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上げて落とすと効果的!

タイトル道理ですかね。


ようやく主人公もバトルをする様な展開になってきました。

 両親の勘違いを直すのは既に手遅れだった。そして話し合ったメアリスもリートも俺を嫌ってはいる様だが最初ほど険悪ではなかった。両親との話が効果が有ったのだろうが俺にとっては逆効果だ!


 折角故郷に帰って来たら、其の故郷に売られるとか考えて居なかっただけに俺の心は、大ダメージを受けて瀕死の状態だ。だが此処で諦める俺では無い。これからの行動には一応自由なのだから好きに行動して勇者に魔王を討伐させれば良い。エイミを立派な勇者に育成し其のサポートにセイレーンとラミアを付けて魔王を討伐出来る様に・・・・・・


 あっ、此処で俺は気付いた! 魔王が沢山現れるのなら、別に一人が必ず魔王を一匹仕留める必要は無い筈だ。寧ろ108人の勇者に対して108匹の魔王を想定している事がおかしい。少ないかもしれないし、多いかもしれない。


 そうなると、強い勇者を育成してそいつに魔王を複数倒させるのが良いんじゃないかな? 他の弱い勇者に経験を積ませて厄介な存在にする事も無い筈だ!


 良し! これからの基本方針は王都で優秀なパーティメンバーを育成してそいつ等を目立たせて他の勇者より有名にする。其れなら、俺の噂や勘違いの実績なんて過去の事になり忘れ去られ・・・これで行こう!


 そうと決まれば早速行動を開始しなければ、


「お、レオン此処にいたのか。少し聞きたいんだが・・・」


「何ですか?」


自分の家の客間で、考え事をしていた俺に父が声を掛けて来たが少し困っている様な顔をしている。この人が困るなんて珍しい。


「・・・・・・落ち着いて聞いてくれよ?お前は神殿の祝福を受けたか?」


「は? わかりませんが受けているのではないのですか。」


 神殿の祝福とは、産まれた子供に神官が行う儀式だ。まあ、聖なる呪文とやらで上空から光を子供に当てるだけなのだが其の時に神に選ばれた者には光と共に神の言葉が掛かるらしい。そんな事は少ないから滅多に無いし、声が聞けても単語が聞こえるとか其の程度だ。


 実際に勇者の祝福の時は上空からの光と共にただ、


『この者は勇者である』


 これだけが告げられたらしい。わかり易くて有り難味に欠けるお言葉だ。


 此処まで言えばわかる通り赤ん坊の時に受けたかどうかなど覚えていない。其れを聞いてくる父に少し不安を覚えたから聞き返したのだ。


「・・・・・・父が付き添ったのでは無いのですか?」


「昨日の話し合いの時に、メアリスの祝福が大変だったと話題になったんだが・・・私は、お前の祝福をした覚えが無くてな。母さんがしていると思っていた。」


「母はなんと?」


「私が済ませていると思っていたらしい。」


 俺は神殿や神官から祝福はされずに呪われていただけか・・・なら今までの事も説明が付くな!


「神殿のハースレイ神官からも、お前の祝福を担当した神官がわからないか? と、手紙を貰ったんだが・・・なんて答えたらいいと思う?」


「聞かれても困ります!」


 この後に、していないのがばれると可笑しい事になるからこのままでと、確かにその場で父とは合意した。だが此処で問題が・・・・・・母だ。


 数日は、故郷に滞在し疲れを癒しつつ、出発の準備を済ませていたらついでにと、大量の王への報告書や神殿への返答を書いた手紙を渡されて、其れを持って王都へと帰還した。


 この時に確りと差出人を確認して置けば・・・・・・


 長旅からの帰還、と言う事で王都の城門から歓声を挙げて迎えられ城までの道を歩いている時も、多くの歓声を浴びて城まで出迎えられた。こんなに騒いでいるが、半分以上の王都の住民は何の調査団かも知らないのでは無いだろうか?


 そんな事を考えつつ王の間に入れば・・・・・・俺は雑用ですよね?


「此度の任務遂行、大儀である。最後に帰還するとは、中々味な真似をしてくれるな『神童』?いや、もう童扱いは失礼か・・・・・・レオン・アーキス、大儀であった!」


「有り難きお言葉・・・・・・」


 俺は、雑用で参加しただけなのに、何で責任者の様な扱いを受けて誰も訂正しないんだ?大臣とか将軍とか騎士団長も笑っていないで、此処は訂正するべきだと思うよ。


「其れから、ゆっくりと旅の疲れを癒やすといい。三日後には、この城にて全調査団の帰還を祝福してパーティを予定しているから、其の方も参加する様に・・・・・・良いな?」


「は、」


 いやいや、其処まで言われて出ませんとか、言う人居ないからね!・・・其れより、王様の影が一段と薄い様なんだが何か有ったのかな?


 俺は、久し振りにマーセルさんから借りている屋敷に戻って来て呼び鈴を鳴らすと、駆けて来る二人の足音が旅立つ前よりも成長を感じさせているのに気付いた。


「「お帰りなさい!!」」


「おお!ただいま・・・大きくなったな二人とも!」


「今日帰ったって聞いて待っていました。」


「私は姉さんよりも背が・・・」


 そんなはしゃぐ二人が、俺の後ろに隠れたエイミを見て急に大人しくなる。なんだ照れているのかな?此処は俺から紹介してやるかな。


「この子はエイミ、旅先で見つけたゆう、」


「「勇者」」


 何故だか二人の雰囲気が冷たく感じる。そしてエイミも何故か精神を研ぎ澄まし俺から手を離して戦闘態勢を取り始めた!


「な、何しているのか?俺に説明して欲しいな・・・・・・」


「この子達は・・・・・・大嫌い! 『我の敵たる者の動きを・・・』 」


「え! 何を唱えているのエイミ!ちょ、」


「『我の敵たる・・・』」


「お姉ちゃん、私がこの子を押さえるから・・・」


 エイミと対立するセイレーンとラミアが、急に魔法を唱えだしラミアにいたっては、隠しナイフを取り出してエイミに突進を・・・


「何してんだよ!!!」





 大事な第一印象は、お互いに殺し合うと言う最悪の始まりを迎えた俺の秘蔵っ子の三人は、お互いの出せる技を駆使して見せ付けた少女バトルファンタジー・・・笑えないにも程がある! 俺の計画が立案から早くも崩れ去るなんて考えても居なかった。


お姉さんになる二人に聞くと


「勇者は嫌いです。」


「この子は嫌い! 大嫌い!」


妹分となるエイミは


「この子達は駄目なの・・・居ちゃいけない!」


 なんだろう、もう本能で嫌っているレベルとか俺には、どうし様も出来ないよ。此処まで、エイミとの相性が悪いとなると時間をかけて慣れさせるか、違う勇者と組ませるしかないな。


 ああ、俺の静かなコツコツライフの道のりが遠のいている。だがこれはこれで利用出来るかもしれない。お互いを意識させてより高みを目指させる。・・・今、思いついたにしては中々の考えだな!


「いいか三人とも、この家に住むには俺に従う必要がある。此処でルールを決めようか・・・お前達三人は、訓練以外で戦わない。訓練も殺さない程度に抑える。他は・・・まあ思いついたら追加するから覚えて置くように!」


「「「・・・はい。」」」


 お互いに睨み合う少女達は、もう納得なんかしていないから隙が有れば殺し合いをする様な目付きだ。


「破ったら、三人ともお菓子を禁止するから覚えて置けよ。其れから、俺が見ていない場所で戦ったりしたら飯抜きだからな?」


「「「はっう!!!」」」


 あれ? 結構仲は良くなるかもしれないな。三人でハモったし・・・






さて、パーティーに参加する事になった俺はマーセルさんの所にエイミと共に服を仕立てに顔を出した。エイミは、勇者だから強制参加となったんだ。ハースレイの奴が張り切りやがって・・・・・・


 服を仕立てる、と言っても裾合わせをするだけだから時間も掛からないからマーセルさんとの話し合いが主な目的である。


「レオン様の計画は、とても順調な様でこのマーセルも大変嬉しく思います。来月にはレオン様も成人ですから他にも必要な物が有れば何なりと・・・・・・」


「ああ、地図が欲しかっただけであんな騒ぎになるなんて考えもしなかったよ。其れに成人か・・・・・・仕事でも探そうかな?出来れば職人が良いな!領地は、弟が継ぐと決まったしね。」


 普通に聞いたら、笑えない内容の話を笑顔で切り出したがマーセルさんは、余り気にしてないのか笑顔を崩さなかった。


「ご冗談がお上手ですな、聞いていますよ。王妃様から直々に、王都にて要職に就かせる為にわざわざ動かれたとか・・・・・・大臣と将軍が、人事で揉めているそうですから大変ですな。」


「そんな話は、聞いていないぞ! 王妃様からは王都で俺の力が欲しいとしか・・・」


 あ、そうなると普通は仕官するという話になるよな。


「間違った!!!」


「いえいえ、何も心配は有りませんよ。どちらで働かれても、レオン様なら私も安心できます。しかしあのレオン坊っちゃんが、この国の大臣か騎士団長ですか・・・時が経つのは早いですな。」


「違うどちらにもならない積もりなんだ! 俺は・・・・・・王都から出て行こうと思う。」


 こんな所にいたら、本当に逃げられない立場になって最後には、勇者に殺されるかもしれないじゃないか! 其れなら、領主にもなれない俺は自由にしても問題ないのだから何処かの村にでも引っ越してやる!


「ほ、本気ですか? しかし、今から王都から出て行く立場と言えば・・・治安維持目的の魔物討伐隊くらいしか・・・・・・」


「は? 何を言っているですか! 俺は出て行くんですから関係ないでしょう?」


「・・・・・・其処まで、真剣ならお止めはしません。私は、レオン様が其処までお考えとは知らずに何と言う事を・・・・・・」


「パーティーが、終われば直ぐにでも出て行こうと思います。」


「わかっていて、其の地位をお捨てになるのですね?」


 なんだか今回は、簡単に話が進むな? 能力は発動していないみたいだから文句はないが・・・・・・何かおかしいような?


「俺は、地位を求めていないんです。自分の考えや夢に従って行動しようと思います。」


「・・・・・・決意は固いのですね。わかりました・・・・・・このマーセルも微力ながらお力をお貸し致します。」


「あ、ありがとうございます! マーセルさんにわかって頂けるなんて感激です。」


「いえ、今日からは呼び捨てで結構です。私は勘違いをしていた事に今、漸く気付きました。」


「ですよね!」


 何か最近は、能力が発動しなかったりするから話が早くて助かる。このまま能力が無くなれば俺の夢のコツコツライフはすぐ其処だ。


「辺境の危機に、地位を捨ててまで向かわれるとは考えていませんでした。レオン様は、王都で重臣になられるよりも国の為に働くと言う・・・・・・並大抵の決意では有りません。私は多くの貴族を見て来ましたが、レオン様の様な方は今まで聞いた事もありません。」


「お前もか? お前もなのか! どうして期待を持たせてから叩き落とすやり方をする! 流行ってんの? 其れが今の主流なのかよ!」


 やはり勘違いをしてやがった。この男も手遅れの様だが王都から離れられるならこの話を受けておこう。・・・涙を流して感動していて、話なんか出来る状態じゃ無いしな。






こうして、辺境の危機に立ち向かうべく立ち上がらせられた俺は、パーティーに参加した後には騎士の称号を頂いて国境近くの領地に派遣される事になった。幾つかの村は他国・・・・・・内乱をしていた隣国と近かった為に、食料や財産を奪われているらしい。


 そんな所に行きたがる者など居ないから今までは傭兵や流れ者を使っていたが被害が半端ないとか・・・・・・傭兵や流れ者が、村を襲ったから余計に酷い状態になった。


 おまけに、その隣国は滅んだんだがクーデター側が勝ったのにも関わらず其方も滅んだ。オセーンとか言う帝国が漁夫の利を得たらしい。


 何してんだろう。


 神殿は、この件に大変お怒りの様で預かった勇者達を返す事はしないとか、無理矢理奪い合うのは良くないよな。これを理由に、勇者を自分達寄りに教育する積もりが見え見えだ。


 オセーン帝国とか、確かに聞いた事はある。勇者が皇帝の娘とかで有名だ。そんな重要人物を魔王討伐に出すなんて考えられんな。・・・・・・姫勇者、響きは悪くないがせめて後10年早く、産まれて来ていてくれたら・・・・・・




 などと、色々と考えて現実逃避をしていたがパーティー会場には多くの貴族達が出席し、他の身分の低い者達は別の会場でパーティーをしていた。何時も通りの勘違いで、この場に通されたが周りの俺を見る目が凄く怖い。


「あの子が勇者か?」


「エイミ、とか言ったが平民風情がこの場に?」


「黙っていた方が良い。呪われたら適わんからな・・・・・・」


 俺、じゃなくてエイミが目立っているだと・・・やはり俺の考えは正しかった! 俺なんかよりも本物の勇者が目立つのは当たり前だ。この調子で頑張るぞ!


「エイミは、目立っているな。慣れて置くと良いよ。此れからは、周りから見られるのが当たり前の生活になるんだから・・・・・・」


 自分で言っていて凄く悲しい。


「皆は私が嫌いみたいです。」


 周りを見渡したエイミが、俯いてしまう。そんなんじゃ駄目だ!


「胸を張れ、俯くな、お前にそんな暇などない。選ばれたからには、逃げる事など許されない。其れが、本物の勇者の責任だ。」


 ・・・・・・今度は、言っていて情けなくなる。俺が、逃げる為にエイミを犠牲にしている・・・待てよ、俺のは勘違いだから問題無いし、逆に頑張り過ぎだから気にしなくて良いんだよな?


 思い返しても、俺以上に勇者の為に働いた奴とかいないだろ。・・・・・・寧ろ、其の事実が怖いわ!


 この国だけでもこれだけ大変なのに、他の国とか準備してんのかな? まあ、俺以外に転生者が居るんだから何かしら行動していてもおかしくない。だけど『トランプ』や『将棋』で、俺は存在をアピールしているのに対して他の奴等の事は耳に入ってこない。・・・・・・きっと上手く立ち回っているからだと信じよう。


「・・・わ、私も頑張ります!」


 悩んでいたら、上目使いで恥ずかしそうにやる気を宣言してくれたエイミが偉く可愛く見える。何時もの様に、頭を撫でていたら其処に俺しか頼る奴のいないハースレイが現れた!


「これはレオン様、この度の調査お疲れ様でした。・・・・・・此方の方が、例の勇者様ですかな?初めましてお嬢ちゃん、神殿に仕えている神官のハースレイだよ。」


 何、自分を売り込んでんだよ。其れに見てみろ・・・・・・エイミが殺気立って凄い睨んでいるじゃないか! 空気を読めよ。此処は俺が空気を変えるしかないが、なんか嫌な感じがするんだよな・・・・・・


「何の用ですか?」


「おお、そうでした! 実はレオン様の祝福を是非とも行いたいと考えていまして、神官長にも相談したら、これは大々的に行おうと言う話になりましてご報告に、」


「ちょっと待て・・・・・・祝福の話は済んでいると手紙には・・・・・・書いてなかったのか?」


「母君が、大変心配されている様ですな。何でも私達に、今からでも間に合うかと相談される内容でしたよ。」


 な、何だと・・・・・・母よあなたの所為で俺は皆の前で晒し者にされる様ですよ。


 赤ん坊が受ける儀式を、大々的に行うとか嫌がらせ以外に考えられない。出来れば目立たずに済ませたいとだけ伝えてこの場を逃げ切り、何処かの神官でも捕まえて済ませてしまおう!


「嬉しい話だが、大々的にやるのは悪いから静かに行いたいと神官長に伝えて、」


「其れは出来ないな。」


 横から口を出して来た、声の主を探して振り返ると赤いドレスを着た王妃様が、王様を従えて其処に居た。・・・・・・普通は逆ですよ王様!


 胸元の開いたドレスに目が行くが、其れにしても威厳が有る王妃様よりも、派手に着飾っている王様が目立たないのが凄過ぎる! 俺は、真剣にこの人に弟子入りした方が良いのかもしれない。だが今は・・・


「これは王様! 王妃様もこの度は、」


「挨拶はよい。レオン殿の祝福には、私も参加させて貰おう・・・良いかな其処の神官?」


「い、いえ、流石に其処までの準備が出来るかどうか、わかりませんので・・・」


 ハースレイの奴も王妃様は苦手の様だな。だが、俺も見ている訳にはいかないから此処は協力しよう。


「王様や王妃様が、出られるまでも有りません。私の問題ですから、此処は静かに執り行いたいと、話していた所ですから・・・おい!」


「そ、そうでした。やはりこの様な儀式は、厳かにしなくてはいけませんから今回は、」


「良いではないか。其れに、レオン殿に神託があれば其れはこの国の大事だ。私は、見ているだけでいいと言っているんだが?」


「わかりました。神官長に報告しておきます。」


 早くも裏切りやがったよ、この神官! お前が提案して来た事なんだから責任くらい持てよ。


「其れから、レオン殿にはまた迷惑をかけるが辺境での任務を無事に果たしてくれる事を願う。騎士団からも有志を募っているが、余り期待出来ない・・・済まんな。」


「いえ、御気になさらずに。」


 別に問題ないんだけどね。此処に居るよりも安全では有るんだしさ、今は大変だろうけど10年後20年後を考えたら、この選択は正しい筈だ。・・・・・・生き残れればの話だが、魔物の討伐と国境の警備は必要だろう。隣国みたいに、攻め滅ぼされると今までの苦労は水の泡になる上に最悪魔王に世界が征服される。


 この国は、今から力を蓄えないといけないんだ。戦争なんてして貰っても困るし、安全を脅かす魔物を放って置くなど論外に等しい。まあ、きつくなる頃には勇者やそのパーティメンバーが、大きくなっている事に期待しておこう。


「・・・時々思うのだが、レオン殿は『勇者』では無いのか? 其の知略と武力は我が国でも1・2を争うと評判なのだが、其処の神官はどう思う?」


「違います!」


「我々も、何度かそう思って調べたのです。其処で、今回の祝福を受けていないと言う事に気付き・・・時々居られますからな。嬉しさの余り祝福の事を忘れたり、家族の誰かが受けさせていたと思って居たりと色々有ります。」


「違うって言ってんだよ! こんな時ばかり無視するとか、可笑しいだろうが!」


 俺の事を無視して、話を続ける二人は俺の事を『勇者』と勘違いしている様だが、其れは確実に無い! 其れなら他の転生者も勇者として神託を受けた筈・・・・・・待て! 他の転生者が、俺と同時期に産まれるとかあの白い部屋の声だけの存在は言っていない!


 もしかすると転生者は、108人の中に居て、俺だけが未確認のまま此処まで来た事も考えられるじゃないか! なんで、こんな事に今まで気付かなかったんだ・・・


「其れでは神殿の大神官をお呼びしますか?」


「其れも良いな! 其れなら此方は騎士団も参加させよう。」


「場所はやはりアルトリアの中央神殿が良いでしょう!」


「同盟国のアステアの外交官も呼んでみるか?」


「ならば此方は、他国の神官長を呼び出して見せます!」


 ・・・・・・お前等は、何にも起きなかった時の事を考えているのか? 俺は当事者だから、一生の恥になるんだぞ! 何年、経っても笑い話にもならない心の傷を俺に負わせる気か! こんな事なら、責めて神託で一言くらい欲しいな・・・・・・『この人脇役!』とか、これなら少しは笑えるだろうし、神託も聞けて面目も立つのに、


 俺が、現実に耐えられなくなって居る時に横にいたエイミが食べ物を持って来てくれた。なんていい子なんだ。お前は、こんな勘違いを突き進む大人になんかなるんじゃないぞ。


「私も参加して良いですか?」


「・・・・・・好きにすると良い。」


 エイミにまで、俺の人生最大の勘違いを見られるのか、此処は前向きに考えて、皆がこの儀式で勘違いに気付く事を祈ろう。気付いても俺は、其の状況に耐えられそうに無いんだがな。





 其処から、急遽組まれた式典並みの祝福の儀式の為に、2ヶ月もの時を掛けた。俺は、その間に出発の準備やら成人を祝いに来てくれた両親と王都で過ごしたり、騎士の称号を与えられたり、と忙しく過ごして居る内に其の時を迎えていた。辺境へは、代理として俺の祝福の儀式に参加を拒否した騎士団と貴族達が向かう事に・・・


 嫌な事が来る時は、時を早く感じるのは事実だろう。今の俺がまさに其れだ! この嫌がらせを、止める事も出来ずにただ大きくしてしまったこの『魅力』の能力が最近更に憎くなった。


「其れではレオン・アーキスは大神官の前で目を瞑り神に祈りを捧げて光を受け入れなさい。」


 偉そうに取り仕切るハースレイの奴が、最近伸ばしているちょび髭を毟ってやりたい衝動を抑えて、無駄に豪華な建物のホール中央の天井がガラス張りになった場所の真下で大神官の前に立ち目を瞑る。


「この者の行く道に、光有らん事を願い此処に神の光を・・・」


 おいおい、そんなに長い前置きなんか要らない筈だろう! 何を、威厳出そうと前置きでそんなに語ってんだよ! 田舎の祝福なんか数分で終わらせて金だけ持って直ぐに帰ってるだろうがお前等は!!!


「では・・・『我の願う者に祝福を・・・』」


 ああ、これでこの中央神殿に集まった貴族に商人と騎士団の実力者や他国の外交官に王族の前で、恥を晒すのか・・・・・・それにしても、なんて数を呼んでいるんだ! これでは、俺の笑い話が世界中に広まるでは、


『我の願いに応え遠き所より・・・』


「え?」


「な! この様な神託は、今までに聞いた事が、」


「大神官様! お静かに!」


 なんか、聞いた事のある声だと思えば、あの部屋の声だけの存在の声ではないか! あいつ、まさかこの状況を楽しんで・・・・・・不味い!!!





『汝は我の遣した偉大なる光り輝く勇者なり!・・・・・・どうよ、こんなの?』


「「「おおおおおお!!!!!!」」」


 ・・・・・・あいつ、やりやがった。然も最後の一言は、都合よく周りの連中の誰もが聞いていなかった。

本来は此処までの話だったのでストックが無いのですがまだ続かせて頂きます。


其の前に違う人の視点からも書こうと考えています。

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[良い点] 神様のノリが予想以上で好きだw
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