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黙示録  作者: 山本正純
第四章 12月28日
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堕天使 10

 2005年6月25日。特急ブルースカイ号初運行当日。朝霧睦月は風邪をひき寝込んでいた。

 第一回電車王決定戦の結果は朝霧たちの優勝だった。神谷歩美と水無元太はあの特急に乗り込んだ頃だろうと朝霧は思いながら熱を測った。

現在の時刻は午前9時15分。朝霧は知らなかった。この瞬間彼の運命を変えた事件が発生していたことを。

 

 午前9時20分頃、朝霧の母親が顔色を変えて朝霧睦月の寝室に入ってきた。母親はラジオを手にしている。

「睦月。大変よ。兎に角このラジオを聞いて」

 母親が手にしているラジオからニュースが流れた。

『本日午前9時15分頃特急ブルースカイ号で脱線事故が起きました。詳しい死亡者重軽傷者については情報が入ってき次第お伝えします』


 朝霧はこのニュースを聞き、すかさずあの3人の安否を確認するために電話する。だが何回かけても電話は通じることがなかった。


 朝霧の携帯電話にはメールが届いていた。自分たちが無事であることを朝霧に伝える内容のメールが届いたのかと思い、朝霧はメールを開く。だがそのメールが受信されたのは事故が起きる5分前だった。

 あの3人の安否が分からないまま日付が変わった。詳細な死亡者重軽傷者が発表されたのは事故が発生した翌日だった。

 

 この瞬間。朝霧は顔がくしゃくしゃになるほど泣いた。死亡者90名の中にあの3人の名前が含まれていたからだ。

 朝霧は神谷歩美が最後に送ったメールを再び読む。

『今度は一緒に乗りたいな。早く風邪直してね』

 

 朝霧は金輪際青空運航会社が運航している電車に乗ることはないだろう。あの会社は朝霧の大切な人々を奪った。あの会社は責任を負うべきだ。

 

 2005年6月28日。脱線事故は警視庁の記者会見により変貌する。

 あの脱線事故はブレーキが人為的に壊されたことが原因であるということ。

 事故当時青空運航会社にある人物から脅迫電話がかけられていたこと。

 あの特急に積まれていた爆弾が被害者多数となった原因の一つであること。

 事故当時特急は脅迫電話を掛けた人物にジャックされていたこと。

 そのトレインジャック事件の主犯の男を先ほど緊急逮捕したこと。


 朝霧の考えは変貌した。あれはただの脱線事故ではなかった。あれは主犯宇津木由紀夫によるトレインジャック事件の結果。

 

 それだけで十分だった。恨むべき相手は青空運航会社ではなく、あの事件を仕組んだ犯人。青空運航会社に過失はなかった。

 裁判の結果。宇津木死刑囚は死刑となり、青空運航会社は過失が認められなく、被害者遺族からの見舞金の請求に同意する形となった。

 朝霧睦月の中で特急ブルースカイ号爆破事件は終わった。裁判終了後の朝霧に殺意はなかった。あの事実を知るまでは。


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