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黙示録  作者: 山本正純
第四章 12月28日
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秘密

 12月28日午前11時30分。大野と沖矢は月影が待機している西村桜子の病室に顔を出した。

「月影管理官。最悪な結果です。連続猟奇殺人事件の被疑者朝霧睦月が死亡しました」

 その報告を聞き月影は驚く。

「自殺ですか」

「いいえ。詳しく調べてみないと分かりませんが事故の可能性が高いと思われます。防弾ガラスが突然割れて、そのガラス片が朝霧の背中に突き刺さって死亡しました」

「つまり防弾ガラスが割れるほどの突風が吹いたことによる事故だったということですか。それは興味深い」

「それと朝霧が死に際に『暗部』という言葉を残しました」


 暗部という言葉を聞き月影は考え込んだ。その姿を見て大野は質問する。

「何か心当たりがあるのですか。そのダイイングメッセージに」

「いいや。何でもない」


 その頃地獄の商人シノとウリエルは東京都警察病院の周りを歩いていた。久しぶりの仕事が終わりウリエルはほっとしている。

「これからサマエルの店で食事をしようと思うのですがシノもどうですか」

「いいね。その店なら奢らせてよ」

「まさかギャラは食事の現物給付ですか」

「そんな訳ないでしょう」

「それでは行きましょうか。バイクに乗って」


 シノはウリエルの言葉を聞き身震いした。

「バイクって。あのバイク」

「他にどのバイクがあるのですか」

「でもハーレーは二人乗りではないよね」

「だからサイドカー付きのバイクを借りました」

「バイクってヘルメットしないといけないよね」

「ヘルメットをしないと道路交通法違反になりますから。もしかしてバイクにトラウマがあるのですか」

 

 シノは首を横に振った。バイクにトラウマがあるというウリエルの推理は的外れのようだった。だとしたらなぜシノはバイクを拒否しようとしているのか、ウリエルには理解できなかった。

 そしてサイドカー付きのバイクが停めてある駐車場に到着した。ウリエルはヘルメットをシノに手渡す。

「ヘルメットをしてください」

 

 シノはフードで顔を隠した状態でヘルメットを装着しようとした。それを見たウリエルはシノに近づき、フードを外す。

「フードをした状態でヘルメットって、どれだけ不審者になりたいのですか」

 

 いきなりフードを外されシノは驚いたような顔をした。シノの素顔は童顔。見た目から10代にしか見えない。シノの髪型は黒いショートボブ。

「やめて」


 気弱な声だった。今までの地獄の商人シノの声とは違う。フードを取ったシノはもじもじとしている。

「もしかして二重人格者ですか」


 シノは小さく頷いた。その姿はかわいかった。女であるウリエルが惚れるほどに。

「それでは行きますか。イタリアンレストランディーノへ」

 地獄の商人シノが二重人格者であることは秘密だった。その事実を知っている人間は少ない。ウリエルに秘密が知られた以上シノは覚悟を決めた。このままヘルメットを装着してサイドカーに乗り込もうと。


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