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第25話 鎧と散弾

 翌日、盗賊退治の問題でギルドを訪れると、受付嬢が手招きをしているのが見えた。今日は女の子だ。かわいい。


「ギルドカードの提示をお願いします」


「カエデさんですね。指名依頼が来ています、それから依頼達成の報酬金です」


 ギルドカードを見せると、金貨3枚と依頼板を二枚書く側を真ん中にして重ねたようなものを渡される。

 見える面には「秘密保持のため周囲に人がいないことを確認してから開封すること」と書かれている。

 全力で「秘密を運んでいますよ」と主張しているが大丈夫なのだろうか。


「ありがとうございます」


 板をアイテムボックスに入れ、礼を言ってギルドを出た。宿で開けようか。

 宿の部屋で開封すると、依頼の内容が書かれていた。


 ランク:E

 依頼内容:盗賊討伐

 報酬:50000テルを参加人数で山分け、また討伐一人につき500テルの追加報酬

 数量:盗賊団全員

 備考:15の日の朝の鐘が鳴った1時間後にギルドに集合、受付で依頼書を見せること。集まった人次第で作戦を決定する


 15の日というのは明日のことだ。

「明日盗賊を討伐しますが参加しますか?」などと聞いて回るわけにはいかないから参加した者だけでいくのだろう。

 必要な人数が集まらなかったらどうするつもりなのだろうか。

 恐らく日を変えるのだろうが。

 金貨3枚は情報料だけなのか気になってギルドカードを見てみるが、盗賊の討伐履歴はギルドカードに書いてはいなかった。

 ギルド流隠蔽術かなにかだろうか。

 消えていると言うことは恐らく報酬はもう払っていると言うことなのだろう。

 情報量の方は含まれているか確認する手段はないが討伐隊が組まれていると言うことは確認が取れたと言うことではないだろうか。

 これも推測でしかないが。


 明日まではまだ長い――というかまだ丸1日ある――ので工房のほうにも見に行ったが魔力抜きは明後日ほどまでかかるという。

 次は炭屋だ。


「こんにちは、コークスはどうですか?」


「コークスってのはあの精錬に使える石炭のことか。言われたとおりに小さい設備作ってやってみたんだが石炭の端のほうが穴だらけになっただけだったね」


 おお。穴だらけということは多分完成しているということだ。

 端のほうだけというのは・・・・・・コークスを置く場所を薄くすればいいんじゃないだろうか。


「その穴だらけのがコークスです。火をつけると木炭より高い温度で燃えると思います」


「ほぉ・・・・・・ちょっと燃やしてみてもいいかな?」


「もちろん構いませんよ」


 炭屋の人はコークスになっている部分を削り取り、火をおこし始める。

 炭屋とは言っても売るのがメインで別に使うわけではないのだろう。

 やることもないので周りを眺めていると、コークス製造装置のようなものが見える。

 ガスを移動させて使う装置のようなものまで付いている。完成度が高い。ドワーフが作ったのだろうか。

 準備が整ったようだ。ずいぶん速い気もするがこの世界のことだ、魔法的な何かがあるのだろう。


「んー・・・・・・確かにこの量の割には火力がずいぶん高いね、これはすばらしい燃料かもしれない。でも精錬に使うにはまだ量が足りないね」


 どうやらできているようだ。量の確保は・・・・・・並列してやればいいか


「同じものをいくつか作れば量は確保できると思います。問題は採算ですが・・・・・・」


「加熱用にいい燃料ではあるけど今のままじゃ厳しいね。高い火力を生かして鍛冶屋とかに売れるかも知れないけど精錬用にはコストが高すぎる、これなら木炭を使った方がましだね。もし石炭全体をコークスとやらにできるようになってそれが精錬に使えるなら木炭と同じくらいかな、でも今の石炭は家庭燃料用に小売りされてるものだから炭鉱関係者から直接仕入れればだいぶ安くなるね」


「それは石炭を置く場所の厚さを小さくすればいけると思います。薄い石炭を入れる部分と加熱するための炎を燃やす場所を交互に重ねるんです」


「それならいけそうだな。やってみるがとりあえずは一つだけ作ってみてできそうなら重ねたのを作る方針でいってみる」


「はい、お願いします。資金はどのくらい残っていますか?」


「まだ金貨一枚も使ってないはずだ。だいぶ余裕があるね」


「そうですか。必要になったら教えてください」


「そうするよ、当分は大丈夫だろうけどね」


 店を出た。この調子なら実用化は難しくないかも知れない。

 行く場所も無いので昼飯を食ってから冒険に出ることにする。

 今日も今日とてレッドウルフ殺しだ。

 夕方まで殺し回って30匹ほど倒したところレベルが一つ上がった。

 剣やら魔法やらのレベルは上がらなかった。

 そういえば杖を使って魔法を速くしたりする方向での強化はしているがそれで使う魔法自体は特に強化していない。

 今まではそれで十分だったしMP消費のことも考えると単純に燃費がよくて強いだけの魔法は作れそうにない。

 しかし扱いやすい魔法というのはあってもおかしくはない。

 明日は盗賊狩りだから対人用魔法だけ用意して残りは明後日にでも試そうか。

 ネトゲで対人に向いているスキルというものもあったがこの世界では確実に効率が悪い。

 派手だし関係ないところまでまとめて炎に巻き込んで攻撃するようなスキルだからな。


 それで、対人用に向いた魔法とは何か。

 まずは威力だ。これはそこまで必要がない。人間は他の動物と違い厚い毛皮などはない。

 頑丈な装備をしている場合もあるがとりあえずは軽装の相手を想定する。

 次に速度だがこれは速いほどいい。そのためには新しい杖を待たなければならない。

 つなぎの杖を買うこともできるがそれには及ばないだろう。これはいじりようがない。


 さて、威力を犠牲にして何を求めるかだが、やはり弾幕だろう。

 小型の岩の槍が大量に敵に向かって飛んでいく、これだ。

 アジトは洞窟のようだったから火を使うのは怖いし水は見るからに貫通力がない。

 風属性というのがあったがこれも攻撃には向きそうにない。浮かせるとかどうとか、遠距離攻撃の手段を持っている相手からしたらいい的だ。


 ん?もしかして浮かないでも風に体の周りを高速で周回させたら遠距離攻撃が防げて強いんじゃないか?

 そのイメージで魔法を使ってみた。

 かなり速い風が周りで吹いている気がする。傘を差したら飛ばされそうだ。これで魔力を秒間10消費するらしい。

 周りに生えている草も台風にあおられているような感じになっている。

 試しに地面から小石を拾って頭の上に投げ上げてみた。

 石はまっすぐ上に飛んでいき――そのまま俺の頭の上に落ちてきた。

 よく考えると石を吹き飛ばすほどの力が無ければ石ころさえ防げなさそうだ。弾道をずらすにしても距離が足りない。

 そんなことより直接体の表面に魔力で壁を作ればいいんじゃないだろうか。そんな感じのスキルをゲーム内での魔法使いも使っていたはずだ。

 俺は物理系火力職だったからそういった補助とは無縁で個人用の攻撃力が上がるドーピングスキルがいくつかあっただけだが。

 体の外に装甲を作るイメージで魔法を発動させた上で石で手を突っついてみようと思い、石に触ろうとするが、魔法が石を押しのけてしまってつかめない。

 害意があるのだけ勝手にはじいてくれれば便利なのだがそこまではしてくれないようだ。


 仕方が無いので顔にだけ魔法を使って拾った石で頬をつついてみる。

 石は魔法に阻まれて俺の顔には到達しなかった。割と強くつついても問題はないようだ。

 そのかわりステータスを見る限りつつかれるたびに少しの間魔力が消費されている。

 これは装甲を作るときに使った魔力で攻撃を相殺し、その分を補填しようとしているんじゃないかと思う。その説明が1番自然だ。

 いろいろ試してみると他の魔法と同じくこの魔法にもあらかじめ魔力を多く込めておくことができるということがわかった。

 また服などは自分の体の一部と見なされているようで排除されなかった。武器は駄目だったが。基準がわからない。

 この魔法は手以外の全部位にかけておくことにした。触板のように一度展開すれば攻撃を食らうまでは魔力を食わないためだ。

 椅子に座ったりできなくなるし飯も食えないので街を出るときにかける形になるが。ちなみにこれはその辺に落ちてた毒の無い葉っぱを食おうとして試した。

 万一のため目だけは常にしっかりと保護しておく。いくら触板があっても目に何か食らうのは何かと問題だ。


 防御はこれでいいだろう。次は攻撃だ。元々攻撃魔法を開発するつもりだったんだし。

 ゲームみたいに魔力で体を強化する気にはなれない。一歩間違えばしめやかに爆発四散する羽目になるかもしれない。コワイ!

 風魔法はあまり使えそうにない。攻撃的なイメージがあまりないからな。

 水魔法、俺は暴徒を鎮圧しに行くんじゃない、盗賊を殺しに行くんだ。却下。

 火魔法、洞窟で使う気にはなれない。自分の首を絞める羽目になる。

 じゃあ土魔法だ。岩の槍を小さくすれば銃弾みたいなものだし対人には小さくても十分だろう。

 獣と違って人間は手足に弾丸が刺さったくらいでも簡単にひるむしその間に殺し放題だ。

 小型化する代わりに求めるのはやはり数だ。

 新しい杖が完成するまでは速度はそこまで速くないが弾幕を張ってしまえばよけようがない。

 人間が幅40cmだとして横に30cm感覚で槍を並べればよけようがないのだ。

 とはいえ横一列に細長く魔法を展開したりはできない。飛び始める点が体から遠くなってしまうからだ。

 ということでショットガン的な感じだ。それも現実のショットガンのような飛び方ではなくモ○ハンのショットガンのように広く広がるように弾が出るやつだ。

 制圧力を上げるために弾は通常の50分の1として7×50=350発の細長い槍がショットガンのように飛んでいく。

 50分の1では火力が足りないかも知れないと思ったが弾痕を見てみると木に2cmほど食い込んでいるようだ。

 この程度でも十分時間を稼げるだろう。それに0.5秒後にはまた次の槍が飛んでくるのだ。これだけ大量に飛んでくればはじいたところで衝撃だって馬鹿にならない。対人魔法は魔法の鎧と、連射ショットガン、これでいこう。

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