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黙示録  作者: 山本正純
第三章 12月27日
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ダイイングメッセージ

 霜月城助が釈放された頃、合田と月影は第五の事件が発生した東京駅の第四ホームに臨場した。だがその現場には遺体がない。

「遺体はどうした」

「今回は殺人未遂事件です。目撃者と駅員の応急処置が間に合って湯里さんは東京都警察病院に搬送されました。まだ意識は戻らないそうです。犯人は湯里さんを襲った後逃走しました」

 

 合田警部は違和感を覚えた。なぜ犯人は白昼堂々と湯里文を殺そうとしたのか。殺害方法が違う。今までの連続猟奇殺人が計画犯罪なのに対して、第五の事件のみ通り魔的犯行。

 合田警部はその理由が分からなかった。

 すると刑事が遺留品を持って合田たちの前に現れた。

「合田警部。男子トイレ内に犯人が着ていたと思われるコートを発見しました。血痕が付着しているので、鑑識に鑑定を依頼します」

「犯人の追跡捜査はしていますか」

 月影の問いに刑事は首を横に振る。

「いいえ。犯行当時男子トイレ前は混雑していました。トイレ内も混雑していたので、誰がトイレにいたのかを覚えている人はいあにでしょう。犯人が雑踏に紛れ込むことで追跡を回避したものと思われます」

 

 残るは防犯カメラの映像を調べるだけ。そう思いながら合田警部は湯里文が倒れた現場の床を見る。

「何だ。あれは」

 床には何かが書かれていた。文字は凝視しないと見えない程度の大きさで書かれている。


『ツ』

 それが床に書かれていた文字だった。この文字は血で書かれているらしい。

「北条。ダイイングメッセージだ。この血文字から血液鑑定をしてくれ。もしかしたらこれで犯人が誰なのかが分かるかもしれない」

 北条は合田の指示に従った。まずカメラでダイイングメッセージを撮影し、その後でホームの床に付着している血液を採取した。

 

 午後5時合田と月影は警視庁に戻り、東京駅の防犯カメラの映像を鑑識に手渡した。

 その時木原たちが警視庁捜査一課三係に戻って来た。

「合田警部。あの廃ビルには犯人の姿はありませんでした。しかし多数の血痕や数台の盗難車をあの廃ビルで発見しました。おそらくあの廃ビルが犯人のアジト兼殺害現場であると思われます」


 大野からの報告を聞いた合田は木原たちに湯里が残したダイイングメッセージの写真を見せた。

「これを見てどう思う。第五の被害者湯里文が残したダイイングメッセージだ」

 その写真を見た神津は大声を上げる。

「そうか。分かった。この連続猟奇殺人事件の真犯人は、北白川カンナの父親だ。ダイイングメッセージが表しているのは地名。北白川の父親は三重県の津市に旅行に出かけているはずだった。だが本当は東京に潜伏して連続猟奇殺人を起こしていた。電車で移動中湯里に自分の存在を気づかれてしまい、仕方なく手持ちのナイフで湯里を刺して口封じしようとした」

 神津の推理を聞き沖矢は大笑いする。

「それはおかしいのだよ。百歩譲ってそうだとしても、湯里さんはどうやって被疑者が三重県津市を旅行しているはずの人間であることを知ったのか。それと第五の事件は白昼堂々と行われたのだよ。目撃者も大勢いた。早く逃走しないと逮捕のリスクが跳ね上がる。つまり真犯人にはダイイングメッセージを消す暇がなかった。だからもう少し単純な意味が隠されていると思うのだよ」


 沖矢の指摘を受け神津は黙り込んだ。現場に残されたダイイングメッセージ『ツ』の意味は何なのか。謎を残しつつ本日の捜査は終了した。


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