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黙示録  作者: 山本正純
第三章 12月27日
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敗北

 午後4時40分。警視庁に通報が届いた。その通報を受けた警視庁は騒然とする。

 千間刑事部長と喜田参事官は警視庁第一取調室のドアを開ける。そこでは、霜月城助の事情聴取が続けられていた。千間はいきなり霜月の胸倉をつかんだ。

「共犯者は誰だ。先ほど通報があった。湯里文が襲われたってなぁ。今まで共犯者のことを庇って黙秘してきたのだろう。早く共犯者のことを吐かないと、また共犯者が犯行を重ねることになる。共犯者のことを守りたいなら、共犯者のことを教えろ」

「だから共犯者なんて知らない。俺は犯人ではないのだから、真犯人が殺したのだろう。早くここから解放してくれ」

「犯人はお前しかいないんだ。そんなこと信じない」


 その時、再び取調室のドアが開き、榊原刑事局長が入ってきた。

「そこまでにしろ。霜月城助を釈放する」

 事態を飲みこめない喜田参事官はあたふたとする。

「榊原刑事局長。あなたには容疑者を釈放する権限はないはずですが」

「それなら私が許可する」


 千間刑事部長は霜月の胸倉を離した。

「霜月城助。これであなたの容疑は完全に晴れた。もう自宅に帰っても構わない。改めて謝罪しよう。長時間無意味な取り調べをしてしまってすまなかった」

 

 この謝罪は異例だ。榊原刑事局長が現れる前とは態度が違う。手のひらを返したような謝罪。刑事部長としては異例の土下座まで披露している。これまでの不祥事の謝罪方法とはわけが違う。

「分かればいいんだ」

 霜月城助は怒りながら取調室を出て行った。千間刑事部長の態度の変化に 喜田参事官は驚いている。

「どうしたんですか。先ほどとは態度が違いますよね」

「二重隠蔽工作が始まっただけだ。別に合田警部に負けたからではない」

「でも負けていますよね。合田警部たちは隠蔽工作に負けず真実を追っています。そして今霜月城助は世に解き放たれた。これは隠蔽工作のない極普通の捜査状況にリセットされたことと同じなのですよ」


 千間刑事部長は喜田参事官の話を聞き、紙を丸め、握りつぶした。

「あの新人衆議院議員の分際で二重隠蔽工作なんて持ち込みやがって。結果的に合田警部に負けたではないか。あの女。今度会ったら八つ裂きにしてやる」

「千間刑事部長は彼女に会ったことがありましたか」

「一度も会ったことがない」

 それなら『今度会ったら』なんて言うなよと喜田参事官は思った。


 その頃霜月城助は警視庁前で田中なずなに電話をしていた。

「ありがとうございます。田中さん。やっと釈放されました」

『それはよかったですね。自由になったから今晩食事に行きませんか』

「いいですね。楽しみにしています」

『それでは午後7時いつもの待ち合わせ場所で待っています』

「了解」

 田中なずなは電話を切った。今彼女がいるのは、彼女が暮らす自宅マンションの中。

「さようなら。愛人さん」

 田中はスマホでハニエルたちにメールを打つ。

『八つ裂きにしても構わないから。ガブリエルより』

 

 そのメールをハニエルとサラフィエルはデパート内で受け取った。

「午後7時からって忘年会が始まる時間やんか。1分で仕事終わったとしてもそこから会場まで一時間必要やん」

「とりあえずサマエルに連絡しますか。忘年会は遅れてくるって」

 イタリアンレストランディーノでサマエルはハニエルからのメールを受け取った。

「なんだよ。忘年会は午後7時からの予定なのに。仕方ない。開始時間を二時間遅らせるか」

 

 サマエルの権限で忘年会開始時間を午後9時に変更された。サマエルはその趣旨のメールを参加者全員に一斉送信した。


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