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黙示録  作者: 山本正純
第二章 12月26日
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偽善者の集団

 その頃合田と月影は飲み屋ブラッグ大河で北白川カンナに会っていた。現在店は準備中。北白川は店の準備として調理場の掃除をしている。

「北白川さん。少し時間をよろしいですか。水無元太さんについて聞きたいことがあります」

 

 月影の一言を聞き北白川は手を止める。

「水無君は事故で死にましたよ。これ以上彼について話すことはありません」

「事故か。7年前の特急ブルースカイ号爆破事件で水無元太は死亡した。あれは事故ではない」

「事故にさせてください。事件はまだ終わっていないんです。共犯者が逮捕されない限り死刑は執行されることはない。その死刑囚は危篤になっている。もうあの事件については忘れたいんです」

「死刑囚は危篤だ。もう時期彼は死亡する。それでいいではないか。死刑にこだわらなくても人の死には変わりないだろう」

「あなたたち警察組織は偽善者の集団のようです。正論しか言わない。あなたたちに被害者遺族の気持ちが分かりますか。マスコミで報道されていますよね。死刑執行を早める派閥と病死で事件を終わらせようとする派閥の対立。私は今でも死刑執行を望んでいます。そうしないとあの事件で失われた命が喜ばないでしょう」


 水無信彦が息子は事故で死んだと言ったのも北白川のような心境があったのだろうと合田たちは思った。

「昨日常盤ハヅキと如月武蔵が殺害された。この2人を知っているよな。如月武蔵はこの店の常連だった。常盤ハヅキは相模長重が殺害された12月24日にこの店にいた。これがこの前あなたが証言したことだよな」


 北白川は頷く。

「その通りです」

「この2人を恨んでいる人物に心当たりはありますか」

「ありません」


 北白川ははっきりと答えた。如月武蔵はこの店の常連だった。もしかしたらお酒の力で何か秘密を漏らしているのではないかと合田たちは考えていたが、見当違いだったようだ。

「気になることだが、なぜあなたは常盤ハヅキのことを常盤ハヅキさんとフルネームで呼んでのだ。調べるとあなたと常盤ハヅキ。桐嶋師走。水無元太の4人は同じ東都商業高校の出身だということが分かった。しかもこの4人は3年間一緒のクラスだった。なぜ常盤ハヅキだけフルネームで呼んだのか教えてくれないか」

「常盤ハヅキさんとは因縁があったのでフルネームで呼ぶことにしているんです。一学年上の先輩と交際するために喧嘩をしました。まあ私が好きだった先輩には既に彼女がいたので二人とも諦めましたが」

「因みにその先輩の名前は」

「朝霧睦月先輩です。朝霧先輩の彼女の名前は分かりませんが、その彼女は7年前に事件に巻き込まれて死亡したらしいです」

「最後に昨日の午後4時20分から午後5時40分までどこで何をしていた」

「午後4時から朝霧さんと東都ホテルで会っていました。午後5時に解散してからは、店の準備をしていました。本当ならお父さんと一緒に仕事をするんですけど、お父さんは一昨日から年末の町内会の旅行で三重県津市で観光をしています。だからアリバイの証人はいません」

「なぜ朝霧さんと会っていたのですか」

「相談に乗ってもらいました。病死で終わらせるのと、死刑執行。どちらが正義なのかという難しい話をしました」


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