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黙示録  作者: 山本正純
第四章 12月28日
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堕天使 8

 日付は12月28日午前1時30分に変わった。朝霧はチェーンソーを準備して、床に寝かせてある水無信彦の絞殺体の右足を切断した。


 朝霧は、水無信彦の遺体が固くなる前に、如月武蔵の左腕を水無自身の両腕を使い抱かせる。これで残りの一人が恐怖する様が見られる。

 死後硬直が良いくらいに進んでおり、切断は容易となった。切断時に流れる血液も少なそうだ。

「元太君のためにも、ここまでにするか」

 第四の被害者、水無信彦は殺害された。次はこの遺体を遺棄することを考えなければならない。


 12月28日午前11時15分。東京都警察病院病室。朝霧は大野が指摘するミスに気が付くことはなかった。

「教えてくださいよ。第二第三のミスのこと。そのミスで完全犯罪は崩せるのでしょう」

「第二のミスは第四の被害者水無信彦とここにいる湯里文が残したダイイングメッセージですよ。それはあなたにとっての誤算でした」

「あなたの所へ話を聞きに行った時に話したのだよ。水無信彦さんは殺害前霜月城助さんに手紙を託していたことを。その手紙にはあなたが連続猟奇殺人事件を起こした動機が隠されていたのだよ。水無元太。常盤光彦。神谷歩美。この3人全員とつながる人物こそがこの事件の真犯人。水無信彦さんは知っていたのだよ。あなたが犯人だとね」

「因みに湯里文が残したダイイングメッセージが示していたのは、漢字でした。湯里さんは未完成なダイイングメッセージを残してから意識を失ったのです。本当のダイイングメッセージはツキ。朝霧睦月。あなたの名前には月という漢字が含まれているんですよ」


 朝霧は笑うしかなかった。

「バカバカしい。ダイイングメッセージ月が名前に含まれているから僕が犯人。あの3人全員と接点があるから僕が犯人。いい加減にしてくださいよ。あなたたちが言っているのは状況証拠でしかない。物的証拠を見せてくださいよ」


 その言葉を待っていたかのように大野は頬を緩ませた。

「物的証拠ならありますよ。第五の事件が発生した東京駅の男子トイレにあなたは犯行用の衣服を捨てた。そこであなたは初歩的なミスを犯す。それは男子トイレのドアにあなたの指紋が付着したことです。あなたは自然にトイレから脱出するためにあえて手袋をしないでトイレから出て行った。手袋をしてトイレに行くことは不自然ですから」

「そんなことですか。あの時男子トイレは満員となっていて誰がいるのかさえも分からない状態だった。そんな状態でいつ付着した指紋なのかが分かるのですか」

「やっぱり犯人はあなたです。あなたは先ほど自白しました。その言葉はあなたが犯人であることを証明しています。なぜ分かったんですか。あの時男子トイレが満員だったこと」

「トイレが混む時間帯くらい知っていてもおかしくないでしょう」

「それならなぜわざわざトイレが混む時間帯にトイレに行ったのだよ。それは犯行に使った衣服をトイレ内で着替えて、普段着で逃走するためだよ。しかしそのトリックは防犯カメラが解き明かした。はっきり映っていたのだよ。あなたの顔が防犯カメラに」

 

 言い逃れができないと朝霧は思った。物的証拠から状況証拠。さらに動機。どれも朝霧睦月が犯人であることを証明する物だ。

「そう。あの5人を殺したのは僕。本当に殺したかったのは4人だけどね。常盤ハヅキを殺すつもりはなかった。動機を警察は掴んでいるでしょう」

 朝霧は観念した。彼は全ての罪を認めている。大野は朝霧の問いに対して頷いた。

「動機は7年前の特急ブルースカイ号爆破事件がらみですよね」

 朝霧は頷き、犯行に至った経緯を話しだした。


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