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黙示録  作者: 山本正純
第四章 12月28日
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中二病

 一方銃声が聞こえた大野たちは異変を察知した。月影は退屈な天使たちがラジエルを奪還しにきたと思い、彼女の病室に残り警備を厳重にする。

 大野たちは異変を探るため駐車場の方向に走り出した。

「銃声。駐車場の方から聞こえましたよね」

「嫌な予感しかしないのだよ」

 駐車場に到着した大野たちは仰向けに倒れている警察官を発見した。その周りには武装したテロリストたちが倒れている。

「まだ助かります。今すぐ病院に運びましょう。沖矢はタンカーを持ってきてください。それと医者や看護師も呼んできてください。さすがにこれだけの人数は一度に処置できません」


 沖矢は一度病院内に戻りタンカーを取りに行く。大野は警察官の止血を開始した。

「ここで何がありましたか」

「そこで倒れているテロリストに襲われて被弾した。その後に一人の女が現れてテロリストたちを一瞬で倒した。女の顔は意識を失っていたから分からないけど、声は聞こえた。カマイタチがどうとか言っていた」


 大野は負傷した警察官の話を聞き改めて倒れているテロリストたちを見る。防弾ベストは何かで切断されたようだった。それがもしもカマイタチの仕業だとしたら。そしてその女が退屈な天使たちのメンバーだとしたら。鬼頭以上に逮捕に苦労する兵が存在することになる。


「ごきげんよう」

 大野に耳に女の声が聞こえ、彼は周りを見渡す。大野の正面には黒いローブ姿の女が立っている。その彼女の姿は明らかに不審者だろう。

「あなたがこのテロリストたちを倒したのですか」

「ええ。ただの慈善事業のつもりで彼らを倒したの。プロレベルに武装していたけど、私の方が強かったかな」


 テロリスト集団を倒したのはこの女であることを大野は理解した。

「あなたの名前は何ですか」

「それって職務質問のつもり。私の名前を知った表舞台の住人は死ぬことになるけれど、それでも聞く」

「それでは質問を変えましょう。あなたは中二病ですか」

「中二病だよ。この世界の全てが科学で証明されたらおもしろくないじゃない。科学で証明できないこともあるからおもしろいんだよ。たとえば宇宙人やパラレルワールドの存在。幽霊の存在意義。これらが証明できない科学は万能じゃないよね。つまりこの世界には科学で証明できる物とできないものに分けられる」

「それではあなたの名前を教えてくれますか」

「地獄の商人シノ」


 大野はとりあえず彼女の名前がシノであることを前提にして話を進める。

「シノさん。どうやったのかは知らないけど、テロリストを成敗したところは褒めます。でもこれは立派な傷害罪。今回はテロを未然に防いだということで見逃しますが、今後はこんなことをしないようにしてください。そして中二病もほどほどにしてください」

「うん。分かった」

 地獄の商人シノは頷くと、大野の前から姿を消した。その後沖矢がタンカーと数人の医者や看護師たちを連れて現れた。

 大野と沖矢は医者たちと協力して怪我人を病院に搬送した。


 その時大野の携帯電話が鳴った。大野は応急処置の手を止めポケットから電話を取り出す。

「もしもし。大野です」

『神津だ。あいつとあの3人が繋がった。ちゃんとテレビ夕日に記録が残っていた。間違いない』

「分かりました。これで動機がはっきりしましたね」

『それと真犯人尾行中の合田警部からの伝言だ。真犯人が東京都警察病院の方に向かっている。後3分ほどで警察病院に真犯人が到着する』


 大野は身震いした。真犯人の目的はこの病院に搬送された第五の被害者湯里文の殺害だとしたら。

 大野は電話を切り、病院内に走り出す。

「沖矢。ここは医者や看護師さんに任せて病院内に戻りましょう。湯里さんの命が危ないです」

 沖矢は頷き、大野の後を追うかのように走り出した。真犯人最後の犯行を未然に防ぐために。


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