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第47話 爆撃と爆砕

 話を終えて外に出た。

 ズナナ草は細切れになったせいか、1本ずつ摘んでいないせいなのか、kg単位での表示になっている。

 なんと100kgだ。 1本10gとして1万本。

 さすがに消費しきれないだろう、売れるだけ売って、残りは後で考えるか。

 有効成分だけを抽出したりしてみるか? ……あまり利用価値を感じないな。

 少量の薬で大量の薬と同じだけの有効成分がとれたとして、上限に引っかかるだけだ。


 さて、初日の伐採は無事完了したわけだが、これを2年も続けるのか……

 せっかく異世界に来たのにルーチンワークをこなすだけで2年も過ごすというのが、なんだかもったいない気がする。

 短縮できないものか、少し考えてみるか。


 まずは伐採に時間がかかる原因を分析するところからだ。


 第一に魔物の処理に関する問題。

 木を切っても、切る前に魔物に逃げられてしまった場合、住処を追われた魔物が町の方に流入することになる。

 それに対する対処の持続時間に限界があるため、1日に5時間程度の伐採しかできないのだ。


 第二に単純な伐採速度の問題。

 魔物の問題を解決したところで、五時間かけて20分の1平方キロ程度しか切れていないのだから、1日20時間切ったところでブロケン奪還に半年かかる。

 これに関しては、飛行速度を上げれば今の倍くらいにはなりそうだ。

 ズナナ草を犠牲にする必要が出るかもしれないが。


 まあこんなところだろう。

 まとめて達成するには、魔物ごと大量の木を処分すればいいんだな。

 それを達成するために使えるものってあったっけ。

 ……そういえば、余剰魔力があったな。

 5時間やそこらしか木を切っていない上、切っている時間も魔力は半分も使っていないのだ。

 一日中魔力を貯めこんで、森にまとめてブチ込むのがいいか。

 その上で、普通に5時間伐採して更にブーストしてもいい。純粋に魔力でやるよりは効率がいいだろう。


 方法については……

 燃やすとか、爆破するのあたりが有力か。

 燃えるなら燃やしているだろうし、爆破のほうがいいか?

 結界の魔法とやらがあったから、あれも併用したら強そうだな。


 しかしさすがにそこまでのを勝手にやるのはまずいな、一応相談すべきか。

 一応魔力だけ用意しておく。

 爆発、それも火魔法ではなく、魔道具の純粋な爆発をイメージ。

 それとその爆発力を閉じ込めるための結界魔法。

 どちらも、魔道具があるのだから魔法で出来ることなのだろう、

 イメージも割としやすい。

 存在を確信出来ているというのは大きいのだ。


 どの程度の時間、発動可能な魔力をためておけるのかはわからないが、とりあえず爆発と結界に3対1くらいで分配しておく。もちろん、結界は耐え切れずに壊れてしまうだろうが、結界には耐え切ってもらう必要はない。

 爆風の一部でも反射して、地上の低い位置を破壊し尽くす程度で十分だ。

 地上30cmほどに、下面だけが地上に向くように結界を発動、地面すれすれで魔法の爆発を大量に発動する感じでいこうと思う。

 使用可能な魔力が明日まで保持、できれば溜まっていることを祈って就寝した。


 翌朝、祈りが通じたのか、魔力は溜まっていた。

 調べる術はないが、そんな気がするのだ。

 とりあえず許可をもらうため、ギルドに行くことにする。


 ギルドに到着。 町長は起きていた。


「大きい魔法で木を破壊してみたいのですが、大丈夫でしょうか?」


「大きい魔法か、どのくらいのものだ? あの木を倒せる魔法など聞いたことがないが」


「そんな固いんですか? 燃やすことは?」


 燃やされていないということはなにか事情があるのかと思ったが、一応聞いておく。

 燃やせるならそれが一番楽だ。


「無理だな、切ってから3日もすればスカスカになって燃えやすくなるが、魔物の領域に立ったままの木などまず燃えるものではない」


 山火事などの問題ではなく、単純に燃えないのか。・


「どのくらいの威力の魔法なら砕けるのかわからないので、今日の伐採の時間のはじめにでもいろいろ試してみたいのですが大丈夫ですか?」


「もちろんだ、木が倒せれば報酬も出すぞ。 ダメならそのまま伐採してくれてもいいし、一旦諦めて帰還してくれてもいい。 安く木を切ってもらうのに、これ以上何かを求めるわけにもいかんしな」


 よし、思いっきり試してやろうじゃないか。


 昼前、俺は昨日と同じくギルドに来ていた。

 昨日と同じ命令が町長に下され、行動を開始する。


 俺は昨日とは異なり、空を飛んで森のやや奥に入る。

 昨日よりも巻き添えにする範囲が広い可能性も高いからな。

 魔力を貯め始めてから約15時間たったはずだ。 私の使用可能魔力は53万です。

 正確には54万くらいだが、瑣末なことだ。


 とりあえず2キロほど森に入って小手調べ。

 10m×10m程度の範囲に、12ほどの魔力を使った結界と48ほどの魔力を使った爆発魔法を用意。

 爆発魔法は有弾のようだが、聞いた話だと結界発動者の魔法は結界を通過できそうな気がする。

 でなければ魔道具の結界を魔法使いが使ったりできないはずだ、何か他に手段がないのならば。


 まあとりあえず試射。 せいぜい強い魔法使い一人分の魔力量だが、俺には高いINTと、爆発を閉じ込める結界付き爆発魔法がある。

 地表30cmに結界を発動し、その上から、1発あたり12の魔力を使った有弾爆発魔法を4発発射し、退避。


 白っぽい玉の爆発魔法は予想通り結界を素通りし、地面に着弾。

 結界内部が黒っぽく染まり、1瞬遅れて結界が壊れ、爆音が発生する。

 それからさらに数瞬遅れ、木が倒れる。 成功のようだ。

 その後、実験前に触板で確認したがあえてスルーしていたブラックウルフが落下してきた。

 足が爆散、その後結界の破壊に伴って地面から吹き飛ばされて落ちてきたのか。

 素晴らしい威力だ、その上案外魔力も少なくて済んだ。

 今までに見た爆発と違い、赤くなかったことから爆発魔法は熱による空気の膨張ではなく、単に爆発という現象が起こるだけとかかもしれない。


 まあいずれにしろこの魔法が使えるということは確かめられた。

 後は規模を大きくして、爆砕するだけだ。

 爆発する前に魔物に結界を破られてしまっては話にならないから、少し手順を変更することになるが。

 まず刃杖をしまい、魔法の速度を意図的に落とす。


 そして上空に上がり、地面に向かって1万発ほど、まとめて放つ。

 一辺1キロほどの正方形に、均等にだ。

 有弾とはいえ物体としての形を持たないせいか、魔力を貯めても形はできず、撃つときにはじめて弾になるといったかんじだ。

 おかげで干渉せずに飛ばせる。

 鳥撃ちにもこれを使えばよかったかもしれない。


 群れをなして地面に飛んでいく弾を追い抜かし、平坦な地面の中の、最も高いところから5cmほど上に結界を展開し、上に離脱。


 着弾直後、耳をつんざく轟音が響く。

 森の地面が黒く染まり、一瞬盛り上がったかと思うと、木々と魔物が打ち上げられる。

 その後、木は倒れ、魔物は落下する。

 一面緑だった森は、草はちぎれ飛び木は倒れ、今や黒っぽい地肌を晒している。

 魔物の死体も相まって、まさに地獄絵図だ。

 全く素晴らしい破壊力である。

 レベルが上った音も爆音に混じって聞こえた気がしたから、明日からはもっと強くなる可能性さえある。

 今の威力でもズナナ草などもちろん残ってはいないが、仕方ない。

 どうせ割と余るものだ。


 高低差のせいか、10本ほど木が残っていた箇所があったが、その箇所の木を伐採し、1キロ四方の伐採を完了する。

 ギルドカードを確認したところ、その本数、驚きの4万2562本だ。

 1本あたりの報酬が10分の1になったのなら、20倍伐採すればいいじゃない!

 伐採ではなく、爆破解体のほうが近い気もするが、まあギルドカードが許可してくれているのだからよしとしよう。

 どうせなので魔物――多くは足がちぎれ飛び、腹にも損傷があるが、肉として使える部分はありそうだ――とやたら硬い木を高速で回収し、町のほうに戻る。


 その足で通常の芝刈りしながらの伐採を開始する。

 こちらは効率は微妙だが、ズナナ草も回収できるし魔力のコスパもいい。

 魔力をフルに使わないので余剰分は明日の爆破に回すことにする。


 4時間ほどして、森林爆破に比べると随分と小さい爆発音が聞こえる。

 伐採を終え、適当に魔物を狩ってからギルドに帰る。


「爆破、成功しましたよ」


 そう言って、町長とともに待機していた職員に、ギルドカードを手渡す。


「森の奥のほうからすさまじい爆発音が聞こえたが、それか? ……4万5000本だと!?」


「はい、1キロ四方くらい、魔法でドカッと」


「素晴らしいな…… 素晴らしいが…… 魔力をどれだけ使ったのだ?」


「大体…… 魔法使い1万人分くらいでしょうか?」


 一人54くらいだとすると、やや強めの魔法使いかな。


「……よし、どうあがいても人間には真似できないということは分かった。 明日も同じの、いけるのか?」


「はい、その予定ですよ」


 俺が人間ではないみたいには言わないでほしい。

 地球にいた頃の俺からすればフォトレンまで走って20時間でも十二分に人外だ。


「常識はずれだということは分かっていたが、ここまでか。 30日もあればブロケンまで伐採が終わりそうだな」


「多分3,40日で終わるかと。 伐採した後はどうするんですか?」


「とりあえず切り終わった木は燃えるようになり次第燃やして、それから切り終わった範囲を制圧していく。 ブロケン跡地まで制圧が完了したら、前線基地の再建設だな」


 立て直すのか。

 まあ外壁などもう残っていないだろうしな。

 魔物が襲い掛かる中での建設など、どうやるのかは知らないがまあなんとかなるのだろう。

 少し前まで前線を押し上げてから、その後ろで建設するとか。

 ただ、魔物の領域とこちらの間で最も狭くなっているのがブロケンで、そこからは太くなっているので制圧が大変かもしれない。

 まあいいか。

 建設など俺の専門外だ、その時になれば専門の人が何とかやるだろう。

 何でもかんでも自分でやる必要はないのだ。

 とりあえず魔力とステータスで森を破壊することに専念しておけばいいだろう。


「わかりました。 要するに俺は伐採して爆破すればいいんですね」


「そういうことだ。 頼んだぞ」


 後のことはその時に考えよう。

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