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第15話 整備と素材

 さて、まずはギルドに報告に行かずばなるまい。

 いつも通りギルドのドアを開け、サリーさんに話しかける。


「こんにちは、依頼の報告に来ました。グリーンウルフ討伐です」


「はい、ギルドカードを渡してください。今日は700匹くらい殺しでもしてきましたか?」


 サリーさんがギルドカードを受け取り、笑いながら割と当たっている推測を口にする。

 だが実際は道中で出会ったものも含めて513匹だ。誤差30%弱だな。


「さすがにそこまではいませんでした。513匹ですね」


 なんだか負けた気がする。あと200匹くらい探せばよかったかな。群れをもう1つ見つけなければならないが。


「は……? はい、513匹ですね。ところで、このグリーンウルフはいったいどこで倒してきたのですか?」


 俺の悔しそうな顔を見てか、サリーさんがますます笑顔になる。少し不自然な笑顔な気がしないでもないが恐らくは気のせいだろう。


「森を10分ちょっと下ったところでグリーンウルフの大群と遭遇しまして。魔法やら剣やらで襲い掛かってくるのを根こそぎにする間にこのくらいの数になりました」


 俺の話を聞くとサリーさんが少し訝しげな表情になる。


「グリーンウルフが……? その群れは一つだけですか?」


「はい、そうですが、何かあるんですか?」


「いえ。グリーンウルフは本来そこまで大きい群れは作らないんですよ。せいぜい5匹やそこら、ごくたまに優秀なリーダーが現れた結果なのか100匹程度の群れが発見されていますが500匹というのは聞いたことがありませんね」


 つまり俺はかなり運が悪かった……いや、良かったのか?結局倒せたし戦い方もつかめた。

 倒せていなかったらおそらく俺はここにいないことを考えると不幸中の幸いといったところだろうか。


「ともかく清算します。1匹10テル、513匹なので5130テルですね。ところでグリーンウルフの死体は売っていきますか?」


「はい。全部売ってしまおうと考えていますが向こうのカウンターに行けばいいんですか?」


「あー、今ここで全て売るのは出来れば控えていただけるとありがたいです。ギルドにはある程度の食材を腐りにくくして保管する設備は存在しますが容量がそこまでありませんので。ギルドの規則ですからそれでも売るとおっしゃるなら買い取るほかありませんが100匹くらいに控えてはいただけないでしょうか? 魔石は利用できますが肉を腐らせてしまうのはもったいない上衛生上もよくありませんし……」


 そりゃそうだな。みんながみんなアイテムボックスを持っているわけではない。当然食材を保管するにしても他の街に輸送するにしても楽ではないだろう。

 別にギルドに恨みもなければ金にも困っていないので従うことにする。


「わかりました。では100匹はカウンターで?」


「はい、こちらでお願いします」


 サリーさんが買取カウンターに移動する。俺はグリーンウルフの死体を状態のいいものからガンガンそこに乗せているがサリーさんはそれを足元あたりにある何かに片っ端から放り込んでいる。

 足元に倉庫 (?)の投入口でもあるのだろうか。考えてみると確かに合理的かもしれない。

 100匹の受け渡しが終わったので元のカウンターに戻り、金を受け取る。1匹200テルなので25130テルだ。お礼を言ってギルドを出る。

 さて、あとは鍛冶屋だな。攻撃を食らってはいないので鎧のほうは特に傷もついていないし汚れも服と同じですぐに落ちた。

 だが盾や剣は結構酷使した気がするので一応見てもらっておくことにする。剣を振るときの抵抗が特に大きくなった感じはしなかったが戦闘中はどんどんSTRが上がる状態だったからあてにはならない。


 ドヴェラーグさんの店のドアを開ける。

 ドヴェラーグさんは珍しく店番をしていた。


「こんにちは、戦闘で剣と盾を酷使したのでメンテナンスをお願いしたいのですが」


「おう、見せてみろ」


「これです」


 そう言って剣と盾を差し出す。ドヴェラーグさんは剣と盾を観察したりつついたりしていたが、やがて俺に盾を返す。


「盾は修理の必要はねえな。剣のほうは芯は歪んでねえが刃のほうがな、研ぎなおさなきゃならねえ。500でいいか?」


「はい、大丈夫です」


 そう言って銅貨を50枚差し出す。数はアイテムボックスが数えてくれた。


「よし、30分くらいで終わるがどうする?」


「特にやることもありませんし見ていくことにします」


「おう」


 そう返事をするとドヴェラーグさんは作業場に移動し、剣を研ぎ始める。


「やっぱりお前そこそこ剣の腕があるんだな。この剣の消耗しかたと盾の様子からしてグリーンウルフでも狩りまくったのか?2日や3日で狩れる数じゃなさそうだが」


「わかるんですか?」


 剣の状態で何と戦ったかまでわかってしまうのか。さすが鍛冶屋だ。


「ああ、大体な。盾の細かい傷からして攻撃は受けてるはずなのに盾が全然歪んでねえって時点である程度絞られるしそうなりゃ剣の傷でほぼ特定できる。この傷の感じなら2,3匹まとめて切り払ったりできるくらいの腕じゃねえか? ちょっと古そうな傷はそんなでもねえが新しい傷はそんな感じだ」


 鍛冶屋SUGEEEEEEEE!!


「ええ。その通りです。まとめて切り払えるようになったのはレベルが上がったせいだと思います」


「そうか。……っと、できたぞ」


 そう言って剣を渡される。剣は新品同様の輝きを放っている。

 実際には若干すり減ってはいるのだろうが。


「だが剣はそのうち変えた方がいいと思うぞ。焼き入れした炭鉄の剣は鉄剣にしては強えが所詮は鉄だ。優秀なモンスター由来の素材やら特殊金属やらにはかなわねえ。まあ値が張るから金持ちになったらの話だがな」


 そうだな。素材か金が手に入ったらぜひともそういった剣がほしい。ドラゴンの素材で作った剣とかロマンあるしその上強いなら言うことはない。


「お前なら生きてりゃそのうちそういう素材の剣を使うことになるだろうがその場合多分この町を出ることになるだろう。この町に大した連中はいないからな。それでほかの土地でもいい剣や盾がほしかったらドワーフの店を探せ。ドワーフは自分らが作る武器に誇りを持ってるし中途半端な腕の奴が店を出したりしたらつぶしにかかる。ドワーフの誇りを汚すっつってな。だからドワーフの鍛冶屋にはずれはいねえ。まあ俺はその中でも当たりだがな」


 そう言ってドヴェラーグさんは笑う。自分の店以外にもいい店を紹介してくれるとは、やはりいい人だ。


「ちなみに、ドラゴンを素材にした剣とかはいくらかかるのでしょうか……?」


「あー、ドラゴンっつーかワイバーンとかの亜龍になるがそういう連中の剣は40億からだな、刃にできる素材が少ねえんだよ。骨とか使った頑丈なだけの剣ならもうちょい安いがあれは刃がついた鈍器だ、お前の戦い方には合わねえだろ。亜龍じゃないドラゴンのほうはもう何百年も見つかってねえから手に入らねえな。国宝として何本か存在する程度だ。まあ本物のドラゴンなんか現れてたら今頃どっかの国が滅んで大騒ぎになってるだろうよ」


 高いわ!買えるかボケ!

 その上本物のドラゴンは国を滅ぼすらしい。さすがドラゴンは格が違った。


「超高いですね。それじゃどんな剣を目標にしたらいいのでしょうか?」


「まともに斬れる剣でそれから乗り換えるようなもんとなると大体500万くらいのからだろうな。それ以下だと乗り換えてもそこまで差はねえ、素材はメタルリザードメタルの刃を適当な亜龍の骨につけたような奴がいいだろうな。総メタルリザードメタルの剣のほうが耐久性はいい、っていうかまず折れねえ刃こぼれもしねえがそれだと値段が4倍くらいになっちまう。まあ刃だけでも亜龍より硬さ、頑丈さだけで言えば強えからおすすめだぞ。斬った相手に火がついたりはしないがな」


 亜龍の剣なら斬った相手に火がついたりするのか・・・・・・。

 メタルリザードメタルって名前が被ってるし……。

 名前からしてメタルリザードとやらからとれる金属か?まあ聞いておくか。


「メタルリザードメタルってなんですか?」


「メタルリザードっていうBランクのでっかいトカゲがいてな、滅茶苦茶硬え金属で体がおおわれてるからメタルリザードって呼ばれてんだ。時々ポッと現れるんだがこの街みたいにまともな魔法使いが少ない街なんかに出ると酷え被害が出るんだよ。高え武器の素材になるような金属の厚さ4㎝もある装甲で全身覆われてやがるから剣なんてまず通らねえ上にでかくて重くて力が強えから盾も役に立たねえ。剣士殺しとして有名なモンスターなんだ。そいつの装甲がメタルリザードメタルって呼ばれてる」


 恐ろしいものもいたもんだ。まあまず俺が出会うことなんてないだろうが。

 礼を言って店を出る。


 まだ明るいのでズナナ草を採取してから帰ることにする。

 再度門から外に出て森に入る。いつも通りの薬草採りだ。

 5分ほど採取したところで、グリーンウルフが出てきた。岩の槍を打ち込んで黙らせる。

 また採取に戻る。ぷちっ、ぷちっ、と小気味いい音を立てながら薬草を乱獲する。

 8分ほどでまたグリーンウルフが登場した。また岩の槍を打ち込み回収する。

 この調子でひたすら薬草採取を続けながら出てきたグリーンウルフを倒していたのだが、なんだかグリーンウルフの数が多い気がする。

 まあ収入が多い分には別に問題にはならない。今売ることは出来ないがグリーンウルフは討伐報酬含め1匹210テル、薬草7本分だ。

 洗っても落ちない服の血の匂いとかに惹かれてやってくるのかもしれない。グリーンウルフの死体を1匹分取り出してその場において薬草採取を再開してみる。

 あいかわらずグリーンウルフ達は襲い掛かってはくるがグリーンウルフの死体を置いたからと言って別に増えはしなかった。

 服についた血の匂いでも本物の死体の匂いでも匂いがあることには変わりがないからかな。

 薄暗くなってきたので切り上げて飯を食って寝ることにした。清算は明日でもいいだろう。

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