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第四話 光の人格とサンタ

クロスがキッチンを目茶目茶にした直後、家の玄関が開いた。

そして、そこにはお母さんの姿が。

「ただいま斗助。なんか変な音してたけど大丈夫?」

「うわっじゃない、おかえり……なさ、い。イヤ、ベツニ カワッタコトナド アリマセンデシタよ?」

背中に冷や汗が大量生産され、心臓はポンプをフルスピードにして異様な心拍数を作り、過度の緊張によって声帯が震える。

それを知ってか知らずか、アホサンタが登場。

「こっんにちわー!」

ジャージにサンタスカートの少女が勢いよくキッチンから飛び出した。

「…………誰、この子?」

「わか、りたくない」

しばらくの沈黙。うーんと考え込んだクロスは、誰この子という質問に

「ボクは見習いサンタのタサン・クロスだよぅ! よろしくね、おばあさん」


超級(スーパー)失礼発言で答えた。


おばあさん、という魔法の五文字を唱えられたお母さんの表情が見る見るうちに変化。

あっという間に怒りの形相へ。

「な、なんなのよこの子は! 親の顔が見てみたいわ」

「怒らないでお母さん! クロスは別に悪気があって言ったわけじゃなくて、ねークロス?」

必死にカバーする。

「うんっ悪気なんてないよ! 見たままを言っただけだもん」

「それはそれで失礼な話だわッ」

クロスの発言は僕のフォロー不可能範囲に到達。お母さんの怒りを急速に沸騰させた。

「い、今すぐ家へ帰りなさい、ほら斗助、途中までお見送り!」

そう言ってずかずかとキッチンへ向かうお母さん。


キ、キッチン?!


こうなったら逃げるが勝ちだ、というわけで僕とクロスは早足にそこを抜け出した。

家の中から盛大な怒鳴り声が聞こえたけど、それはそれ、絶対に聞いて聞かぬ振りにしよう。

靴下一枚だけが足を守っている状態は、かなりキツイ。

砂利が食い込んで痛いし、さらにそれは途轍もなく冷たいのだ。

「クロス、屋根に上ってとりあえず僕の部屋に避難しよう」

「了解ーかいーかいーいー。分かったよぅ! ていやぁっ!」

軽やかな跳躍。

クロスはひょいと屋根に着地して、するすると壁を這っていき、ベランダへぴょんと飛び込み、消えた。

「………………」

僕は無言だった。それがあまりにも非現実的だったから。

屋根を見上げれば、そこは吐き気がするくらい高くて。けれど、どうしようもない。

こ、ここはもう登るしかないだろう、小さな僕達よ!

(心なしか少なくなった僕達)「うおぉおおー」

僕は雨樋を伝ってかなりスローペースで屋根へと上った。結構時間が掛かったが、どうにかして到着。

ここからが最大の難関、やたら長い壁である。ごくりと唾を飲み、呼吸を整える。

「どあありゃりゅありゃりゃりゃおおー!」

奇声を発した僕は、十センチ幅の足場を物凄いスピードで駆け抜けた。

そしてベランダにダイブ。見事に顔面から落下、でこに過去最大の傷を作った。

「大丈夫……には見えないけど、大丈夫?」

クロスがにゅーっと首を伸ばして、心配そうに訊いてきた。

あぁ今初めてこのアホサンタの光の人格を見た気がする。

「うん大丈夫だよ……あれ、どうしたんだろう? クロスが妙に可愛く見える。やっぱ僕、大丈夫じゃないみたい」

「何言ってるの! ボクはいつでも可愛いよ?」

「どっから湧くのそんな自信っ!?」

「さぁ? それよりボク、なんだか眠くなっちゃった。ふぁ……おやすみ」

そう言うと、クロスは僕の勉強机に飛び乗った。

「え゛え゛っ、どうして君は僕の机の上で寝るかなぁ?」

しばらくすると、すやすやと寝息が聞こえてきた。どうやらもう就寝したご様子。


…………真冬。

今日も冷たい風が、暖房器具のない僕の部屋に積もります。

震えが止まらない寒さの中。

しかし不快感が無いのは、きっとでそう、二人でいるからだと思います。




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