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黙示録  作者: 山本正純
第三章 12月27日
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密会 後編

 本題に入ることなく、攻撃重視の暗殺者と防御重視の暗殺者の討論は二時間続いた。

「そろそろ本題に入りませんか」

「少々長話をしすぎたね」


 それは本当の長話だった。暗殺方法のことから始まり、ギャラのこと、被害総額、苦手な相手、得意な相手。なぜか好きな男性のタイプまで討論は発展した。


 ただ今の時刻は午後10時。アズラエルが忘年会の会場に到着した頃だろう。

「まず今回の仕事内容について教えてくれますか」

「今回の暗殺劇の舞台は東京都警察病院。暗殺対象は今世間を騒がせている猟奇連続殺人犯。私の顧客だよ。あいつ。暗部の人間になる資格あるのに、強い復讐心がないと猟奇殺人ができないタイプじゃない。そのタイプが一番やっかいなんだよ。復讐が終われば暗部と一切関わらない。だからあいつの口から暗部のことが漏れたらやっかいという訳」

「なるほど。その猟奇殺人鬼さんは暗部に属さない。しかしシノと関わったことで暗部という存在を知ってしまった。暗部の人間が警察に逮捕されたとしても、暗部のことだけは黙秘するという暗黙の了解があるけど、殺人鬼はそれを知らない。知っていたとしても黙秘なんてしない。だから殺すのですか」

「そういうこと。暗黙の了解を破れば死の制裁が待っている。その死の制裁をあいつが逮捕される前に行うだけだよ」

「なぜ暗殺劇の舞台は東京都警察病院なのでしょうか。その殺人鬼の居場所が分かるなら襲撃した方が手っ取り早いと思いますが」

「復讐が終わって安心したあいつを殺したいから。あいつには殺しそこなった対象がいる。そいつを殺すまで復讐は終わらない。あいつ最後の復讐の舞台が東京都警察病院だということさ」

「警察病院といえば警察組織の陣地のようなものでしょう。態々敵陣に乗り込んで暗殺ができるのでしょうか」

「ノープログレム。私に任せてください。明日午前10時現地集合。現地解散」


 長かった打ち合わせも終わった。辺りは既に真っ暗となっている。

 

 現在の時刻は午後10時30分。これから一時間かけて忘年会会場に向かわなければならない。

 その前にウリエルはサマエルの電話をかけてみた。

「サマエルですか。ウリエルです。今打ち合わせが終わりました」

『そうか。もう忘年会恒例ビンゴゲーム大会が終わった所だ。次はビデオ上映会。ラグエルが世界を放浪するという企画物らしい。前の作戦で無人島ロケの奴を観たでしょう。あれの続編らしい』

「分かりました。ゆっくり帰ります」


 ウリエルは嫌な予感を抱いた。無人島の奴は誰得な映像が延々と流された映像だった。今回も誰得映像が流されるに違いない。ウリエルの体に寒気が走った時、受話器から衝撃の発言が聞こえた。

『今回の映像は忘年会のお土産としてプレゼントされる。バージョンはVHS。DVD。ブルーレイから選ぶことができる。これでいつでもラグエルの旅番組を観ることができる。どれを注文する。因みにVHSは本編2時間のみで特典映像はない。DVDとブルーレイは二枚組で特典映像ディスクも付いてくる』

「DVDでお願いします。さすがにVHSは持っていないので」


 ウリエルは電話を切った。誰得映像本編は2時間。その映像が終わるまでの間ウリエルは一人駅前のカラオケボックスにやってきた。

 これから一時間に及ぶ暇つぶしが始まる。


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