俺は冴えないスーツの男?
其の他の転生者が出て来ます。性格に難有りの転生者達・・・事故を起こして悪びれない学生をイメージしたらこんな事に・・・
王都から一大国家事業の旅に出た俺は能力の限界を超える事に成功した!・・・別に強くなった訳じゃないが少しも成長を感じないよりは嬉しい事実だ。王都を出てから多くの人に会ったんだが其のお陰か才能を曖昧に感じ取っていた俺の能力は曖昧さが無くなり更にその人が剣士に向いているか確認すれば大体わかるようになった。このお陰で探したい職業を考えて人を見ていけば見つかると言う優れた能力へと成長したのだ!
まあ、だからどうしたと言われれば其れだけの能力だと言うしかないんだが・・・
そんな能力の成長にテンションを上げて訓練を能力の成長を視野に入れた物に切り替えた。より集中する様に!より人を観察する様に!其の訓練の一環で各地を回った時に子供達を見て回り其の両親に
「この子は剣士になればきっと名を残すでしょう。」
「弟さんの方が確かに商人に向いていますが、お兄さんの方は将来文官として大成するかもしれません。」
「この子の得意魔法は火よりも水です。其れと風を覚えるといいと思います。」
こんな事を偉そうに言うガキを普通は胡散臭い目で見るだろう?なのに皆して其れに喜んで従うからこれを利用して将来の勇者パーティを育成しようと考えたんだ。向き不向きを伝えるだけで成果が有るから続けたら話が変な方に進んでしまって困った事になったんだけどな。
「養子が欲しいんですか?・・・俺の知り合いにそんな子供は居ませんよ。」
「ああ、そうじゃ無くてですね。この旅の中で優秀な『騎士』になりそうな子供を捜して欲しいのです。・・・私の妻は身体を壊してから子供が出来ないのですが其れに責任を感じているみたいで・・・」
ルーゲルさんの頼みだから叶えてあげたいけど・・・この人も40代だから子供が居ないと不安だろう。だけど其れ程の才能を持つ子供はそこそこ居るんだ。ハッキリ言うと小さい子なら半分以上が其れに該当してしまう。
「どんな子供が言いのですか?性格とか性別に・・・色々有りますけど。」
「出来れば・・・いや、男の子ですかね。其れと騎士として立派な心を持っていれば尚さら良いのですが・・・」
男で力よりも心・・・精神が大事となるとそう難しくないから簡単に見つかる。小さい子ほど精神は鍛えられるからある程度才能が有れば問題無いだろう。
そう考えて行動した俺は行く先々で其れに該当する子供を捜した。これが意外に難しい事に後になって気付いたんだけど、精神の強い子は両親が中々手放さないんだ。そう言う子ほど家族や住んでる場所を護る気持ちも強い様で中々苦労した。
そんな時に調査団に一人の子供が盗みを働いて捕まった。其れまでに大人の騎士を相手に暴れ回り梃子摺らせたから騎士達がかなり怒っている。だが其の子はそんなに悪そうな子供でもない事が俺の能力が告げていたので話を聞く事に・・・
「・・・俺の母ちゃんが死にそうで薬を買う金もねーから、ここの荷物をあされば金になるような物が有ると思って・・・俺は殺してくれても良いからその代わり母ちゃんには知らせないでくれ!都合が良いのもわかってるんだ・・・でも暴れる事しか出来ない俺を育ててくれた母ちゃんには・・・」
其の話を聞いて其れでも許せないから領主に突き出そうと騒ぐ一団を押さえて其の子供の家に向かう事にした。向かう途中の子供は騎士に捕まって身動きも出来ないまま泣いていた。そして其れを見た子供の知り合いであろう一人の青年が駆け寄って来て俺達を見て子供が何かしたと思って大声を上げた。
「お前!一体何してたんだ!お前の母ちゃんが凄く苦しんでいる時に!!!すいません騎士様そいつが何かしでかしましたか?」
一刻を争うのか慌てていた青年は俺達にあたふたと状況を説明してきた。・・・正直わかりにくくて仕方なかったから子供の家に急ぐと子供の母親が苦しんでいた。
「母ちゃん!!!」
騎士に子供を離してやる様に頼んで子供と母親の最後の時を邪魔しない様に外で待機していたらルーゲルさんが話しかけて来た。
「・・・あの子供はどうしますか?突き出す積りならここまでしなくとも・・・」
「気付いているんでしょう?あの子には力と心が有ります。今から育てれば立派な騎士になると思いますよ。」
間違いじゃない。盗みを働いたがその時の手際は素人だったし、俺の能力は確かに高い才能を確認している。ただ剣よりも俺と同じで槍や戦斧に才能が有り其の上簡単な魔法なら使える事もわかった。これを伝えるとルーゲルさんはしばらく考え込んで髭を弄っていた。・・・この仕草を良く見るから癖なんだろうか?
其れからその村を出る時までちょくちょくとその子供の元に通うルーゲルさんを見ていたから気に入ったのかもしれない。出発する時には荷物持ちとしてただ働きをする為に付いてきていたが、皆はルーゲルさんが養子にするのを知っていたから何も言わなかった。
「宜しくお願いしますレオン様!俺はアルゴって言います。」
「うん、宜しくねー。」
訓練後に元気に挨拶してくるアルゴは母親が死んだ時の落ち込みから漸く立ち直った様だったが少し痩せていた。だが元気に荷物持ちとして罪を償うと張り切っている。そして其の時に聞かれたんだが
「レオン様は何をする人なんですか?みんなは凄い人としか教えてくれなくて・・・俺にはいまいちわかりません。」
こんな反応久し振りだ!もしかしたらアルゴには俺の能力が効かないのかもしれない。ここは確りと説明するのがいいだろう!
「偉くないよ。其れから皆が勘違いしているんだ。考えてもみろよ・・・12歳のガキがこの調査団の責任者な訳ないだろう?何時も勘違いされているから皆も訂正するのに疲れたんだよ。」
「えっそうなんですか!この前は騎士様達に指示を出していましたよね?」
「そうなんだよ!可笑しいだろ!俺に指示を求めるのは間違いなんだからアルゴも其処は理解しておくといいよ。俺は雑用係だからな!」
「そうなんですか?でもレオン様が言うならそうなんですね!わかりました。」
なんて純粋な奴!きっと純粋な奴にはこの能力『魅力』は効果が無いんだ!今理解した。・・・あれ、そうするとセイレーンとラミアは純粋じゃないのか?・・・この考えは危険だから今しばらくは様子を見るか。
因みにアルゴが俺を慕うのには訳がある。一度槍の訓練をしているのを見ていたアルゴと先程試合をしたんだが其の時に訓練期間から有利な俺が当然勝った。其れでどうやら俺の事を認めてくれた様でちょくちょく話をしたりトランプをしたり遊んでいる。・・・いい弟分が出来てこんな旅も悪くないと思えたな。
何だろうこの幸せに涙が出てきそうだ・・・精神年齢が高いから涙脆いのかな?
アステア王国 転生者その1
俺はあの白い部屋での出来事から12年経った今でも後悔している。あの時何故必要以上に力を求めたのか?何故もっと必要な能力を考えなかったのかと・・・
今の名前は『テオ・ルセルド』・・・これでも貴族の三男だ。だが俺は他の兄弟よりも容姿に優れおまけに力は比べるまでも無く俺の方が強い。其の上俺には元の世界の知識があるからこんな世界は余裕だと考えていた。だが現実は甘くなかった。魔力無限も魔法を全部使えても伝説級の武器を持っていても使い所が無いのでは意味が無い。
俺の両親に領民から搾り取る税を下げる様に言ったら聞き入れて貰えず。この世界ではやっていない新しい農法を言っても信じて貰えない。だが俺はまだましな方だろう・・・他の友達二人は何処に居るかも知らないが一人だけへまをした奴が居る。
俺と同じ国に居た『ベーン』とか言う農民は其の力と思想を問題視されて神殿から異端者扱いを受けたらしい。間違いなくあの部屋に居た冴えないスーツの男だ!馬鹿が考え無しに動くから問題を起こすんだ。其の所為で貴重な戦力が一つ減った事を悩んでいたが此処で転生者らしい行動をした奴が現れた。
『トランプ』に『将棋』と元の世界の遊びを再現し大金を手に入れた『アルトリアの神童レオン・アーキス』は間違い無く俺の友達の一人だ!どちらかまでは判断出来ないが離れたこの国にまで噂が聞こえて来ているから間違いではないだろう。情報を交換したいがレオンの話になるとアルトリアの商人も神殿の神官達も口が堅くなる。
厄介な事だが一人は確実に戦力となるとわかっただけでも良しとしよう。さて、これから街に繰り出して遊んで来ようかな?魔物が増えるまで時間はまだ有るんだから今の内に遊んで置くのが大事だ。・・・この世界の名前だとレオンか、言い慣れないがこれも転生者ならではの悩みだろう。
「レオンも今の内に遊んで置けよ。魔王が出て来たら遊んでられないからな。」
空に語りかける俺はまだこの世界で会っていない友達の事を考える。そうして馬車を用意させて街に向かえば何時もの店でお気に入りの俺の女に手を出している男が居た。許せない事だから殴り飛ばしてやったらお気に入りにしてやっていた俺の女が其の男を庇いやがった!
「お待ち下さいテオ様!この人はただのお客様なんです。ですから乱暴だけは・・・」
「・・・ちっ、もういいよ。お前をお気に入りにしてやったのに其の態度が気に入らない。もう此処には来ないからな。」
「そ、そんな!お待ち下さいテオ様!!!」
駆け寄ってきた店主の男が色々と説明してくるがうんざりだ!お前等平民や農民と俺が一緒だと思うなよ。俺は使命を与えられた真の勇者なんだからな!
そのまま店主も殴り飛ばして最近出来たと言う店に向かう。其の移動中に考えたのは『勇者』の事だ。この世界の勇者は数が多いから俺が目立たない。・・・かつては『アステアの大魔導師』に『なるだろう』と言われた俺が最近出て来た二歳のガキ共の為に噂も隠れてしまった。
何も知らない勇者共が今に見ていろよ。魔王を倒して誰が真の勇者か思い知らせてやる!
アステア王国 転生者その2
俺は間違って居たのだろうか・・・住んでいた村を追い出され行き場の無い俺は名前も知らない街のスラムで日々残飯を漁り生活している。俺の新しい名前『ベーン』はこの国で異端者の認定を受けたから名乗れない。だから名乗る時があれば偽名を使っている。
始まりは村で良かれと思い立ち入りを禁止されていた森で魔物を退治した事だ。俺の剣の斬撃と身体能力に掛かれば簡単に倒せた。しかし魔物の素材は高く売れるからと考えて持ち帰ったら大人達が俺を非難した。其の時は気付かなかったが血の臭いに同族を殺されたと気付いた魔物達が村に仕返しに攻めて来たのだ。
俺は必死に守ったが数が多くて村の畑や戦っていた男達に死人まで出た。・・・其の内の一人は俺の斬撃で巻き込まれて死んだらしく神官が葬儀に来た時に俺を非難した。
「君の力は神から与えられた物です。其の使い方を間違ってはいけません。今回は村を護って手に入れた魔物の素材を神殿と領主に差し出したから許されましたが・・・聞いていますか?」
腹が立った。・・・其の時は何でも出来ると思っていたから其れに言い返した。其れがあんな事になるなんて・・・
「神殿の神官なんかに何がわかる!お前等も2年前に失敗をしたじゃないか。其れともお前等は良くて俺は駄目なのか?思い上がるな!」
「っ!・・・いいでしょう。其処まで言うなら覚悟がある様だから神官の権利でこの場で君を異端者としよう。罪は禁じられた場所に入り込み魔物を刺激した事と村人の殺害に神殿と神官の侮辱だ!まあ、領主には私から伝えて置くから準備が出来たら村を出るといい。・・・誰か反対する者はいますか?反対しなければ神殿に差し出す魔物の素材は今回はお返ししましょう。」
そして其の時の村の皆の目は俺は忘れないだろう。・・・普段は神官の悪口を言っている皆が俺をとても冷たい目で睨んだあの日から数ヶ月・・・今の俺は残飯を漁る浮浪者だ。
『お待ち下さいテオ様!この人はただのお客様なんです。ですから乱暴だけは・・・』
『・・・ちっ、もういいよ。お前をお気に入りにしてやったのに其の態度が気に入らない。もう此処には来ないからな。』
『そ、そんな!お待ち下さいテオ様!!!』
其の時に聞こえた方を見ると子供が大人を殴り飛ばしたのか男を女が庇っていた。・・・あの力は異様だな。俺と同じくらい・・・其れならあいつは転生者か?
考えたが俺はあの時最初に欲しい力を手に入れたから他二人の友達の能力は知らない。だがあんな酷い奴は俺の友達じゃないからあの時一緒にいたスーツ姿の男だろう。・・・貴族に産まれた運の良い奴ってだけで遊んで暮らしやがって!
どちらかは知らないが一人だけ友達の居場所は突き止めているんだ。『アルトリアの神童』・・・確かレオンとか言ったかな?そいつと合流出来れば今の状態から救われるんだ。
偉そうな貴族の子供の歩き去る背中を見ながら俺は誓う。・・・お前なんか俺が簡単に殺してやるから覚悟して置けよ。
オセーン帝国 転生者その3
俺は今この帝国でかなりの地位に居る。元から皇帝の子供で地位が有ったが其処に来て俺の母が同じ妹が『勇者』の神託を受けたのだ。其れを利用して婚姻を餌に貴族共を纏め上げて一大勢力になった派閥のリーダーとなれば・・・後は好き放題出来る。この世界の神殿の勢力は厄介だが勇者を抱えた此方には迂闊に手出し出来ないだろう。
他の二人の居場所を探して『転生者』で世界を纏めるのもいいかも知れない。俺の新しい名前『ユーステア・オセーン』の名もこの世界に広がっているから向こうが先に気付くかな?
俺以外で怪しいのは『アルトリアのレオン』くらいか?あいつも頑張っているのか最近よく耳にする。俺の事も気付いているだろうから向こうから連絡を寄越せばいいのに・・・アルトリアの商人はレオンの事は其の情報から居場所まで話そうとしない。神殿の神官も其の事にはあまり触れない様に話しているから一度、
「神官のお前から見てアルトリアのレオンとこの俺を比べたらどちらが優れている?」
「・・・私は会った事がありませんから答えても意味がありませんが・・・ユーステア様かと・・・。気にする程の人物ではないと思いますが?」
そして商人に至っては
「もしもレオンとやらの情報が有れば高く買うぞ。有名なそいつとお前等は仲が良いのであろう?」
「私の口からは何とも・・・仲が良いのも新しい商品を扱わせて貰って居るのがアルトリアの商人だけですから誰かが勝手に思い込んだのでしょう。最近多いのですよ他の国の商人にもよく『儲け過ぎ!』だと言われて困っております。」
皆があいつを庇う様に振舞うのは訳があるのか?俺の能力『魅惑』を使っても口を割らない商人や神官達からして相当重要なのは確かだろう。俺は他の二人と違って戦う力を求めていない。必要なのは人を使う事だからな。其の為にこの容姿と人を惑わす『魅惑』で口を割らないのは其れが其の者にとってかなり重要だからだろう。
他の能力では口を割らせられない。人を虜にする『魅了』では俺の貞操が危険だし、『テレポート』でアルトリアまで移動出来ない。精々移動が10mがいい所の能力では馬の方が便利だ。最後の『速度上昇』これも周りが遅くなる中を俺だけが自由に・・・まあ、多少ゆっくりになるが動き回れる能力だから無理だろう。
アルトリアと接触するのも不味いな。アルトリアの隣国を内乱状態にしたのが何時かは知られるだろうし、俺は向こうからしたら皇子の一人に過ぎない。切欠さえあれば何とかなるんだが神官も商人も俺の言伝を伝えるとは明言しない。精々お会い出来たら伝えると言うくらいだ。・・・結構な不敬じゃないのか?
其れよりも早く他国の力を落として攻める準備をしないとな。時間は有るんだから慌てなくていい。この国を俺の手でもっと!もっと!大きくしてやる。俺は勇者を超えた男になるんだ!
アルトリア王国 転生者その4
移動中の馬車の中で休憩中の騎士達とアルゴを前にして前の世界でコツコツと練習していたトランプを使った宴会芸を披露する。見慣れていないのか魔法を使ったとか言われて不思議がられたりと反応が嬉しくて度々披露しているんだが・・・どうしよう!本当に楽しい!
「もう一回お願いします!次こそは外して見せますから!」
「何度やっても必ず当たるんだよ。だから手品なのさ!」
「卑怯ですよ。仕掛けを教えてくださいよ。これを今度の村でも女の子にまた一人だけ披露して気を引こうなんて条約違反でしょう?」
夜のお店でも大活躍の手品だしな・・・でも条約は関係ないと思う。あれはお前等騎士だけの問題だ!散々遊びまわる騎士達にも人気には差がある。顔の良いのと家柄が良い騎士は大人気でそれ以外の多くの騎士達が反旗を翻した時に取り決められたのが条約だ。
一人で複数に手を出さない。各村や町では一人まで、で都市になると二人まで許されるんだったかな?
この条約の内容も酷いだろうと突っ込んでやりたいが俺も人の事は言えないから黙っている。其れに相手をしている女性もプロだから問題ないだろう。
「仕方ないな・・・いいかこの手品は最初から目当てのカードを相手に引かせるんだ。」
「「「更に卑怯じゃないですか!」」」
「卑怯じゃない!これが手品なんだよ。相手の気を引き付けておいて見てない所でこうして・・・ほら。」
こうやってのんびりと過ごせて幸せだが何時かは魔王が攻めてくる。・・・この中の騎士達も戦場に出て行くのだろうか。付き合いのある人や知り合いが居なくなるのは寂しいから俺もそこそこ頑張ろうと最近考えている。これはとても贅沢な計画だろう。
自分にとても都合の良い計画を俺は考えつつ今日も騎士や旅をする仲間と共に騒いで楽しく旅をする。
普通に勘違いされたレオンはこの先彼等にそのまま勘違いをされる予定です。訂正しても勘違いは改まらない。厄介ですよね。