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第51話 討伐と素材

 魔法装甲を強化した俺だが、空中からの偵察は最初ので懲りたので普通に地上からワイバーンを探す準備を開始する。

 最初のブレスはある程度距離があり、しかもブレスの中央に直撃したわけでもないのにあの威力だ。

 近距離で真正面から食らったら、無事で済むとは限らないだろう。

 魔法装甲のほうは、体感で魔力を10000程度注ぎ込んだあたりで強化の限界を迎えたので、これ以上時間をかけても恐らく意味は無い。


 魔法装甲の厚さは30cmほどなので、恐らく魔法を扱える距離が関係しているのだろう。

 戦闘中に魔力消費量が変動したので確実ではないが、大体そんなもんだろう。

 爆発魔法も後1平方キロの森爆破一発分、結界魔法は2発分ある。

 こちらは今更多少追加したところで大差ないのでそのままだ。


 後は圧力魔法を、魔力にして3000ほど用意した。

 こちらはさっき、振り落としに対抗する手段を探したところ、圧力魔法で魔法装甲の上から背中を叩くと前に急加速することに気づいたので用意したものだ。

 大きく加速しようとすると衝撃が大きい上、継続的な加速にはあまり向かないのだが、発動する瞬間には魔力を食わないのも利点だ。

 収納まで含め1分ほどの収穫のうち、なんと10秒もの時間をこの実験に費やした。

 ダテにサトウキビを収穫していたわけではないのだ。


 よし、後は探して、ぶっ殺すだけだ。

 魔剣の切れ方の調子から、一撃で首を落とすとかは不可能だろうから、別に不意打ちする意味はそう大きくない。

 なのでブレスにだけ気をつけて、ワイバーンがいると思しき方向に直進することにする。

 魔法での加速は行わず、走るだけだ。

 ワイバーンにブレスを撃たれた場合の回避に使う加速魔法は、元々が低速であるほど効率がいいからだ。

 しかしめんどくさいな、魔法が効くのなら、森ごと爆破したのだが。

 硬さからしてここの木々もデシバトレ付近のものと似たような感じなので、視界を良くするためだけに爆発魔法を使ってしまうのももったいない。

 結果、地道な捜索になるわけだ。


 ありがたいことに、ワイバーンは1分も走らないうちに見つかった。

 ワイバーンの巣なのか、森のなかで一部だけ木がなく、やや窪んだ場所にワイバーンはいた。

 あの時ほどではないが、ウィスプがいた時の坑道のような雰囲気というか、そんなものを感じる。

 ワイバーンのステータスを見てみると、MP最大値が少しずつ回復しているようだ。


 とはいっても一秒につき1も回復していないので、この戦闘に影響はないだろう。

 距離は10mそこそこ、さて、斬りかかるか。

 ……と思った矢先、ワイバーンがこちらを向いたと思うと、表示されているワイバーンのMPが、一気に数億吹き飛ぶ。

 その後、ワイバーンが口を開ける。


 これがブレスの予兆か。

 しかしその対策のためにわざわざ歩いてきたのだ。

 慌てずに、ワイバーンに対して右側に抜けるように加速魔法と圧力魔法でフル加速。

 半秒もかからずにワイバーンの足元に潜り込み、翼に剣を突き立てる。


 目標を見失ったブレスは、そのまま森に向かって放たれ、射線上の木々を黒焦げにした。

 そのまま周囲の木を、直接ブレスが当たった範囲から半径10mほどにわたって焼きつくして消える。

 魔物の領域の木は燃えないんじゃなかったのかよ。


 まあいい、威力は確かに大きいが、当たらなければどうということはない。

 魔剣でチクチク攻撃し続け、MPを削りきればいいだけだ。

 ブレスの威力を観察しながらも、俺はワイバーンの翼に剣を食い込ませていく。

 剣は根本を除いてほぼ完全に黒く染まり、魔力が活性化する感覚を感じる。

 恐らく最大値も増えているだろう、こちらは感じることはないが。


 10cmほど切ったところで、ブレス後の硬直のようなものが終わったのか、ワイバーンは翼を動かして剣を抜きにかかる。

 まあここでしがみつく必要は特に無い。

 おとなしく剣を抜き、再度剣を構え、翼を視界に収める。

 剣は先のほうから徐々に黒さが抜けていき、5秒ほどで元の青い色を取り戻した。

 そういえば、この黒いのは俺の手が消してるんだよな。

 翼に触ったところで黒いのが吸収できている感じはしなかったが、手を刃に添えて切ったらスッパリいったりしないだろうか。


 試してみるのが一番だな。

 とりあえず、再度ワイバーンに斬りかかる。

 そして突き立てるのではなく、斬る感じでワイバーンに当てられ、5ミリほど食い込んだ刃を手で軽く押し込む。


 スパッ。


 切れた。

 それはもう、綺麗に刃が入った。

 4cmほどの太さがある剣はその刀身のほぼ全てをワイバーンに食い込ませた。


「ギャアアアアアアアァァ!」


 ワイバーンが怒りの叫びを上げる。

 全く素晴らしい切れ味だ。

 どれほど切れ味がいいかというと、利き手で剣を押し込みながら、軽く刃を押し込んだだけの手を、骨のあたりまで切り裂くほどだ。

 その程度の怪我で済んだのも、剣の切れ味のせいではなく、そこまで切れた地点で俺の手とワイバーンの翼がぶつかり、それ以上手が進まなかったおかげだ。

 治癒魔法ですぐさま回復させたが、あやうく切断されてしまうところだった。


 ワイバーンのほうの様子を伺うが、以前と様子が違う。

 傷が回復していないのだ。

 回復させるためのリソースが切れたか、温存のためか、いずれにせよ追い詰められていることは間違いない。


 俺はさっさと決着を着けるべく一気に畳み掛ける。

 剣の根本付近にしか触っていなかったにも関わらず剣全体が青いままだったことから、刃のどこか一部に触ればいいと推測し、側面に手を当てて斬る。

 ワイバーンは思い通りに、ズバズバ切れる。

 真っ直ぐ切るだけで、翼の半分程を切り落とすことに成功した。

 これならいけるな。

 加速魔法で飛び上がり、首の切断を試み――成功する。

 刃の長さが足りないためかごく一部つながってはいるが、すでに首としての役を成していない。

 ワイバーンの体から力が抜け、地面に倒れ伏す。

 終わってみれば、案外あっけなかったな。


 おっと、こうしてはいられない。

 火力の確保のため、死体斬りをしなければならないのだ。

 刃の側面に手を当ててワイバーンに切れ込みを入れるが、生きている時ほど吸収できている感じがしない。

 3つほどの切れ目を入れたあたりでほとんど効果がなくなったので、あきらめてワイバーンを収納する。

 岩の槍で試してみたところ、1秒に使える魔力は200程度になったようだ。

 魔力最大値も12億ほどになった。

 使い切れないことに変わりはないから、もはや割とどうでもいいが。


 時間はまだ、昼前にもなっていない。

 爆発魔法も準備してあるから、今日の爆破は予定通り行えるだろう。

 サトウキビを切断し、かじりながら帰路につく。


 ゆっくりと、新幹線ほどの速さで飛びながら

 ほのかに甘いが、やはりサトウキビを最大限に活かすには製糖する必要があるな。

 やるならやるで、大規模にやりたい。

 そうなると栽培しなければならない。

 しかし、場所がない。

 デシバトレ付近でのんきに農業なんてやり始めたら、さすがに怒られるだろう。

 どこか迷惑をかけずに農業ができる場所は……


 あるじゃないか。

 というか、俺がさっきまでいたところがまさにそれだ。

 島でやれば、誰にも迷惑をかけることはない。

 大きさは違うとはいえ、昔はハワイなどの島で栽培していたのだ、できない道理はない。


 農法のほうにもあてがある。

 実にスマートな農法だ。

 太古の昔、人類は火を得、そしてその恵みは現在までの人類の発展に大きく寄与した。

 また、母なる大地の恵み、森の恵みは人類にとって欠かせないものだ。

 その2つを最大限に活かした、真に人間的であるといえる農法。

 ――すなわち、焼き畑である。



 その後、いつも通り、爆破伐採と残党狩りを終え、ギルドへ報告に行く。

 なんかワイバーンの報告のタイミングを逃してしまったが、これもついでに終わらせればいいろう。

 受付のところにいたのは、いつもの町長ではなく普通の受付の人だった。


「こんにちは、伐採と討伐の依頼を報告にきました。 あとなんかワイバーンいました」


 サラっと流してもらえるとありがたい。


「おお、いつも通りすさまじい数の木だな…… ん? 今ワイバーンとか聞こえた気がしたが」


「はい、ワイバーン・イグニスってのです」


「イグニスだと! 町長を呼んでくる! 撤退の準備をするぞ!」


 あれ、なんか変な流れに。

 ……そういえば殺したっ言い忘れてた。


「あ、大丈夫です、もう倒したんで」


「なぬっ」


「倒しましたんで、撤退は必要ないです」


「……まあ、カエデだしな。 いずれにしろ、町長を呼ぶことには変わりないが」


 そう言って受付の人は町長を呼びに引っ込んでしまった。

 ほどなくして町長が出てくる。


「ワイバーンを倒したと聞いたが」


「はい、ギルドカードです」


「……本当のようだな、亜龍に関しては報酬は決まっていないから、決まり次第でいいか?」


「はい、あとランクとかはどうなるんでしょうか?」


 全く驚いていない……だと……


「常識などとうに捨てたわ。 ランクは…… 戦力はAクラスだと判断されるだろう、だがランクはC、よくてBにに上がる程度だな」


 2階級特進か。


「Aランクってのは、亜龍をいっぱい倒したりするんですか?」


「そんなわけないだろう、そんなに亜龍が出てきたら人間などとっくに滅んでいる。 指導力の問題だ」


「指導力ですか」


「ああ。 Aランク冒険者というのは、戦闘力だけでなく指導力も要求される。 大規模な駆除依頼でリーダーを張れてこそAランク、というものだからな」


 ソロの俺には程遠い話だな。


「わかりました、とりあえず結果待ちですね。 あといろいろあって、明日から伐採のペースが20倍くらいになります」


「……わかった、なら今からブロケン奪還の準備を始めてしまって構わんか?」


 確かに、すぐその辺りまで到達するだろう。

 そのために伐採しているのだから、止める理由もない。


「もちろんです」


「よし、忙しくなりそうだな」


「ええ。 では俺はこれで」


 案外あっさり報告が終わったので、かえって寝ることにする。

 いつも通り健康的な就寝時間だ。

 そういえば、亜龍の素材簡単に手に入れちゃったけど、これどうしよう。

ようやく戦闘が終わりました。

意外とコンパクトにまとまらないものです。

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