第十三話 落下理由とサンタの憂鬱
……クロスが変わってしまった。クロスの性格が百八十度変わってしまった。
あの衝突から、中身だけがきれいに変わってしまった。
どういうこと?
頭おかしくなったのかな?
いや、それはもとから変だったけど、でもやっぱりなんかおかしい。
だって、いつものクロスなら
「宿題写させてー」とか
「もう二時間目なのッ!? どうりで、ボクお腹空いちゃった」とか
「つまらないー! 先生、遊んでいいですか?」
って言っているのに、今日は
「宿題はちゃんとやりましたか斗助さん? 私、やっていないので斗助さんのそれを私によこしなさい」とか――ちなみに悪魔の微笑み――
「あら、まだ二時間目なんですの? 少しお腹が空きましたね……斗助さん何か買ってきなさい」とか――これも悪魔の微笑み――
「つまりませんね、こんな授業。私には必要ありません」――イン悪魔の微笑み――
っと言うのだ。
やっぱり変! 違和感大量大サービス! おかしさ満開!
「ねぇクロス、どうしちゃったのさ君?」
僕の質問には
「サンタの憂鬱です」
春日さんが答えてくれた。
「サンタの、憂鬱? …………何それ、治るの?」
「治るか治らないかは貴方次第です。ちなみにサンタの憂鬱とは、不意の衝撃や突然の激痛によって自らの存在意思が揺らぎ、放置すると存在消滅に至る病気です。しかし、サンタの中にはそれを自己防衛するために、性格が無意識に変わるサンタもいるようです。けれど、最終的には死にます。そう、それはつまり、彼女の存在意思を元に戻せば性格は治るということ。貴方次第なんです、全て。ですから……そうですね、頑張ってください」
詳しすぎてどこか怪しい(一部理解不能だったことは無視とする)んですが……
「詳しいね、春日さんは」
…………沈黙、そして
「はい、私もサンタですから」
「え?」
「だから私もサンタなんです。信じられませんか?」
いえ信じます。
でも、それどころではない! 現実逃避をしなければ……じゃない!
クロスを助けなければ!
いくらあいつが役に立たないアホサンタだとしても、このままご臨終では大変です。
「どうすれば、存在意思は元に戻るんですかッ?」
「治療法はありません。大体のサンタが地上に降りたきり、二度とサンタの国へ帰って来ることはありませんので、治療法は一切分からないんですよ。それを承知で、クロスさんはここへ飛び降りたんです…………お姉さん達の夢を、叶えるため」
「お姉さん達の、夢?」
「はい、酢昆布を食べることです」
なんだそりゃ。
あぁ! だからあの時クロスはあんなに酢昆布を食べたがったのか。
次回へ続きます。