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黙示録  作者: 山本正純
第三章 12月27日
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飛ばし携帯

 午前10時。東都公園の森林から携帯電話と右足が発見された。鑑識と科捜研はこれらを持ち帰った。


 午前10時30分。警視庁では連続猟奇殺人事件の三回目の捜査会議が始まった。

「まずは先ほど発生した水無信彦さんが殺害された第四の事件からだ。周辺住民や野次馬からの聞き込みを担当した横溝。報告しろ」

 千間刑事部長に指示された横溝は立ち上がった。

「午前8時50分頃遺体発見現場周辺で不審者が電話をかけていたという目撃証言があります。その不審者の身長は150センチ程度。中肉中背です。性別は男のように見えて、服装は黄色いレインコート。性別は男のように見えたと証言しましたが、相手が貧乳のため男と間違えた可能性もあり得ます」

「なるほど。相模長重さんが殺害された第一の事件の目撃証言と一致するな。次は北条」


「水無さんの司法解剖はまだ行われている最中のため、彼が抱いていた左腕の身元や公園で発見された右足の身元は不明です。現場から発見された携帯電話ですが、指紋は検出できませんでした。その代り携帯電話の発信履歴や着信履歴。携帯電話の番号といったデータが残されていました」


 北条はスクリーンに現場から発見された携帯電話の発信履歴を映す。

 12月26日午前8時。 水無信彦。

 12月26日午後1時。 水無信彦。


「発信履歴には水無信彦の携帯番号が記録されています。最後の発信履歴は110番。現場から発見された携帯電話の番号と通信指令室が記録した電話番号。さらに水無信彦に常盤ハヅキと如月武蔵が殺害されたことを告げた水口巧と名乗る偽警察官の電話番号が見事に一致しました。なお現場から発見された携帯電話は飛ばし携帯であることが判明しました」


 飛ばし携帯。架空の会社や人物に成りすまして購入した携帯電話のこと。これらは犯罪に使われることが多い。飛ばし携帯のメインターゲットは詐欺グループだろう。

 

 つまり犯人は詐欺グループなどの犯罪組織から飛ばし携帯を入手した可能性が高いと合田は思った。犯人に飛ばし携帯を売ったのが指定暴力団流星会ではないことを彼は祈っている。飛ばし携帯の出所が暴力団なら、組織犯罪対策課も捜査に参加することになるからだ。


 木原は手を挙げて北条に質問する。

「その携帯電話には他に誰の携帯電話が登録されているのですか」

「奇妙なことに水無信彦の携帯番号しか登録されていないのです」

「分かりました」


 合田たちが報告をした後で千間刑事部長は机を叩き立ち上がった。

「もう被疑者は特定できている。犯人は霜月城助しかいない。彼ならあの3人の携帯電話番号を容易に入手することができる。そしてこれまでに殺害された4人全員と接点があるのは彼だけだ。飛ばし携帯を使って被害者を呼び出したのは、トリックを仕掛けて警察を撹乱するためだろう。携帯電話の発信履歴にあの3人の番号が記録されていなければ、容疑者から外れるからな」

「少し強引ではありませんか。それが真実なら態々発信履歴を残すでしょうか。普通なら削除しますよね。それに喜田参事官は第二回目の捜査会議の時に霜月城助犯人説を否定しました。そして第三回目の捜査会議では掌を返したかのように霜月城助を容疑者にしている。その心境の変化は何ですか。警視庁上層部が隠している真実と何か関係があるのですか」

「大野。お前の質問には答えることができない。これ以上警視庁上層部の逆鱗に触れるような発言をしたら、警察を辞めてもらうことになりかねない。口は災いの元だ」


 こうして第三回捜査会議は終了した。


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