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第3話 ギルドと宿屋

木の扉を開けてギルドの中に入る。

ギルド内部は外から見た印象と同じく質実剛健と言った感じで、入口の正面には銀行の窓口のように仕切りによって4つに仕切られた木製のカウンターがある。1番右の区画は他の区画よりも大きく幅が3mほどあり、買取窓口と書かれている。左の3つの窓口には何も書かれていないが、おそらく買い取り以外なんでもやっているのだろう。

3つの区画のうち1番左にある1つは空席になっていて、残りの2つのテーブルにはギルドの制服らしき服を着た女性が座っている。年齢は20歳前後といったところだろうか。左の席の女性は金髪で碧眼、右の席の女性は黒に近い茶色だがこちらも眼が青い。黒髪も普通にいるようだ。どちらもかなりの美人だから眼福だし、黒髪がいないなどという事がなさそうなのはありがたい。黒目が珍しい可能性もあるが。

ギルドの制服 (?)は青を基調としたデザインで、白い襟がついている。長袖であるし全体的に露出は控えめだが、地味というよりは清楚な感じだ。

右の壁からさっき入ってきた扉にかけて、壁一面にフックのようなものがついている。壁は色分けされ、色ごとにランクG、F、E、D、C、B、A、Sと書かれている。おそらくGが1番下なのだろう。

一部のフックには縦20㎝、横30㎝ほどの小さなホワイトボードのようなものが掛けられ、ランク、依頼内容、報酬、備考が書かれている。

紙にボールペンで書いた字ほどではないが、ある程度細かく書けるらしい。

例えばこんな感じだ。


ランク:G

依頼内容:ズナナ草の採取

報酬:1本あたり30テルでの買い取り。

数量:あるだけ

備考:受注の必要なし。ズナナ草の持ち込みによりその場で依頼達成とする。長さ15㎝以上のものを根本から採取すること。10cm以上15㎝未満の長さのものは1本10テルでの買い取りとなる。それ以下の長さの場合は買い取り不可。

また、似た毒草であるドクズナナと混同されることがあるが、ドクズナナの茎は四角く、ズナナ草の茎は丸いので注意されたし。


cmというのはこの世界でも使われているのだろうか。それともスキルが俺にわかりやすいように翻訳してくれた結果だろうか。まあどっちでも困らないからいいか。

ズナナ草は翻訳されていないし、固有名詞は翻訳されなかったりするのだろうか。でも頭に思い浮かぶ文字はカタカナだし書いてある文字はカタカナではない。

元々の世界にない草ならこのような中途半端な翻訳になるかもしれない。俺の場合ドクズナナと判別するには鑑定してしまえばいい。もしこの依頼を受けるならの話であるが。


Gランク~Eランクまではある程度多くの依頼があるようだがそこからはランクが上がるのにつれて数が減り、Bランク以上になると1件もない。

数少ないCランクの依頼を見てみるとオークの群れがどうとかガルゴンがどうとか書いてある。

そうそうBランクやらAランクやらが必要になるような物騒な事態は起こらないのだろう。ガルゴンがなんだかはわからないがオークが今この町の最高ランクということは町の外に出たらそこそこの確率でドラゴンに食われるような世界ではなさそうで安心した。

もちろん俺が想像している豚面で頭の悪そうな太った巨人というイメージが合っていればの話だが。


依頼板から目を外し、左を見てみるとそこは酒場になっている。丸いテーブルが並べられ、1つのテーブルのまわりには木でできた安物っぽい椅子が4つほど置かれている。

左奥にはカウンターがあり、いかにも酒場のオヤジと言った感じの髭の生えたオッサンが立っている。あそこで酒や料理を買うのだろう。客はそこそこいて、冒険者のパーティーらしき2~4人程度のグループが5組ほど入って酒を飲んだり話をしたりしている。あまりガラがよさそうだとは言えない者が多い。男女比は4:1といったところか。

防具は主に皮鎧のようだ。武器はテーブルに隠れていて見えるものは大男が背負っている無骨な大剣くらいだ。

二階への階段が見当たらないが職員専用の区画にでも階段があるのだろうか。


つい観察してしまったがあまり入口で突っ立っていても迷惑だ。とりあえず真正面にある窓口に行ってみる。受付嬢は金髪のほうだ。

近付きながらどう話しかけたらいいのか考える。まあ用件を言えばいいか、用件を言うだけなら間違っていても被害は小さいだろうし。


「すみません。登録をしたいのですが」


「はい、登録ですね。登録料は銀貨三枚になりますが大丈夫ですか?」


「はい、お願いします。」


そう言ってポケットから銀貨を3枚取り出し、カウンターの上に置く。ポケットにはあと1枚銀貨が残っている。


「ではこれに触れてください。」


銀貨をテーブルの下あたりにしまった受付嬢にそう言って差し出されたのは、街に入るときに門で触れたものよりだいぶ大きい鉄か何かでできた箱だ。

それに触れると、箱の上面に門で表示されたものと同じステータスが表示される。


名前:カエデ

年齢/種族/性別 : 20/人族/男

レベル:2

賞罰:なし

スキル:魔法の素質、武芸の素質、火魔法、土魔法、水魔法


STRやらHPやらのステータスを表示する魔法は一般的ではないのだろうか。

受付嬢は驚いたようにこちらを見たが、すぐに我に返りギルドカードらしき大き目の名刺ほどの大きさの銀色の金属板を箱の上に乗せる。

すると金属板が一瞬淡い青に光り、金属板に文字が表示される。

------------------------------------

カエデ/人族/男

ランク:G

賞罰:なし

依頼達成履歴:




討伐履歴:




------------------------------------

ギルドカードには最低限の情報しか書かれていないようだ。

依頼達成履歴、討伐履歴などは空欄だ。以前に緑犬を殺した分はカウントされないらしい。

討伐履歴等は自動で書き込まれてくれるのだろうか?


「それではギルドについて説明をしますね」


「はい。お願いします。」


どうやら説明してくれるようだ。「教えるまでもありませんよね?」とか言われたらどうしようかと思っていた。


「見ての通りこれがギルドカードです。まず上から説明したいと思います。」


「一段目は名前、種族、性別が書いてあります。二段目はランクです。ランクはGが一番下でそこからF、E、D…とAランクまで上がって、一番上のランクはSになります。しかし現在Sランク冒険者は存在しませんので今の最高ランクはAです。ランクの昇格は依頼の達成、魔物の討伐履歴等を加味してギルドの方で決定しますが、Dランクから上では試験があります。また依頼の達成率が悪い場合は降格することもあります。三段目の賞罰は悪事を働いた時に”盗賊”などと書かれます。悪事を働いたものはそれがたとえ盗みに関係ない殺人等だとしても一律で”盗賊”になります。盗賊を殺しても盗賊にはなりませんし、互いの同意の上での決闘の結果相手が死んだ場合も盗賊にはなりません」


決闘があるのか……。俺も男だ。もし売られた決闘は受けなければ恥だとかいう文化があったらその時には潔く逃げよう!

決闘を挑む以上は勝算があるのだろう。そんな相手と決闘なんてやるのはまっぴらごめんだ。


「四段目、七段目の依頼達成履歴、討伐履歴は依頼を達成した時、魔物を倒した時に自動で書き加えられます。盗賊を倒した場合も討伐履歴に書かれます。ギルドカードでは過去三件しか確認することはできませんがギルドではそれ以上の履歴を確認することもできます。」


盗賊は魔物扱いなのか……。ギルドでしか3件以上の件数を確認できないのなら4匹以上の討伐依頼では何匹倒したか覚えておかないといけないな。

まあ死体をアイテムボックスに放り込んでその数で判断すればいいか。


「最後に、ギルドカードの偽造は不可能になっていますので成りすましにあったりすることはありません。また、まさかないとは思いますがギルドカードを偽造しようとした場合は未遂であっても死罪になりますのでご注意ください。」


コワイ!

ギルドカードの偽造がそこまでの重罪になるのか。


「ギルドカードの説明は以上です。次は依頼の説明に入ります。向こうにかけられているのは依頼です」


受付嬢は右にあるホワイトボードらしきものがかかっている壁を指差す。


「備考の欄に”受注の必要なし”と書かれているもの以外の依頼を受けたい場合はこちらにギルドカードと一緒にあそこにある依頼板を持ってきて受注してください。ただし現在の自分のランクまでの依頼しか受けることは出来ず、一度に受注できる依頼はGランクでは三つまでですが、Eランク以上になると五つまで受注できるようになります。依頼の期間中に依頼を達成できなかった場合、違約金として報酬の倍の額を払うことになりますので注意してください。ただし天変地異やその他の不可抗力があった場合はその点も考慮されます。これは冒険者が無理な依頼を受注してしまわないための措置です。”受注の必要なし”と書かれている依頼に関しては依頼板の指示に従ってください。討伐依頼であればギルドカードの討伐履歴を見せる、採取依頼であれば現物を持ち込むなどですね。すでに3つ依頼を受注している場合でも”受注の必要なし”と書かれている依頼は達成することができます。」


あのホワイトボードらしきものは依頼板というらしい。


「討伐履歴には日付と清算済みかどうかが書かれますので依頼の出された日に気を付けてください。依頼が出された日より前の討伐履歴を持ってきてもお金になりません。常時出されている依頼に関しては討伐から30日以内の物のみが清算対象になりますのでご注意ください。また清算に一度使った討伐履歴は清算済みと書かれるので一度の討伐で二つ以上の依頼を達成することはできません。1匹討伐する依頼と2匹討伐する依頼があったとして3匹討伐すれば両方を達成することは可能です。依頼に関係ないものでも薬草や魔物の素材などはあちらのカウンターでも買い取りをしています。死体をそのまま持ち込んでもいいですが荷物が多くなるのであらかじめ売れる部位を調べておいてその部位だけ持ってくるのをおすすめします。魔法の素質を持っているようですがアイテムボックスの容量にも限度がありますので。他に個々の依頼について質問があったら気軽に聞いてください。何か質問はありますか?」


「いいえ。特にはありません」


随分と便利なシステムがあるようだ。依頼が紙ではなく依頼板に書かれているのは紙があまり普及していないせいだろうか。

俺のアイテムボックスの容量は1012あるようだからそうそう埋まらないだろう。重量制限とかあったらやだな。


「それではあなたは今からギルドメンバーです。ギルド員として自覚ある行動を期待します。依頼を受注していきますか?夜は視界が悪くて不意打ちなどを受けやすいのであまりおすすめはしませんが」


「今日はもう暗いですし明日にしておきます」


「はい、わかりました。賢明な判断です」


俺はギルドを出て門へと向かう。もう日は落ちている。

閉店準備をしている店もなくなり、開いている店は酒場らしき店だけだ。人通りもほとんどなくなっている。

門についた。


「仮身分証をもらった者ですが冒険者登録をしてきました」


「ああ、これに触れてくれ。」


来たときと同じ白い板に触れ、門番はそれを確認すると仮身分証を受け取り、銀貨1枚を俺に渡す。

俺はそれをポケットに入れ、門番に礼を言い、ついでに今日の宿をどこにしたらいいか聞いてみる。


「ありがとうございます。ところでどこか安くておすすめの宿はありませんか?」


「そこの角を左にまっすぐ行くと”はねやすめ亭”がある。冒険者には人気だ。1泊600テル、そこそこ安いが飯はうまいし安全だ」


「ありがとうございます、行ってみます」


俺が衛兵に言われた角を左に曲がる。路地はなんとなく住宅地っぽい感じがする。ギルドへ行く通りみたいに店が多かったりはしないようだ。

30mほどまっすぐ行くと”はねやすめ亭”と書かれた看板がある木造2階建ての建物が見える。

新しそうな建物ではないがボロいというわけでもない。普通の宿って感じだ。立地があまりよくないから安いのかもしれない。

そんなことを考えながら俺ははねやすめ亭のドアを開け、中に入る。中もRPGとかで見るような普通の宿屋って感じだ。

隣には酒場なのか飯屋なのかよくわからない建物がある。


「いらっしゃいませー。」


12、3歳くらいに見える女の子が出迎えてくれた。出迎えてくれた女の子がパタパタと店の奥に入ったと思うと、ほどなく恰幅のいい女の人が出てきた。

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