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第八話 日曜の雪と読書

日曜日。

今日は学校が休みのため、僕とクロスは自室で読書をしています。

僕が読んでいるのは妙な親近感を感じる本。(第五話参照)

そしてクロスが読んでいるのは、蘇生した十三番目のお嬢様の恋愛と戦いのストーリー。

「どう、クロス? 面白い?」

「………………」

集中しすぎて僕の声が聞こえていない模様。


――そして数分後


「すーすーすーすー」

隣で聞こえる安らかな寝息。もちろんその発生源はアホサンタのクロス。

「すーすー……むぐぉう、クレオパトラっ! 徳川家光は無事、推古天皇をご出産なさったそうだぁむぎゅぉお、ただ油断するな……いつ聖徳太子が卑弥呼をつれてこの国を攻めてくるかにゅあんて分からないからぁ」

「また変な夢見てるよ、この子! ッていうかもう注意書きを書く気力さえなくなっちゃったんですけど!」


窓の外にははらはらと舞う雪たちが。

今日、本格的に冬が始まった。


今日は鳥肌が立つくらい寒いのに、サンタの少女はジャージとスカートでも平気なよう。

ずっとクロスが隣にいるようになって、まだあまり日は経っていない。

しかしもう違和感なんて無かったりする。この生活に慣れてしまった自分が悲しい。

クロスが来て、まだ一週間しか経っていないというのに、ずっと昔からクロスがいたような気になってしまう。

あぁ慣れって恐ろしい…………

でもまぁ、最近は特に殺意を抱くような出来事は無かったし、安定したって言えば安定したんだろうな。

あ、そう言えば、なれない人間界で一番苦労してたのはクロスなのかもしれない。

だからあんなに明るく振舞って……

そんなわけない、よね? だって君、自分の意思でここに降りて来たんだし。

だから、別に……無理して明るくしてるわけじゃ、ないよね?

どうしたんだろう僕。あーあ、最近このアホサンタが嫌いではなくなってきた。

こうして寝ている分には大人しくて……というわけでもないか。寝言、うるさいし。


タサン・クロス


聖なる日前夜に落ちてきた、不思議な不思議なプレゼント。

常識を覆す登場方法も、今思えばすごく新鮮で楽しかった…………はず。

この頼んでもいない世界最悪のプレゼントは、きっとで来年のクリスマスには帰ってしまうだろうから。


もう少しだけ、仲良くなってもいいかな。


僕の隣には、いつもいつもこの少女がいる。それはいきなり跳ね起きると

「やっほーい! わぁボクついうっかり寝ちゃったみたい! でもこれで明日は遅刻しないねっ……あれ、斗助なんか顔が変だよ? あ、変なのはいつもかっ♪」

てへ、と笑った。


前言撤回。


やっぱりこれ以上仲良くしたくない、こんな奴と!


冬も本番の今日。

窓の外、雪はまだ積もらないで消えてゆくのです。

儚すぎて、音も無いまま、消えてゆきます。




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