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黙示録  作者: 山本正純
第四章 12月28日
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偽名

「偽名ですか」

 大野は東京都警察病院へ向かう車内で月影に聞いた。

「大晦日にラジエルと呼ばれる女が警察病院を退院することになりました。それまでに彼女の偽名を決めようと思っています。名前がないと不便になりますから、君の意見を聞きたかった」


 そんなことのために月影に呼び出されたことを知った大野は呆れた。

「偽名と言われましても、すぐに思いつく物ではありませんよ」

「大丈夫。そう答えると思って千間刑事部長たちが候補を考えてくれました。松本よし子。橘川依織。西村桜子。さあ。どれがいい」

「西村桜子ですね。その三つで選ぶとしたら」

「そうですか。これからは西村桜子と呼びますか」


 沖矢はそんな2人の会話を聞いて腑に落ちない表情をした。

「ところで、千間刑事部長はどうやってその3人の偽名候補を思い着いたのだよ」

「さあ。案外キャバクラでよく指名する女の名前かもしれません」


 月影が冗談を披露した頃千間刑事部長は刑事部長室でくしゃみをした。

「誰だ。俺の噂話をしたのは」

 千間刑事部長は独り言を呟き、机の上に三枚の名刺を眺める。そこへ喜田参事官がやってきた。

「千間刑事部長。その名刺は何でしょう。殺人事件の容疑者ですか」

「違う。よし子ちゃんは容疑者ではない。依織ちゃんと桜子ちゃんも違う」


 しまったと千間は思った。この3人はキャバクラでよく指名するキャバ嬢の名前。

 千間刑事部長はお忍びでキャバクラに通っていた。そのことは妻にも内緒だ。

「えっと。確か千間刑事部長の奥さんの名前は絵里さんでしたよね。もしかして千間刑事部長は浮気をしているのでしょうか。もしそうだとしたら絵里さんにこのことを報告しますが」

「それだけは止めてくれ」

「分かりました。絵里さんには黙っておきます」


 月影が冗談半分で披露した推理は正解だった。千間刑事部長は何とか喜田参事官を口止めすることができた。それと同時にしばらく千間はキャバクラへの出入りを自粛しようと思った。


 月影たちを乗せた車が東京都警察病院に到着した頃、ウリエルは暗殺会場から1キロ離れたコンビニの駐車場でシノに会った。

「やっぱりその姿は不審者ですよね。少しはBPOについて考えたことはあるのですか」

 ウリエルの第一声はシノの服装に関しての突っ込みだった。シノは相変わらず黒いローブを着ている。さらにフードで顔を隠している。この姿では警察官に速攻で不審者として職務質問を受け可能性が高い。

 シノは珍しく顔を赤くする。

「ただの仕事着だよ。大体カジュアルな私服で暗殺なんかできるわけがないでしょう」

「そうですか。ここまで見た目不審者で警戒される暗殺者は見たことがありませんが」

 見た目不審者の暗殺者シノとカジュアルな私服を着ている暗殺者ウリエルは東京都警察病院に向かって歩き出す。


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