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第112話 塔と霧吹き

「……なあ、カエデ」


農業用コンテナが持ち上がってから少し経った頃。

強度テストと称してコンテナを持ち運んであちこち動き回っていたデシバトレ人冒険者の一人が戻ってきて、俺を呼んだ。

どうやら、何かあったらしい。


「どうした?」


「このコンテナ、確かに頑丈なんだが……傾けたり、スピードを出したりすると、中の土がこぼれるみたいだ」


そう言って冒険者は、土がこぼれて減ってしまったコンテナを指す。

うん。まあ、そうなるな。


「そもそも、運ぶように作ってないからな」


「だが、運べる強度はあるぞ?」


運べる強度があれば、運ぶのか。

なるほど。わからん。


「運ぶのと運べるのは、違うんだ」


「……でも、運ぶことを想定して作られてないものを運ぶのなんて、別に珍しいことじゃないだろ。船を持ち上げて陸上輸送するのと、大して変わらないぞ?」


「まるで、船で陸上を進むのが普通のことみたいな言い方だな」


「大型の金属船では、流石にやったことないけどな」


「それ以外ではあるのか……」


どうやら、デシバトレ人に常識を期待したのが間違いだったらしい。

まあ、土などを梱包できるようにしたり、囲いを高くしてこぼれないようにしたりすれば、輸送は可能になるだろう。

そこまでして農業用コンテナを運ぶ意味はあるのか、という疑問は置いておくとして。


「とりあえず、これを量産して置けば、野菜の問題はそこそこ解決だな。それと、新鮮な肉を用意する方法にも心当たりがある」


「……あれですか」


俺の言葉に、メルシアは心当たりがあるようだ。

そう。あれだ。


回復薬を使って魔石から復活させた魔物をミスリル製のタワーから叩き落とし、肉をはぎとってまた魔石を取り出すという、魔物にとっては悪夢としか言いようのない設備。

あれこそ、デシバトレという町の食肉生産を担うに相応しい。


「もしかして、それって魔物を突き落とすやつか?」


デシバトレ人にも、アレを知っている人間がいたようだ。

もしかしたら、割と有名なのかもしれない。

設置数は少ないが、派手な装置だからな。


「まさに、それだ」


「……あれ、改良の余地があると思うんだが」


改良の余地……。

なんとなく、予想がつく気がする。

あの塔、デシバトレ人にとっては余計な機能がついてるもんな。


「魔物突き落とす塔をなくして、檻だけにするとかか?」


「ああ。それも改善点の一つだな」


「それ……『も』?」


「いちいち檻に魔石を入れてから魔物を復活させるのって、時間の無駄じゃないか? 普通にやればいいだろ」


「普通にって……安全装置なしでってことか?」


「ああ」


確かに、デシバトレ人が使うことを想定すると、檻すら無駄か。

となると、必要なものは――


「魔石と、回復薬だけ?」


「例の回復薬がもったいないから、必要な量だけ出せるように、専用の霧吹きなんかがあると便利だな。それだけあれば十分だ」


……うん。

霧吹きか。

大規模な鉄塔を建てるつもりだったが、随分規模が小さくなったな……。


「メルシア、霧吹きって作れるか?」


「作れるはずです。特注品になりますし、そこそこお金はかかるかもしれませんが……少なくとも、メタルリザードメタルやミスリルで塔を建てるのに比べれば遙かに安いです」


「ああ。塔と比べればな」


あの塔は、もはやコストの固まりといっていいくらいだからな。

削って売ろうとする奴が出ないかどうか、メルシアが心配していたくらいだ。

それに比べれば、霧吹き一つにそんな金がかかるわけがない。


「じゃあ……あとは、建物か」


「今の状況じゃ、ダメなんですか?」


「ああ。そもそもデシバトレが前線になってたのは、ブロケンが取られたからだろ?」


「はい」


「今度はそうならないよう、防御を固めるんだ。そうだな……ミスリルで、厚さ二、三メートルくらいの壁を作ろう。あと居住性も、もう少し重視したいところだ」


デシバトレの状況も以前よりは大分マシになったが、相変わらず建物の状況などはひどいものだ。

どうせなら、ここも整備しておきたい。

うん。中々領主らしくなってきた気がするぞ。


「……一体、何と戦うつもりなんですか」


「魔物?」


「魔物だって、そんな都市を相手に戦いたくはないでしょうね……」


いい環境で安心して休むことができれば、その分戦う時などにも力を発揮できるだろうし。

……あれ?

これ以上力を発揮して、どうするというのだろう。

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