第二の猟奇殺人
午後5時20分。合田と月影は刑事部長室のドアをノックして入室した。刑事部長室の中には千間刑事部長がいる。
月影は開口一番に千間たちに報告する。
「千間刑事部長。重要参考人を特定しました。名前は常盤ハヅキ。26歳。霜月さんが社長を務める輸入会社に勤務している事務員で、昨日相模さんと同じ店内で飲んでいました。動機は7年前の特急ブルースカイ号爆破事件で殺害された父親常盤光彦さんの復讐。彼女にはアリバイがありません」
「どうだ。重要参考人として任意で引っ張った方がいいと思うが」
千間刑事部長も常盤ハヅキが犯人であると思った。
「分かった。家宅捜索状を準備して証拠を見つけようじゃないか。その前に常盤ハヅキを任意で事情聴取してもいいかもしれないが」
千間刑事部長から許可を貰った合田たちは刑事部長室を退室して、捜査一課3係に戻る。
合田は木原たちに指示を出した。
「常盤ハヅキを事情聴取する許可を千間刑事部長から貰った。木原と神津は職場の輸入会社カシオペアに行け。大野と沖矢は彼女の自宅だ。相模の自宅の隣が彼女の家だ。俺と月影はこの場に残る」
合田の指示を聞いた木原たちは急いで駐車場へと向かう。そして2台の車は警視庁から発進した。
午後5時50分。木原と神津は輸入会社カシオペアに到着した。だが受付には常盤ハヅキの姿がない。
仕方なく木原は受付に座っている事務員に質問する。
「常盤ハヅキさんはどこにいますか」
「常盤さんなら午後4時に体調不良で帰りましたよ」
逃げられたと木原たちは思った。神津は合田にこのことを電話で報告する。
『常盤ハヅキが職場にいないだと』
「まだ自宅にいるのか、どこかに逃亡しているのかは分からないが」
一方その頃大野と沖矢は常盤ハヅキの自宅に到着した。その家は二階建てだ。
沖矢がインターホンを押したが、誰も出てくる気配がしない。
「仕方ない。強行突入するのだよ」
沖矢はドアを開けようとする。それを大野は止めた。
「止めてください。不法侵入で訴えられますよ」
ドアは施錠されておらず、あっさりと開いた。沖矢は常盤ハヅキの家の勝手に上り込む。
それを追うように、大野も後を追いかけた。
その時大野たちは違和感を覚えた。廊下には血液が付着している。血液の道標は2階に続く階段に続いている。
まさかと思い大野たちは2階へ上がる。血液は乾ききっているようで、大野たちが歩いても消えることはなかった。
血液は部屋の前で止まっている。その部屋は鍵がかかっていない。大野がドアを開けると常盤ハヅキがベッドの上で横になっていた。
「常盤さん」
沖矢は常盤ハヅキに声を掛ける。だが返事がない。呼吸もしていない。心肺停止状態。
大野は手袋をして常盤ハヅキの体を障る。常盤ハヅキの体は冷たかった。彼女の右腕が切断されていた。左腕には時計が巻かれている。首には索条痕。
「沖矢さん。合田警部と爆発物処理班に連絡してください」
これは第二の事件。爆弾らしき時計の針は止まっている。




