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第31話 ドラゴンと報告書

 また変なのが出てきてもうれしくないのでまっすぐ帰ることにした。鑑定とかは洞窟をでてからでいいだろう。

 炭鉱から出てきた物だからガインタさんにも話さないといけないし。勝手に持って帰ってはまずい気がする。

 地球にはアーティファクトなんてなかったが地下から宝が出てきた場合土地の所有者にもある程度権利があったはずだ。


 来たときの穴をもう少し広げてからジャンプで坑道に戻る。

 ジャンプで2m近く上にある足場に飛び乗るのにももう慣れた。来たばかりのころはいまいち意識しないとこの高さの足場に飛び乗ると言う発想が出てこなかった。今では自然な感覚だが。


 飛び上がったところでそもそも俺がここに来た目的はアーティファクト探しじゃなくて魔力過多の解消だ。

 どうすればいいのだろう。確かめようがない。

 魔力過多が問題になっていた場所ではMP上限が増えていたからステータスで分かるかも知れない。人間探知機だ。

 と言うことでステータスを開き、MPの欄を見てみた。MPの推移から推測しよう。


 MP:673122/94528637

 MP:676564/94528637

 MP:685732/94528637

 MP:689238/94528637


 ファッ!?

 回復の仕方がおかしい。

 今までは分刻みで回復していたのが不規則な感じのペースでガンガン増えていっている。あと上限もおかしい。一億近い。

 正直下の方の桁なんて目で追えた物じゃない。

 ……まあ、回復はしているから回復が止まっていた時とは状況が変わったのは確かだ。

 スキルの影響かと思いスキルに目を移してみる。


 スキル:情報操作解析 (隠蔽)、異世界言語完全習得 (隠蔽)、魔法の素質、武芸の素質、異界者 (隠蔽)、全属性親和 (隠蔽)、火魔法3 土魔法3 水魔法3 圧力魔法1 知覚魔法4 回復魔法2 剣術2 魔素適応unknown


 変化はない。魔素適応はunknownだから上がったかどうかは分からないが。

 しかし億近くまで上がったというのは何なんだろう。来たときのペースからしてここまで上がるとは思えない。

 もしかして、あの素手による攻撃で消えていった魔物は消えていたんじゃなくて吸収されてたとかか?

 周囲から何かを集めてできていたような気がするし、同じ場所、同じ時期に起きた異変だということからその何かがMP最大値や魔力過多に関係のある何かだという可能性も高い。

 本当に吸収して(たべて)しまったのか?

 ステータスからして直ちに健康に影響はなさそうだがあまりいい気分ではないな。MPが増えただけよしとしようか。


 一応MP上昇は止まったし回復もしている、これも報告はすべきだろう。

 しかしMPが見えるのは珍しそうな上に教える必要性はあまりない、適当にごまかすか。

 魔力過多になりそうな感じのプレッシャーみたいな物が消えた! とか言っておけばいいだろう。よく分からないけどそんな気がする、というようなことを言っておけばあとは向こうが勝手に解釈してくれると思う。

 どうせ向こうだってこちらに専門家としての意見を求めてるとかではないのだし。


 そんなことを考えながら坂を上っていき、入り口まで帰ってきた。外はもう夜中だ。

 わかりやすい道で助かった。そうでなければ炭鉱の中で迷うことになっていたかもしれない。

 外から見た限りここの上は建物ではなく森のようだったから坑道(マイン)の天井をちょっとばかし加工(クラフト)すれば脱出できたかも知れないが、坑道の天井に地上まで続く穴を掘られたら色々困るだろう。落盤が起こる可能性も高い。

 今日はみんな帰ってしまったし報告は明日の朝にしようと考え、飯を食って部屋に戻る。

 鑑定と読書の時間だ。まずは剣だ。長さは1m半ほどとかなり長めだが、細身であまり重くは感じない。ドヴェラーグさん作の剣にくらべればやはり倍くらいの重さはあるが、今の俺からしたら誤差みたいなものだ。

 色は蒼と黒の中間のような色で、装飾などはない。鍔はあるが。ともかく鑑定だ。


 魔法剣 アーティファクト

 説明:使用者と魔法的につながり、使用者により与えられた魔力により自らを強化する剣。


 やはりアーティファクトだったようだ。それもあの刺さり方からすると剣としてはかなりの性能を誇るだろう。アーティファクトとしてどうなのかは分からないが。

 これはほしいな、ネコババしてしまおうか。

 いや、それはよくない。これからビジネスパートナーとしてやっていくのにずっと後ろめたい物を抱えることにもなる。


 次だ。魔物から出てきた明かりっぽい何か。


 魔灯 アーティファクト

 説明:魔石加工品、ためこまれた魔力により光を放つ。


 試しに魔力を込めてみたところ、日本にあった部屋の明かり用のLEDを超えるであろう光量の光が放たれた。明らかに宿などで見る魔灯より光量が大きい。

 その上なぜか直視してもまぶしくはない。不思議な明かりだ。

 ところでどうやって消せばいいんだろう、これ。ボタンなど付いていないしスイッチらしきものもない。ただの球だ。

 色々見てみたがやっぱり全面完璧にただの球だ、とりあえず保留、アイテムボックスに放り込んでおく。

 次は黒い球だ。


 ウィスプコア

 説明:ウィスプのコア。魔力伝導性、保持性が極めて高い。


 魔石の名前は魔石だったはずだ。○○のコアなどではない。

 つまりこれは恐らく魔石ではなく、あの魔物らしき何か、恐らくウィスプという名前の生物のコアなのだろう。

 俺は専門外だが書いてあることは有用性が高そうだ。

 これは冒険者としての仕事中に倒した魔物から出てきた物だから俺のものになるはずだ。一応報告はするが。

 魔灯のほうもウィスプから出てきたのだがこちらはアーティファクトというだけあって元々あった物の可能性が高い。

 付喪神的な感じかもしれないがこれは一応相談すべきだろう。魔物に何か盗まれてそれを討伐した場合の扱いみたいになるのかな。

 盗賊の場合は基本的に討伐した冒険者の物だが今回の制圧はガインタさんの依頼だ。

 まあそれはあとで交渉すればいいか。


 いよいよ最後、メモ帳らしき何かだ。アーティファクトと共に出てきたことからその時代の情報が書かれている可能性がある。

 これで日記とかだったらとんだお笑い草だが。

 1ページ目は表紙のようだ。色あせてはいるがうっすらと「報告書」と言うような字が見える。劣化している可能性が高いので手でゆっくりと丁寧にページをめくる。

 本来はピンセットなどを使った方がいいのだろうがあいにくここにはない。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 8月4日 雨


 ドラゴンの討伐に失敗、やはりあの裏切りが響いたのだろう、魔力不足だ。魔法使いの確保が間に合わなかった。

 出現誘導、術式展開までは成功したので恐らく若干のダメージを与えたもののドラゴンはすでに回復していると予想される。

 討伐に参加できなかった魔法使いの場所を教えて可能な限りの魔法使いを各地に分散して逃がした。再度可能な限りの魔法使いを集中させての再討伐を提案する。もう時間は残されていない。

 これより帰国のため移動を開始する。


 8月15日 晴れ


 パルメン大陸が滅亡、ドラゴンの炎により完全に焼き尽くされたことから生存者はほとんど期待できないと思われる。

 これにより恐らく魔法使いのうち約6割が死亡、もはや正常な手段によるドラゴン討伐に足る魔法使いの確保は不可能だと思われる。

 魔法使いを消費してでも倒さなければならない。もっと早くそうしておくべきだった。

 恐らくあと2日ほどで王都につくと思われる。

 情報を収集することしかできないこの能力が恨めしい。俺が王都を出る羽目になったのも魔法使い不足のせいだ。魔素障害により質の低下も激しい。

 2年間隔でドラゴンなど、この世界はそろそろ限界なんだろうか。


 8月16日 天気不明


 王都到着前日のはずが王都が滅びた。

 ドラゴンの炎はここと王都の中間当たりで止まったようだ、今はシェルターにいるが何の気休めにもならない。

 終わりだ。


 8月17日 天気不明


 魔素障害が酷い。俺もここまでのようだ。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 と、インクのような物で書かれている。文字は今この国で使われている言葉とは違う気がする。

 報告書とは書いてあるが、1ページ目にしか文字は書かれていなかった。それに書き方も報告書っぽくない。

 色々とヤバげなことが書いてあるが、とりあえず情報をまとめてみるか。


 まずドラゴン、これは魔法使いによって討伐するもののようだ。

 書き方からして恐らく大勢の魔法使いが必要だ。

 出現誘導、術式展開というのはよく分からないが字面からするとドラゴンの出現場所を限定するような感じか?

 ドラゴンというのはある日突然出現するものなのだろうか。2年間隔とか書かれているがよく分からない。

 術式展開は恐らく攻撃用の術式のことだろう。

 討伐に失敗した場合数日で国だの大陸だの滅びるらしい。どれだけでかいんだろう。


 次に魔素障害だ。これは正直症状など何も書かれていないから分からないが、俺が探索した洞窟による魔力過多というのと関係があるかもしれない。

 そこに突撃した俺についた新たなスキルも魔素適応だ。書き方からして魔素障害は魔法使いの質を下げる原因にもなるのだろうか。


 王都やらパルメン大陸とやらはこれが書かれた時代の大陸や国だろう。今となっては何の役にも立たない情報だ。

 シェルターというのはあの建物のことだろう。壁はやや青っぽいこちらではあまり見ない感じの色だった気もする。

 これを書いた人間は魔法使いのようだが、おいてあった武器は剣だ。この辺の事情は書かれていない。

 まあドラゴンも魔素障害も、広まっているなんて話は聞かないし俺には関係ないな。

 遺品はこちらで処分しておこう。恐らく遺族は生きちゃいないし。

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