食べ終え飯屋から出る。まだここに来はじめてから2日だが俺にとってはもはや日常だ。

 宿の部屋に戻る。今日はやたらと疲れたな。疲労が疲れたのでさっさと寝ることにする。

 そういえばこの町で昼の鐘や午後6時の鐘を聞いたことってないな。そのくらいの時間をはずしているから飯屋が空いているのかもしれない。


 今日も鐘の音で起きる。ある程度稼げたので今日は装備等をそろえようと思う。装備をそろえるのに金を使いきってしまって気付いたら宿代がない、なんてことにならないように一応3日分の宿代を払っておく。これでもし使い果たしてしまってもまた薬草採りに行けば大丈夫だ。

 今すぐに戦闘をするつもりがなくても必要なときに戦闘できる準備は必要だ。

 飯屋に行ってグリーンウルフ定食を食い、パンを受け取ってアイテムボックスに入れておく。

 鍛冶屋には今日来いと言われたが、こんな朝早くから行っても開いていないかもしれない。道などを見る限り普通の店も開店準備中みたいだし。

 ということで魔法を開発することにする。とりあえず攻撃魔法をできるだけいっぱい、特に大火力の魔法と複数をまとめて相手にできるような魔法と索敵に使えるような魔法がほしい。索敵はいまいちイメージがわかないけど風魔法とかそういうのかな?

 どんな魔法を使うか考えながら森の奥に向かい、歩いて5分ほど森に入ったところで立ち止まる。街の反対側の草原では見晴らしが良すぎて周りから見られる可能性があるし、森の奥に入りすぎると昨日みたいなことになってしまう。今日は鍛冶屋にも行かなければならないしあまり遅くまでいるつもりはないが。


 とりあえず水魔法から開発することにする。火魔法を研究するときに延焼してしまう可能性もあるし、消火用の魔法を用意したいからだ。

 水魔法はあまり攻撃力が高そうなイメージはないが、窒息させたりすればそこそこつかえるのかな?

 ステータスを出しっぱなしにしてMP消費を考慮しながら研究することにする。

 このMP消費、少なければ良いというものでもないと思う。魔法の威力はMP消費が大きくなるほど上がるらしいし、ということはMP消費が少ない魔法は強そうに見えようがそれ相応の威力しか出ないからだ。

 石の槍と同じ程度のMP消費しかない火の玉がグリーンウルフを直撃ならほぼ一撃死させる理由は、恐らくだが火の玉が直撃した時直接的にやけどを負って受けるダメージが魔法攻撃としてのダメージで、そのあとの延焼は物理現象だからではないだろうか。

 石の槍が緑犬にぶつかって砕けるとき岩の槍は砕けるだけで消滅するわけじゃないし。


 とりあえず緑犬を消火した時のような放水をやってみる。地球の消防車についているホースみたいな感じだがMP消費は3秒で1減るくらいだ。

 燃費は……微妙だな。俺ならいいが一般的な魔法使いでは2分ともたない。

 とりあえずパワーを上げてみようと思ってホースが太くなるような想像をする。直径が2倍になった。

 MP消費も4倍ほどに増えている。どこまで大きくできるかと思ってどんどん太くしてみるが、MP消費は1秒に10を超えることはなく、それ以上大きくしようとしても水勢が衰えてしまった。魔力量は多いが瞬間出力には限界があるのか?

 水魔法の実験が終わったがMPはまだ9割近く残っている。最後のなんて2、3秒も放てば魔法使いでもMP切れだが俺の魔力なら3分ちょいは何とかなる。

 聞いた話だがMPがなくなっても魔法が使えなくなる以外には特にデメリットはないらしい。でなければMPが10くらいしかないような一般人は大変だしな。

 まあ消火ができるようになったし地面も水浸しで延焼もしなさそうなので今度は最大威力の火魔法を開発……怖いからやめておこう。

 大威力の魔法が使える方法くらいは調べておきたいが。火の玉を作るイメージをし、そこにさらに魔力を込める。

 魔力を込めるイメージは魔法の素質のせいなのかすぐにつかめた。MPを3ほど消費したところで魔力を追加するのをやめる。特に見た目に変化はないが普段の4倍ほどの魔力を使っている。

 遠くの地面に着弾させてみる。普段の火の玉より爆発の半径が広い気がする。普通の火の玉を同じ場所に着弾させてみるがやっぱりそうだ。普段の1.6倍ほどだろうか。いざとなったらこれに全力で魔力を注ぎ込んで放てば根こそぎにできるだろう。離れていないと自分がまきこまれるが。

 火の玉を明かり代わりにできないかと思って任意に動かそうとするが、距離が離れるにつれて一気にMP消費が早くなる。

 普段岩の槍やら火の玉やらが生成される距離は体から30㎝ほどの距離だが (魔法だからか熱くはないが手を突っ込んでみる気にはなれない)そこから離れるほど魔力消費が大きくなり、60cmほどの距離まで離しただけで魔力消費は8倍ほどになってしまった。

 これはちょっと使い勝手が悪い。常用するような魔法にはとてもじゃないが使えないな。

 単発のもの、不意打ちなどになら使える程度の魔力ではあるが秒間10以上のMPを消費できないとなると遅い不意打ちになってしまう。使いどころに困るな。


 ……ん?

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