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第40話 利権と物価

 資格を無事取得した俺だが、もともとここに来た目的は資格をとることではない。

 依頼を受けることが目的なのだ。


 魔力と魔法のおかげで稼いだ時間は、アイテムボックスの容量によりある程度食いつぶされてしまったがまだ時間は昼過ぎといったところだ。

 今日中にデシバトレに行ってそちらで寝るなどできれば一番いいのだが。


「護衛依頼って今日ありますかね?」


「そっちに依頼板があるが、カエデの場合は容量が容量だからな、ギルド主導で速くて強いやつを集めてカエデ護衛パーティーを組もうという話があるのだが、どうだろうか」


 えっ、俺を護衛するの?

 指差された方を見てみると確かに依頼板があるが、俺には関係なくなりそうな雰囲気だ。


「えっ…… ええと…… 別に構わないんですけど、それで護衛依頼をこなしたことになるんでしょうか?」


「荷物を護衛…… していないがアイテムボックスに入れるのはある意味究極の護衛と言えるからな、多分カウントされると思うぞ」


「わかりました、いつ頃出発で、期間と報酬はどのくらいになりますか?」


「メンバー集めをしないといけないから正確には言えないが、多分明日か明後日には15時間やそこらのBランクが5人くらい集まるだろ、そいつらには一切荷物を持たせず護衛に専念させるからもっと早くなると思うぞ」


「Bランク5人って採算合うんですか……?」


 護衛料だけで恐ろしい値段になってしまいそうだ。


「カエデ、ここで1キロ300テルで買えるような干し肉がデシバトレでどのくらいの値段になるか知ってるか?」


「500テルくらい?」


 1キロ運ぶだけで200テル、20キロも運べば4000テル、単純計算で4万円くらいになる、そこそこの冒険者の1日の給料としては妥当だろう。


「ハズレだ、約2300テルになる」


 ちょっと何言ってるかわかんないですね。

 10キロ運ぶだけで2万テルとか、普通の街でつつましく1月暮らせるじゃないですか。

 向こうでは食料がてにはいらないのか?


「あの、デシバトレでは魔物と戦ってるんですよね? その魔物を食べればいいんじゃないんですか?」


 干し肉がないなら焼き肉を食べればいいじゃない。


「無理だ、魔物の領域から出てきた魔物の肉はそのまま食うと体調不良を起こしたり、食い過ぎると魔力過多みたいになって死んだりすることもある、干し肉にすれば食えるようになるんだがデシバトレでそんな悠長なことをするくらいなら運んだ方がマシだ」


 肉を干すこともできないってどんな魔窟だよ。


「でも、そんなに高いのに俺のアイテムボックスで千キロとか運んでしまって大丈夫なんですか? 経済がめちゃくちゃになるんじゃ……」


「大丈夫だ、元々デシバトレの冒険者からして輸送依頼はそう割がいいものではない、むしろデシバトレでは食料不足を防ぐため、定期的にこちらに来て食料を輸送するのが暗黙の了解となっている、もちろんその分戦力は落ちる、ろくなことはない。一応食料の備蓄はあることはあるが、それを放出する場合比較的弱い者から強制的にフォトレンに帰還させることになる、最終手段だ」


 むしろ積極的に流通を混乱させに行けということか?

 下手すりゃ一財産築けそうだな、本格的にメイプルグループを立ち上げるか。巨大グループの会長となり、経済面から世界を征服するのだ!

 ……そこまでの財産にはならないな、多分。


「ちなみに、差額2000テルのうち俺の取り分はどのくらいに?」


「総額からカエデ以外の冒険者一人あたり20万テル、計100万テルを引いて、残った分からギルドが仲介料として1割もらう、その代わり運ぶ物の調達は全てギルドが行う、と言った形にしようと思っているのだが問題ないか?」


 つまり、500キロは護衛代となり、残りが俺の取り分となるわけだ。


「干し肉ばっか運ぶんですか?」


「いや、干し肉は例としてあげただけで10分の1にも満たないな、そば粉や小麦粉といったものがむしろメインだ、ちゃんと値段はキロあたり2000テルくらいは上乗せされるから心配するな」


 そば粉…… だと……

 そういえば道中でそばがきらしきものを食った気がするな。麺じゃないし醤油も見ていない。

 期待しないでおこう。

 ……まあ、俺はカニとかマグロ食えばいいんだけどね。症状が魔力過多ならむしろデシバトレ産の肉を食ったらMPが増えたりするかもしれない。あの炭鉱の時みたいに。


「了解です。どのくらいの量運ぶことになりますかね?」


「用意出来るだけ運ぶ予定だ、10トンは下らないだろうな」


 ええと…… トン当たり200万として、1900万近くか。ギルドの取り分を引いても1710万、ちょっとした会社がおこせそうだ。

 すでに一つ、完璧なネーミングセンスの魔道具店を起こしているが。


「わかりました、ちなみに普段はギルドではなく、個人で輸送して売ってるんですか?」


「そうだ、ギルドとしてはデシバトレの輸送で儲ける気もないし、デシバトレにしっかり物資が供給されていれば、それが一番だ」


 おお、ギルドがなんか正義の味方っぽい!

 利益を求めず、魔物の手から市民を守る正義の味方だ!


「そんなもので稼ぐよりも魔石の供給が増えたほうが儲かるからな、魔石は売られるたびに1割の税金がかかって、そのうち2割がギルドの懐に入る、まさに金のなる木だ」


 違った! 普通に金求めてた! これ以上ないほど金銭欲にまみれてたよ!

 普通の食料にまで消費税がかかる日本でさえ消費税の二重取りはしないというのに!

 俺は激怒……しなかった。必ず、かの邪知暴虐のギルドを除かねばならぬなどとは露ほども考えなかった。

 儲け話がある、俺は得する、ギルドも得する。それだけで十分だ。買う側もその価格で、買ったほうがメリットが大きいと判断するから買うのだ。

 魔石が買えないのなら、ウィスプコアを使えばいいじゃない。

 ……おっと、処刑されてしまいそうだからこのへんにしておこう。


「そうですか、お主もわr…… いえ、誠心誠意、運ばせていただきます!」


 俺と、ついでにギルドの利益のために!


「頼んだぞ、帰りにでも魔物の死体を持って帰ってくればもっと儲かるかもしれん、魔石と、特に高い部位以外は運べないから捨ててしまったりするからな」


 それを捨てるなんてとんでもない!

 資源を無駄にするのもほどがある! エコとか考えろよ!

 これはもう、運びまくるしかないな。

 ……ただでもらってきたらさすがに問題になったりしそうだから、少しは金を払おうと思うが。それでこそwin-winだ。

 一時的に最大の利益を上げるだけなら簡単だが、持続可能にしたほうが結局は儲かったりする。


「それもやってみます、店を起こすことも考えてみましょうかね」


「そのアイテムボックスがあればそれもいいかもしれんな。とりあえず、交渉成立ということでいいか?」


「はい、構いません」


「よし、報酬はどうする? デシバトレカードにするか?」


「デシバトレカードって何ですか?」


「デシバトレにかさばる上に重い硬貨を持っていくのは非効率だからな、ギルドカードみたいな感じで金額を記録したカードを使うんだ。ギルドで現金をおろしたり、逆にチャージしたりできる。おかげでデシバトレで現金はほとんど使えないし、使えたとして値段は足元見られるからいくらか入れとくのをおすすめするぞ」


「いくら位入れといたらいいですかね? あと発行料金とかかかりますか?」


「輸送者資格を持ってればタダだ、額としては…… キロ当たり2000テル近い上乗せがされた物価で物を買うことを考えて入れるといい、宿代は1泊10000テルってとこだな、別に全財産入れてしまってもギルドが滅びない限りは問題ないと思うぞ」


 ふむ、便利だ。しかし物価がクソ高いな。下手すりゃ10倍だ。


「じゃあ、報酬を全額デシバトレカードでお願いします」


 まあそれだけあればなんとかなるだろう。

 俺が金に困るような展開を想像できないし、金が無いならカニを食えばいい。高級食材だ。


「わかった、報酬は向こうのギルドで受け取ってくれ」


「わかりました」


 こうして、6人の冒険者による大規模輸送計画がまとまった。

 よく考えてみると一人で海の上でも飛んでいったほうが速い気もするが、迷ったら困るし今回はギルドの言うとおりに輸送する。


 ――2日後、11トン余りの荷物をアイテムボックスに入れた俺は5人の冒険者共と一緒にギルドの一室に集まっていた。

 自己紹介と作戦会議の時間だ。


「ウノンだ、見ての通り両手剣士、殲滅力B、前衛を務める。よろしく頼む」

 こいつはむさ苦しい戦士らしき男だ。背中に大きな剣を背負っている。


「ドス、殲滅力B両手剣士。右翼だ、よろしく」

 こいつもむさ苦しい戦士らしき男。背中には大きな剣。


「トゥレスルと申す、殲滅力Bの両手剣士である。よろしく頼むぞ」

 ……こいつも似たようなものだ。


「クアトンだ、前衛を務める盾剣士、殲滅力はCだが抑えるのは得意だ」

 武器は片手剣になったものの、むさ苦しいことには変わりない。


「俺の名前はスィンク、殲滅力Bの弓使いだ、よろしく頼むよ」

 こいつもむさ苦しい男だ。もうマヂ無理。。。

 弓使いは珍しいけどどうせならエルフとかにしてくれよ、ムキムキ弓使いとか誰得だよ。


「よろしくお願いします、俺はカエデ、殲滅力Cの魔法剣士です、作戦はお任せします」


 俺も挨拶しておく。

 ウノンが答える。


「今回は全員速度も速め、殲滅力も十分だ。空から爆撃されでもしない限りは障害にさえならないだろう。正攻法に、集まった状態で走って突破する予定だが問題ないか?」


「わかりました」


 まあ、腕は確かっぽいから任せることにしよう。

 脳筋じみた作戦だが、戦力が足りているのなら下手に小細工を弄せずに正面突破したほうがうまく行きやすいものだと思うし。

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