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黙示録  作者: 山本正純
序章  12月24日
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ある囚人が死刑になるまで 後編

 事件発生から三日後。どこのテレビ局もこの脱線事故を大々的に取り上げていた。


 午前11時、北条ほうじょうは千間刑事部長にある報告をした。

「千間刑事部長。例の爆弾事件で面白いことが分かりました。脱線した特急ブルースカイ号に仕掛けられた爆弾の残骸から一人の男の指紋が検出されました。6年前に殺人事件で逮捕されて仮出所された宇津木由紀夫うつぎゆきおです。それともう一つ前歴がない人物の指紋も検出されました。さらに事件当時宇津木らしき人物が特急ブルースカイ号に乗り込んだという目撃証言もあります」

 その話を聞き千間は思い出した。

「そういえば爆弾はリモコンを使用して爆発させる奴だったな」

「はい。爆弾は電波を受信したら爆発する仕組みでした。その受信距離は直径1キロメートル程度。電車内にスイッチを持った宇津木がいたとしたら十分犯行は可能です」

「なるほど。共犯者が青空運航会社に脅迫電話を掛ける。宇津木由紀夫は爆弾を爆発させて運航会社をあおって早めに10億円を準備させるという作戦だろうな。よし。宇津木に事情聴取をしろ」


 千間刑事部長の一声で逮捕状と家宅捜索状はすぐに用意された。

 宇津木由紀夫はあっさりと罪を認めた。家宅捜索の結果自宅から爆弾の成分が見つかったため、宇津木は逮捕された。

 宇津木の供述によれば共犯者は顔すらしらない人物らしい。共犯者を探し出す手がかりは彼の携帯電話のみ。だが非通知設定がされていたため捜査は難航した。


 そして半年後裁判が始まった。裁判長は後に法務大臣になる井伊尚政いいなおまさだ。裁判は淡々と進んでいった。

 そして裁判長の井伊尚政は罪状を読み上げる。

「宇津木由紀夫。被告人を死刑にする」

 その結果は当然だと国民は思った。300人もの死傷者を出した犯人が死刑でなければこの国は崩壊する。

 だが死刑は執行されなかった。


 2009年6月29日。死刑執行を望んでいる被害者遺族の神谷サツキは怒っていた。

 この日、神谷かみやサツキは井伊尚政法務大臣を訪ねた。彼女はアポイントを取っていない。アポなしで彼女は法務省の駐車場を張り込んでいる。

 

 そんな時、井伊法務大臣を乗せた車は駐車した。SPたちに囲まれた法務大臣に神谷は立ちふさがる。

「法務大臣。何で宇津木を死刑執行しないんですか。早く死刑を執行してあの悪魔を地獄に送り込まなければ妹が悲しみます。あの事故で亡くなった人やあの事故で大切な人を失った人。そして死刑は当然だと思った世論をあなたは裏切るんですか」

 SPたちは彼女を這おい攻めにする。

「君は確か警察官だったな。常識だろう。今彼の死刑を執行したら共犯者が逮捕された時の証拠がなくなる。まだ共犯者は逮捕されていないから、共犯者の罪状は決まらない。よって死刑執行は共犯者が逮捕されてから半年後になりそうだな」

「それで共犯者が時効を迎えたらどうするんですか。死刑執行前に宇津木が獄中死したら。こんなの死刑じゃない。終身刑と同じですよ」

 神谷の言葉を聞き井伊は大笑いした。

「警察が共犯者を逮捕したらいいだけの話だろう。説教の前に仕事をしたらどうだ」

「分かりました」

 神谷はSPたちのよって法務省の外に摘み出された。それでも彼女は負けない。早く共犯者を逮捕して死刑を執行させるために彼女は戦う。


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