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第三話 キッチンと新たな惨劇

ここは中井家のキッチン。

サンタの少女から楽しげに発せられるマイナスイオンは、僕の緊張をぐぐっと上昇させる。

スプーンが風を切って僕へ接近、足元に広がる残骸の山へ着地。

追撃のごとく発射された純白の皿は、空中で素敵に高速一回転し、残骸の積もる床に縁から直撃。

一瞬にしていくつもの欠片へと早変わり。

そしてぶわっと飛び散る白い雪。

そこにどんどん積もるのは、新たな被害者達のガシャンという悲鳴と、僕の悲鳴。

「こらぁクロス! 今すぐそこから降りなさぁい!」

「えー無理。だってこれすっごく楽しいよ?」


今、何が起こっているのか、もう一度初めから説明しよう。


公園から無事帰還してきた僕らは、キッチンに向かった。

クロスは食器棚と天井との間にある五十センチもない隙間を見るや否や、すぐさまそこに飛び乗ったわけだ。

しかし、サンタ少女の珍行動はそれだけに収まらず、おもむろに食器棚を開けると皿やらコップやら、時にはフォークまで僕に向かって投じてきた。


そして『悪夢再生』


中井家のキッチンで、純白の皿が空中で見事に宙返りした。

床にトンと着地したそれは、次の瞬間ガシャンと儚い音をたてて形を失う。

そしてあっという間にいくつもの破片へと早変わり。粉々になって床に散らばった。

そこに蓄積されるのは、新たな被害者達の尖った破片と僕の悲鳴。

「こらぁクロス! 今すぐそこから降りなさぁい!」

「えー無理。だってこれすっごく楽しいよ?」

「すごく楽しいよじゃねぇよ。この野郎」

ガシャン、バリン、ガコン。もはや制止不可能状態、キッチンは地獄と化した。

食器棚の中身があらかた破壊された頃、サンタの少女は何を思ったか引き出しから鋭利で銀色の危険物を取り出し、投擲。

「うわぁッ! ナイフは禁止、ダメだって! ちょ、ちょ、ちょー! 包丁もダメーッ」

バゴザッ――危機一髪、僕はナイフと包丁のコンビ攻撃を回避。

一瞬、三途の川が見えた気がした。


……神様はイジワルです。


僕の人生はまだ始まってから十四年しか経っていないというのに、こんな悲惨な目に遭うなんて!

まだ雪も降っていないのに、空は妙な晴れ具合なのに、お腹も微妙な空腹を訴えているのに……。

空腹=夕飯が近い=やったあ……? え、夕飯?

僕は夕飯というキーワードを思い出した途端、重要な問題を発見した。

親が帰ってきたらどうしよう。

いやもうどうしようもこうしようもない……。


十二月二十五日、過去の僕に黙祷を捧げようday。(通称・理不尽day)

新たな悪夢が始まる。


相変わらずガラスが飛び散っている中井家。

玄関がガチャリと冷たい音をたて、お母さんの帰りを伝える。

「ただいま斗助」

いつも通りの声なのに、少し恐怖を感じるのはきっとで気のせい。

「うわぁっじゃない、おかえり……なさ、い」


そうして、新たな惨劇は幕を開けました。

どうなることやら、凡人の僕には予測不可能です。

分かることは、絶対に逃げられないというただそれだけです。

冷たい視線。

それがどこから発射されているか、今の僕には知る術などもうありません。




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