須田哲夫の置き土産
その頃東都ホテルのフロントに大野と沖矢はいた。
「支配人さん。昨日朝霧さんと北白川さんがこのホテルを訪れませんでしたか」
大野は支配人に2人の写真を見せた。
「この2人なら来ましたよ。刑事さん。もしかしてこの2人が怪盗リアス式海岸なのでしょか」
大野と沖矢は首を傾げた。その姿を見て支配人は驚く。
「あれ。怪盗リアス式海岸絡みの捜査で来られたのではないのですか」
「ある殺人事件の捜査として来たのだよ」
「そうですか。それなら殺人事件とも関係するかもしれませんね。実は昨日の午後4時40分からの一時間駐車場にある全ての監視カメラの映像が遮断されました。怪盗リアス式海岸の仕業ではないかと思いましたが、その殺人事件の犯人の仕業かもしれませんね」
「まだその2人のどちらかが犯人と決まったわけではありませんから、怪盗リアス式海岸の仕業の可能性が高いと思います。だから捜査二課の刑事が来たら同じ話をしてください」
その後大野と沖矢は警視庁へと戻るために車を走らせた。
「気になりますよね。東都ホテル駐車場の防犯カメラ映像の遮断」
「犯行現場があのホテル内の駐車場だとしたら、無関係とは言えないのだよ」
後1キロで警視庁という所で大野の携帯電話が鳴った。運転は沖矢に任せているので、大野は電話に出ることができた。
「もしもし。大野です」
電話の内容に大野は顔を青くする。
「分かりました。すぐそちらに向かいます」
大野は電話を切り、沖矢に指示を出す。
「行先を変更します。東京都警察病院に向かってください。あの事件の被疑者が目を覚ましたそうです」
沖矢は大野が言っていることが理解できない。とりあえず警察病院に向かえばいいということは理解できるが、あの事件の被疑者というのが理解できない。
警察病院へと向かっている車内で沖矢は運転しながら大野に質問する。
「誰なのだよ。あの事件の被疑者って」
「退屈な天使たちのメンバーで、10月31日に逮捕したコードネームラジエル。あの事件以来彼女は昏睡状態になっていました。彼女が目を覚ましたら連絡するように頼んでおきました。彼女の聴取は僕が行わなければなりませんから」
その頃ウリエルはアズラエルからの電話を受けていた。
「分かりました」
『後はお前らに任せる』
ウリエルたちはイタリアンレストランディーノにいる。
複数形にしたのはこの場にハニエルとサラフィエルの2人もいるからだ。彼らは今明日の早朝帰国するサマエルこと板利明を出迎える会兼忘年会の準備をしている。
飾りの準備をしているハニエルたちにウリエルは話しかける。
「どうやら忘年会は中止になりそうです。ラジエルが目を覚ましました。後は任せろというオーダーです」
「どうすればいいんや。選択肢は暗殺か奪還やろうけど」
「まずは須田哲夫の置き土産を使いましょう」
須田哲夫。警視庁組織犯罪対策課警部補。11月1日深夜麻薬取引の捜査中爆発に巻き込まれて殉職した刑事。しかしその正体は退屈な天使たちのメンバーラグエル。ある人物を暗殺するために警察組織に潜入捜査をしていたが、10月31日暗殺が終了したため、偽装殉職を行い警察組織から撤退した。
ハニエルはラジオを取り出した。
「こちらは組織が開発した盗聴ラジオです。電波の受信距離は直径50キロ。東京都警察病院に仕掛けてある盗聴器の電波はすぐに拾うことができます」
一応須田哲夫の簡単な解説は入れた。詳しくは警察不信を参照。




