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黙示録  作者: 山本正純
第一章 12月25日
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爆破殺人

 午後6時20分。警視庁の合田警部たちは常盤ハヅキの自宅に臨場した。

 大野は合田たちに状況を説明した。

「死亡したのは常盤ハヅキさん。26歳。首には索条痕もありますし、左腕には爆弾らしき時計が取り付けてありました。その時計は爆発物処理班が回収しましたので、この場にはありません。そして右腕は切断されていた。間違いなくこの犯行は相模さんを殺害した犯人と同一犯です」

大野からの報告の後で北条は常盤ハヅキの検視を始める。

「死後硬直の状態から死後一時間から二時間程度経過しています。気になるのは現場の床に水滴が落ちていること。トリックに使われた可能性もあるので、鑑定をしてみます」

「つまり犯行は午後4時20分から午後5時45分までの間で行われたということか」


 合田の確認を聞き北条は頷いた。すると木原が手を挙げた。

「常盤ハヅキさんは午後4時に輸入会社カシオペアを早退しています。彼女が勤務する輸入会社と自宅まで信号を計算に入れても15分もあれば到着します」

「おそらく常盤ハヅキはこの自宅で誰かに会うために体調不良を偽って帰宅。そしてこの自宅で待っていた犯人に殺害されたというところだろうぜ。その証拠に携帯電話がどこにもない」


 神津の推理を聞き沖矢は頷く。

「その線が濃厚なのだよ。でもなぜ犯人は常盤ハヅキの右腕しか切断しなかったのかが分からないのだよ。相模さんの遺体は四肢を切断されていたのに、中途半端だよね」

 沖矢の一言を補足するかのように北条は合田たちに報告する。

「切断された右腕は生体反応がありません。殺害された後で切断されたのでしょう。つまり犯人はまだこの家の中にいるかもしれません。大野たちが鳴らしたインターホンの音を聞いて驚き、残りの部位の切断を断念してこの家のどこかに隠れたとしたら辻褄が合うと思いますが」


 北条の推理を聞き合田は部下たちに指示を出す。

「犯人はまだこの家の中に潜伏している可能性が高い。家中を捜索しろ」

 木原たちが犯人の捜索をするために、現場を離れた頃、北条の携帯電話に電話がかかってきた。

『爆発物処理班の天野と申します。常盤ハヅキさんの左腕に取り付けてあった爆弾らしき物ですが、あれは爆弾ではありませんでした』

「つまりあれはただの時計だったということですか」

『そうではありません。あれは爆弾ではありませんが、ただの時計でもありません。あれは爆弾のアンテナです。ある電波をそのアンテナが受信したら、半径一キロ以内にある爆弾が同時に爆発するという仕組みです。その時計は解体したので、もう使い物にはなりませんが』

「ということは半径一キロ圏内に爆弾が仕掛けられているということですか」

『そんな奴が準備されているということはそうでしょう』

 その頃木原と神津は二階を重点的に捜索していた。だがどの部屋にも犯人らしき姿はない。

 

 2人がまだ探していない場所はトイレのみ。

「まさかこんな所に犯人が隠れているはずがないだろう」

 神津は独り言のように呟いた。

「2階で隠れることができる場所で探していないのはここだけでしょう。探す価値はあります」

 木原の言葉を聞き神津はトイレのドアノブに手を伸ばす。するとどこからか時計の音が聞こえてきた。その音はトイレの中から聞こえてくるようだった。

 まさかと木原は思った。一方神津はドアを開けようとする。それを見た木原は神津を静止した。


「伏せてください」

 トイレは爆発した。閑静な住宅は突然の爆発により大きく揺れた。トイレの周囲の壁は破壊され、瓦礫が山積みになっている。トイレがあった場所からは黒煙が昇っている。

 爆発の直前に伏せた木原と神津は怪我を負うことはなかった。だが瓦礫の山に誰かの腕が埋まっている所が見える。


 2階のトイレは全壊したが、常盤ハヅキの自宅は倒壊しなかった。

 その様子を真犯人は野次馬たちに交じって、爆破された常盤ハヅキの自宅を見上げていた。

「さようなら。如月さん」


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