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第43話 戦線と買取

 報告のためドアだらけのギルドに入る。

 2つしかないカウンターのうち一つに座っている、自分で冒険者やればいいんじゃないかと思うほど筋骨隆々とした受付に話しかけた。


「すみません、依頼の報告に来たのですが」


「おう、カードでいいか?」


「はい」


 カードを2枚、まとめて渡す。


「おう、一人なのに木を切ったのか、やるな。本数は…… ん? なんか故障してねえかこれ?」


「故障するもんなんですか?」


 ギルドカードが故障した場合の対処なんて聞いてないぞ。


「故障なんて話聞いたこともないが、1211本とか書かれてるぞ、おかしいだろこれ」


 そんな切ったっけ?


「うーん、少なくとも500くらいは切ってるとおもうんですけど、そんなに切ったかどうかはわかりませんね」


「……本当にか?」


「今まで、ギルドカードが嘘をついたことはないんでしょう?」


「それもそう……か? デシバトレ町長に確認を取りたいからちょっと待ってもらっていいか?」


 さすがにいくらそう書いてあるからとはいえ、アポなしで6000万もの金を簡単にポンと手渡しするわけにもいかないか。

 しかもEランクのソロ、疑わないほうが不思議なレベルだ。


「はい、構いません」


「分かった、今呼んでくる」


 出てきたのは、白髪ではあるがこれまた筋骨隆々としたおっさんだった。


「見張り台から、すさまじい速さで木が倒れていっているとの報告があったが、それがお前か?」


「あ…… はい、そうです」


 そんな報告が上がっていたのか。

 一瞬戸惑ってしまったが、考えてみれば話が速くて助かるだけだ。


「おお、俺も跡地は見たが、すげえもんだ。 あれは連続で使えるのか?」


 全く驚いてねえ。すげえ。

 受付の人は驚いてたから、普通だというわけではないのだろうが、これがデシバトレ町長か、

 あれ、町長なのにギルドの支部長っぽい感じだが、ここでは町長が支部長なのか?


「普通に戦うのに比べて特に疲れるってわけではありません、やろうと思えば1日中でもいけますよ」


「……そうか、なら頼みたい作戦があるのだが、引き受けてはくれないか?」


「どんな作戦ですか?」


「戦線を押し返すんだ、今までは防戦一方だったがな、このままでは押し切られるばかりだから反撃に出る機会を探していた」


 まあ戦況が悪化していたという話だし、割りと普通の依頼だな。


「それで、俺は何をすればいいんです?」


「頼むことは木を切ることだけだ、とにかく切ってくれれば後は何とかするし、護衛も必要なら用意しよう」


「あー、むしろ巻き込んじゃったらまずいので、切ってるところには入らないで欲しいです」


 魔物なら巻き込んでもいいが、人を巻き込んだらマズイだろう。

 一応気をつけてはいるが、効率は落ちるし確実とも言えない。


「分かった、ただ街を守らない訳にはいかないから、街付近を切るのは時間を決めて、まとめてやってほしい。 大規模に伐採した影響がどう出るか完全にはわからないから、初回の大規模伐採の際は戦力を街に集めておきたいというのもある」


「了解しました、時間は明日の昼からでいいですか?」


「連絡を行き渡らせるのにはちょっと時間が足りないな、明後日じゃだめか?」


 まあもう夜だもんな。


「わかりました、じゃあ明後日の昼からで。ところで伐採後に成果が出るのっていつくらいなんですか?」


「魔物相手の戦線にいつ影響が出るか、ということなら切ってすぐだ、木がないところに魔物は湧かんからな。 魔物の勢いが落ちるのには半年ほどかかるが、まあそれが大きく影響してくるほどの距離を押し返せればブロケン跡地の奪還も視野に入ってくるからとりあえず気にする必要はない」


「魔物の勢いですか?」


 湧きはわかるが、勢いってなんだ。

 突撃の勢いならむしろ木がない方が上がるだろう。


「魔物はな、木が多い場所から離れると力が落ちるんだ。木がなくても伐採してから3ヶ月位はそのまま、そこから半年ほどで勢いがなくなるまで徐々に下がっていくらしいな。 一部では魔力が原因だなんて言われてるが、俺は信じてない、魔力の回復が早まったりはせんからな」


 このへんで狩った魔物が食えないってのもそのせいか?

 もしかして昔鑑定で出てきた、魔素ってやつじゃなかろうか。

 まあ魔素だったところでどうにかなるわけでもないから割とどうでもいいのだが。


「わかりました、要するに俺は気にせず木を切ればいいんですね」


「そういうことだ」


「じゃあ、俺は今日はこれで」


「ああ」


 そういうことで、とりあえず寝て明日に備えることにする。

 デシバトレカードも受け取った。

 ああ、宿をとらなきゃな。


「おすすめの宿とかってありますか?」


「金があるなら中心付近なら比較的安全だな、それ以外はどこも大した差はない」


「わかりました、このへんの宿を探すことにします」


 ギルドを出て、まっさきに目についた宿に入る。

 店員も冒険者としてやっていけるんじゃないかって体格の爺さんだった。

 そもそもそのくらいでないとこの街に来られない気もするが。


「泊まりたいのですが、いくらですか?」


「2食付きで1泊1万5000テル、飯なしなら1万4000だ」


 飯は1000テルか。

 しかしさっき言われた『それ以外はどこも大した差はない』に嫌な予感がする。

 一応聞いておくか。


「飯はどんなのですか?」


「小麦粉を練ってズナナ草といっしょに煮たのとそば粉をお湯で練ったのだな、それと干し肉だ」


 嫌な予感的中。

 ズナナ草を料理に使うとは聞いたことがなかったが、それ以上にほかが酷い。


「じゃあ、飯はなしでお願いします、カード使えますか?」


「ああ、大丈夫だ、カードをかざしてくれ」


 この店ではカードは箱にタッチするだけでいいようだ、進んでるな。

 他の街にも導入しないのだろうか。

 金とかの問題が絡んでくるんだろうが。


 部屋は特に特殊なものでもなかった。

 ベッドもやや古いが、しっかりしたものだ。

 デシバトレが最前線になる前に用意されたものだろうか。

 夕食としてアイテムボックスに入っていたグリーンウルフ定食を食って寝た。


 翌朝、習慣のせいか、いつもと似たような時間に起きる。

 鐘は鳴っていないが、この街にそんなものがあるのかどうかさえ不明だ。

 規則正しく夜寝て朝起きるような生活を全員がしていたら、あっという間に制圧されてしまいそうだし。


 とはいえ今日、俺にはやることがない。

 招集は付近を切るときの人身事故を避けるだけではなく、大規模伐採による影響に対する備えもあるのだ。

 勝手に大伐採して住処を追われた魔物が一気に街を襲ったりしたら目も当てられない。

 魔物を狩りに行ってもいいのだが、ここはこの前思いついたアイデアを実行に移すことにする。

 デシバトレにおいて捨て置かれている魔物素材を回収し、フォトレンで売っぱらうのだ。

 販売ルートは後ほど確保するとして、まずは商品を用意しなければならない。


 あと材木も、もしかしたら売れるかもしれないな。

 どうせ金はあるし、他にもアイテムボックスを使って金儲けしようと思っているので会社を起こしてしまおうと思っている。

 この世界だと商会とかいう名前になるのか? まあどっちでもいいが。

 まあそれだけ金が余っているということは逆に、稼ぐ必要もあまりないということではあるが、必要になってから金を用意するのでは遅いのだ。

 それに多少損したところで俺が食いあぶれることなどまずないであろうし、儲かる可能性は高い。

 賭けとしても全く悪くないのだ。

 やらない理由があろうか、いやない。


 しかし会社について考えるのはフォトレンに行ってからだ。まずは調達。

 場所はとりあえずギルドだ。

 魔物といえばギルド、ギルドといえば魔物だからな。

 ギルドに黙って勝手に買い取ったらまずい気もするし。


「すみません、魔物の素材の買い取りをやりたいんですけど、大丈夫ですか?」


「……ああ、アイテムボックスか。 別にこの街ではギルドとして規制したりはしていないけど、デシバトレ以外の街では税金がかかったりするから気をつけたほうがいいぞ。販売はどこでも税金がかかるが、その辺のシステムはフォトレンできいたほうがいい」


「わかりました、ちなみに買い取りをやる場所のおすすめとかありますか?」


「そうだな、そこにある扉から外に出て右に向かって2軒進めば飯とか薬とかを売ってる店がある、そこに頼めば代わりに買い取っといてくれるかもしれないぞ、もちろん金はかかるだろうが」


「ありがとうございます、行ってみます」


 言われたドアから外に出て、2軒右に行ったところにあったのは、この街にしてはかなりでかいんじゃないかという規模の店だった。

 ギルドの倍ほどの大きさがあり、その横に頑丈そうな倉庫らしきものもある。

 っていうかここ、食料を運んできた時に行った店のうち一軒な気がする。


「すみません、魔物の素材を仕入れたくて、ここに行くといいかもしれないと言われてきたのですが」


「アイテムボックスの冒険者か、報酬はどのくらいもらえるのかな?」


 うーん。

 まだ販売してるわけじゃないから相場がわからない。


「ええと、相場がわからないのですがどんなもんなんでしょうか?」


「そうだな、フォトレンでの相場の10分の1くらいでどうだ? その分食料を運んできてくれるんでも構わないぞ」


 おお、安い。

 まあ元々この街ではゴミみたいなものかもしれないが。

 それによく考えて見れば10分の1でもそこそこの値段になるかもしれない。

 まあ問題ないだろう、どうせこちらから向こうに魔物の素材を運ぶということは、向こうからこちらに帰ってくるということなのだ。

 帰りの荷物が増えたところで全く問題はない。


「では、食材でも運んでくることにしましょう。 そういえばこっちの宿屋ではなんというか…… 食材が少ない感じがしたのですが調理済みの物を持ってくるとか、需要ありますか?」


「調理済みだと水やらなんやらで重くなるからな、この街では仕方ないんだ。 しかし別のものが食いたいという話も聞くからな、運んでくれるなら歓迎だ、価格にも色をつけるぞ」


「じゃあそうすることにします、とりあえず金で払うことにして、食料を運んだら持ってきますので、手に入ったら教えて下さい。 金は先払いしましょうか? アイテムボックスにジャイアントスパイダークラブが何匹か入ってるのでそれでもいいですけど」


「そうだな、とりあえず1匹、100万でどうだ」


「じゃあそれで」


 商談がまとまった。

 アイテムボックスは偉大だ。

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