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黙示録  作者: 山本正純
第四章 12月28日
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堕天使 6

 12月27日午前7時50分。朝霧睦月は一睡もしていない。復讐の対象となっている4人の中に水無信彦も含まれていた。この連続殺人の目的は特急ブルースカイ号爆破事件を引き起こした4人の人間への復讐。この4人を殺さない限り復讐は終わらない。


 水無信彦も常盤ハヅキと同じように四肢の切断を断念すればいい。朝霧の脳裏に悪魔のささやきが流れる。


 その前に確認しなければならないことが朝霧にはあった。それは本当に水無信彦が事件に関わっているのか。本当に4人目は水無信彦なのか。

 確かめる方法はただ一つ。それは相手の反応を観る。昨晩シノから貰った飛ばしの携帯にはあらかじめ変声器が装着されていた。これで電話の相手が朝霧であることはバレないだろう。


 午前8時。早速朝霧は飛ばし携帯で水無信彦に電話を掛ける。電話はすぐに繋がった。

「水無信彦さんですか。私は警視庁捜査一課の水口巧です。昨晩如月武蔵さんと常盤ハヅキさんが殺害されました。また担当の刑事があなたの所に話を聞きに行くと思います」

 変声器越しの朝霧の声は脅迫電話のような声ではなく、一オクターブ低くしたような声だった。これなら脅迫電話には聞こえないだろう。

『違う。私は悪くないんですよ。刑事さん。私を助けてください。知っていることは全てお話ししますから。早く犯人を捕まえないと殺されてしまう』


 受話器からは水無の取り乱したような声が聞こえる。

「落ちついてください。また電話します」

 朝霧は受話器を切った。彼は水無の言動から確信した。水無信彦は4人の復讐対象者に含まれていると。

「次はこれですか」


 朝霧はパソコンのメールソフトを立ち上げ、脅迫メールを打ちこむ。

『水無信彦。警察には余計なことを話すな。さもないとあなたの命の炎は明日消えるだろう。常盤光彦の亡霊』

「これで本物の警察には余計なことを話さないだろう」


 朝霧は脅迫メールを送信した。海外のサーバーをいくつか経由しているため、アドレスで脅迫者の身元は特定されない。

 脅迫メールを送った後で、彼は飛ばし携帯の電源を切った。


 そして午後1時。朝霧は飛ばし携帯の電源を入れた。思った通り携帯電話には水無信彦からの不在着信が届いている。不在着信の時間は午前11時10分。おそらく警察からの電話だろう。二回目の電話をするタイミングは今しかない。朝霧は再び変声器越しに水無信彦に電話する。

「水口巧です。担当の刑事はそちらに伺ったでしょうか」

『はい。合田警部が来ましたよ』

 予想通りだと朝霧は思った。

「そうですか。実は別件で逮捕した詐欺師があなたに脅迫メールを送ったと自供しました。脅迫者はもう逮捕されましたので、自由に知っていることを話してもいいですよ」

『よかった』

 

 水無は安堵している。これで殺されなくて済むと水無は考えているのだろう。

「それでは、本日の午後9時あなたの自宅に伺います。もしかしたら殺人者があなたを狙っているかもしれませんので、警視庁まで送迎します」

『おねがいします』

 朝霧は電話を切った。これで第四の殺人実行の準備は整った。


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