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第21話 救出と斡旋

 盗賊らしき反応を発見してしまった。

 とりあえずそれが本当に盗賊か判断しなければならない。襲いかかってみたら無実の人間で自分が盗賊になってしまったとか笑い話にもならない。

 かといってフレンドリーに近づいてみたところで本当に盗賊だった場合先手を譲ることにしかならない。

 そんなことを考えていると触板の範囲をその集団が出ようとしていることに気づいた。慌てて追いかける。

 追いかけながら圧力魔法6つセットで用意する。あらかじめ魔力を込めておくことで距離が離れていても不意打ちする際に即座に、敵の位置に直接叩き込める、という点では圧力魔法は便利だ。その分魔力消費は増えるが。

 特に訓練なども受けたりしていないしこっそり鑑定できるほど近づく方法もわからない。

 ではどうするかというと、その場でジャンプして見えた隙に鑑定だ。メタルリザード相手に使ったあれだ。

 ジャンプしてみると、男たちが目に入った。案の定年齢が低そうな一人は抱えて運ばれているようだった。おそらく少女だ。

 その中の一人を鑑定すると、盗賊であると言うことがわかった。ステータスは一般の冒険者程度だ。

 ”盗賊”というイメージをを思い浮かべてもう一度ジャンプすると男たちの全員の頭の上に▼がついていた。FPSみたいだ。

 盗賊であるとわかれば遠慮はいらない。さっさと倒してしまうことにする。

 殺そうとするとためらいのせいで放つのが遅くなったりする可能性がある。それにただの圧力なので当たれば確実に殺せる部位というのも思い当たらない。なので作戦はこうだ。

 一気に近づき、殺す可能性は低く、なおかつ圧力を加えられた場合の制圧力が高い部位を狙って魔法を放つ。これだ。

 では、殺す可能性が低く、なおかつ圧力を加えられた場合に最も制圧力が高いと思われる部位はどこか。


 ――むろん、急所だ。


 さっき見たところ、盗賊らしき人間は全員男だ。これを先制で打ち込まれては反撃のしようもないだろう。

 そこそこ魔力をため終わったので、攻撃に移ることにする。

 ダッシュで一気に3mの距離まで近づき、6人の急所に向かって魔法を発動させた。

 きゅうしょに あたった!

 その瞬間、男たちの体のうち象徴のある部分が()()()()。物理的に。

 痛いなんてものではないだろう。威力が高すぎたらしく、股間を押さえてのたうちまわるどころかその部位が腹にまで食い込んでいるように見える。

 うめき声を上げた男が地面に落としそうになった女の子を慌ててキャッチする。

 見た目17歳くらい、赤みを帯びた茶髪で背が低い女の子だ。

 女の子を抱えて男たちから距離をとる。やられたふりをして攻撃されるとしても距離があれば対処できる。

 そう思い、離れてから一人一人鑑定していくが、全員死んでいた。内臓がどうにかなったのだろう。

 人を殺したという割にはあまり罪悪感はなかった。FPSとかでだが殺し合いに慣れていたせいかもしれないしほかの動物をすでに殺しているせいかもしれない。


 ともあれ、この女の子どうしよう。盗賊の討伐報酬は出るなら出るでギルドカードを持って行けば問題ないだろう。首まで運ぶ気にはさすがになれないし盗賊なんてやっているような奴らがたいした装備を持っているとも思えない。

 とりあえず女の子を鑑定してみる。


 名前:スミサ

 年齢/種族/性別 : 18/ドワーフ族/女

 レベル:7

 HP:36/36

 MP:9/9

 STR:16

 INT:12

 AGI:8

 DEX:63

 スキル:生活魔法

 状態異常:強制催眠


 DEXが高い!! 器用なタイプだ!! 

 やはりドワーフだからだろうか。

 いや、今はそんなことはいい。この強制催眠というので眠らされているのか。治癒魔法で何とかならないだろうか。

 ……いや、自分の体、それも末端部分を治すのや治さなければ死ぬ状況で全身を治すのとは違う。下手にいじって取り返しのつかないことになったら大変だ。

 幸いHPは減っていないようだしおそらく強制催眠は直ちに健康に影響はないのだろう。

 ドワーフ族らしいしエレーラからさらわれた可能性が高い。このままお姫様だっこでエレーラまで運んでしまおう。

 少しスピードを落として道に戻り、坂を上り始める。とはいえ馬より速いことに変わりはないが。

 森から出る少し前に道に馬に乗った人らしき反応があったが俺が森から出る頃には通り過ぎていた。

 走り出して1時間ほどすると景色が変わる。一面の禿げ山だ。

 木という木はことごとく切り倒され、切り株となって残されている。

 何が起きたのだろうかと思いながらさらに山を登っていくと、10分ほどで門が目に入る。

 門にはエレーラと書いてあった。いつもと同じギルドカード確認をされる、と、気づいたら衛兵さんに囲まれていた。


「おい、その子はさらわれたスミサちゃんじゃないか? 盗賊を倒したようだがその子をさらっていった連中か?」


 別に武器を突きつけられたりはしていない。盗賊じゃないことが確認できているからだろう。


「はい、盗賊が運んでいるのを見つけまして。盗賊を討伐して連れてきたんです。強制催眠をかけられているみたいなんですがどこに連れて行けばいいですかね?」


「強制催眠か。薬を使えば簡単に治るが助けてくれたとはいえよく知らない人間に預けることはできない。こちらで預かるがかまわないな?」


「はい、大丈夫です。ところで武器の製造はどこに頼めばいいのでしょうか?」


「材料と作るものによるが、直接工房に行くよりは斡旋所へ行った方がいいと思うぞ。この道をまっすぐ行けば突き当たりにある。それから夕方の鐘が鳴ったら詰め所に来てくれないか? 謝礼なり何なり渡すものがあると思うからな」


「ありがとうございます」


 スミサちゃんを衛兵さんに渡して斡旋所へ行くことにする。またドワーフに追い出されるのだろうか。

 そう考えながら斡旋所まで移動し、扉を開けたが、そこには予想外の光景が広がっていた。

 ドワーフがいないのだ。右手にあるカウンターには人族の男がいた。3つに区切られたカウンターにそれぞれ一人。

 俺が来たのと反対側にもドアがあり、そちらからも入れるようになっている。

 1番近い人に話しかけてみる。


「メタルリザードの装甲を剣と鎧と盾に加工したいのですがどこに行けばいいですか?」


「あー、メタルリザードメタルならスミズさんの工房に頼むといいと思うんですけど……」


 歯切れが悪い。スミサちゃんと名前が似ているが関係あるのだろうか。


「娘さんがさらわれたので捜索に出ていますし帰ってきても引き受けてもらえるとは思えませんよ?」


 関係ありすぎた。そりゃあ親子なら名前が似ていてもおかしくない。


「それでしたら娘さんは先ほど救助されたみたいですよ。眠らされていたようですが大丈夫みたいです」


「おお、運がよかったんですね。道を探す人と街の付近を探していたみたいなんですが最近は見つかりにくかったんですよ。道にもいないのに距離を稼がれているとなると途中まで道を使ってそこから森にでも入られたのかもしれませんがそうなると探すのはかなり難しくなりますし……」


 ちょうどそのシーンに俺が遭遇したという訳か。遭遇と言うよりは一方的に発見したといった方が正しいが。

 まあそのことを言うつもりはない。武器加工を斡旋する人がそんなこと言われたところで反応に困るだけだろう。


「そうですね。ところでその工房はどこで金はどのくらいかかりますか?」


 いくら娘を助けてもらったからと行ってただにしていては商売にならないだろう。本来さらわれなければ金もかからず探しに行く必要はなかったのにその上無料で武器の加工をさせられるとかひどすぎる。

 なのでそこまでする気はない。


「剣や盾によると思いますが実用性本意の装飾がないもの、材料持ち込みで片手剣1本だいたい100万ってとこですね。両手剣なら130万くらいになります。道はこちらにある地図の5番です」


 そう言ってこのあたりの建物の様子が書かれた板を指さす。

 前言撤回。高えよ。手持ちは10万とちょっとだ。もちろん足りない。


「ええと……手持ちの装甲のうちいくらかを売却したりできる場所ってありますかね……?」


「加工やってる場所で買い取ることが多いですね。メタルリザードメタルは最近供給が少なかったから割とほしがってる人は多いと思います。大体1キロあたり300万ってとこですね」


 えっ、1匹まるまるあるんだがいったい何キロあるんだ。もしかして亜龍の剣買えちゃう?

 でも防具も作らなければならないし短期間で手に入ったはいえ簡単に使い果たしてしまうのはもったいないな。現状の剣でも不自由は感じていないしあの頑丈さなら言うことはないだろう。特殊効果とかはなくても魔法で何とかなる。


「わかりました。ありがとうございます」


 どうやらたかりをせずにすみそうだ。というか「娘を助けてやったんだからただで武器加工しろ」 とかどっちが盗賊なんだかわからない。

 とりあえず本当に売却できるかどうかも確かめねばならないので工房に入ってみる。すると近くにいた人族の男が近づいて話しかけてくる。


「スミン工房に何か用でしょうか」


 スミン工房か。名前が似ているしスミズさんの先祖か何かだろうか。


「はい。メタルリザードメタルの加工と余ったメタルリザードメタルの買い取りをお願いしたくて」


「おお、メタルリザードメタルですか。最近メタルリザードが現れなかったもので品薄になってたところなんですよ。何キロありますか?」


「ええと……アイテムボックスに1匹丸ごと入っているのですがメタルリザード1匹から何キロ位とれるものなのでしょうか?」


 男はこちらを胡散臭げな目で見てくる。


「アイテムボックスにメタルリザードが1匹? メタルリザードって体長10m近いあれですよね? アイテムボックスについてはあんまり詳しくないですがそんなに入るもんなんですか?」


「あー。私はちょっとなぜかわかりませんけどアイテムボックスの容量が大きくてですね、なぜか入ってしまうのですよ」


「え、そ、そんなこともあるんですね……。ともかくメタルリザード1匹でしたね。体長10mほどと考えていいですか? でしたら1400kg位になると思います。さすがに資金が不足すると思いますので一括で全部買い取りは無理だと思います。それに先ほどスミサちゃんが見つかったと連絡がありましたが今日1日は親方も仕事をしないと思いますから明日以降に……」


 そこまで男が言ったとき、起きたらしいスミサちゃんとともにドヴェラーグさんの雰囲気を若干柔らかくした感じの(ドワーフ)が入ってきた。

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