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黙示録  作者: 山本正純
序章  12月24日
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過熱する対立

 その頃抗議をしている被害者遺族団体の前に人権団体が立ちふさがった。人権団体も死刑囚が警察病院に搬送されたという問題に対して動き出した。人権団体のリーダーの男はメガホンを使い被害者遺族たちに対して演説を開始する。

「被害者遺族の皆様。すぐさま死刑を執行しろというのは無理です。人権は死刑囚にもあります。だからこのまま彼を病死させましょう。死刑も病死も人の死に変わりはありません。あなたたちは宇津木死刑囚が死ねば被害者が報われると思うのでしょう。病死でいいではありませんか」

 

 人権団体の言葉を聞き被害者遺族は反発する。

「病死でいいだと。ふざけるな。お前らに何が分かる。病死なんて結末。俺たちは望んでいないんだ」

 その時多くの警察官が人権団体と被害者遺族との間に介入した。

 千間刑事部長は拡声器を持ち玄関前に集まっている人々に呼びかける。

「千間です。この場は切り上げましょう。多くの患者さんの迷惑になります。宇津木死刑囚については警視庁と法務省で相談の上で結論を出します。それまで無益な口論を止めてください」

 千間の一言で被害者遺族と人権団体との戦いは休戦となった。


 12月24日午後8時。神谷サツキはテレビを観ていた。

『次のニュースです。東京都警察病院の玄関前で大規模なデモが起きました。昨日宇津木死刑囚が東京警察病院に搬送されたため、被害者遺族が死刑を執行するよう抗議しました。またこの日は人権団体もデモに参加。人権団体は宇津木死刑囚を病死させるよう抗議しました。デモ活動に対して千間刑事部長は『警視庁と法務省で宇津木死刑囚の今後を検討する』とコメントを発表。デモ活動は沈静化しました。死刑執行を望む被害者遺族と病死を望む人権団体。彼らの対立は今後も続くものと思われます』

 

 神谷はテレビを切り、インターネットの掲示板を閲覧する。

『やっぱり国家は早く死刑を執行するべき』

『運が悪かっただけだ。病死でいいんじゃね』

『人権団体に賛成だな。病死しそうな人に対して死刑を執行するなんておかしいよ。今にも死にそうな人に死ねと宣告する国家っておかしいよ』


 書き込みを読んだ神谷はマウスを操作しながら呟いた。

「おもしろい」


 その頃相模長重は電話をしながら繁華街を歩いていた。

「ああ。お前か。今そっちに向かっているところだ。それにしても珍しいな。お前が会いたいなんて言うなんてさ」

 相模は酔っている。電話をする前まで彼は日本酒を一人で飲んでいた。

「楽しみだ。久しぶりにお前に会うのがな」

 

 相模はまるで彼女にでも会うかのようにワクワクとしていた。相模には妻もいるので、これは浮気ではないだろうかと人々は思うだろう。

これを最後に相模長重の目撃証言は途絶えた。


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