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父と子と……いいサブタイトルだが、中身が……

 魔王領への侵攻を前に、城内は異様な雰囲気に包まれている。侵攻前の緊張ではないのが問題だ。何故なら……東方で関係を持った未亡人との間にできた子供が俺の前に現れたからだ! 城の広間で面会した俺や家族たち……何故だろう……みんなの顔が怖くて見れない。


 連れてきた犯人は『ポチの息子であるジョン』。何でも、俺の弱点を探して東方にまで向かった行動派の駄馬だ。帰ってきてすぐに俺を脅してきた糞駄馬だが、父親であるポチをはじめ、オスたちが何処かへ逃げ出しているのを良い事にポチのハーレムに手を出しに行ってここにはいない。


 現れた『シシオ』と名乗る俺の息子は、すぐに俺の前に連れてこられた。普通なら事実確認をしてからが正しい対応なのだが、俺の息子は俺にそっくりで、黒髪をした俺だ。


「あ、あの父上?」


 心配そうに俺の前に立つシシオは、ギルドの幹部である偵察専門の古株三人に囲まれている。この三人は、シシオが現れてから何かとシシオの世話を焼いている。何でも恩返しがどうとか……止めてくれ! 外で出来た子供に周りが期待するとリィーネがどんな反応をするか分からないじゃないか!!!


 このピンクの魔王は、邪魔と判断したら本当に消すからな!


「……で、旦那様? これは一体どういう事なのでしょうか?」


 顔を逸らし続ける事も限界で、ついに家族の前で全てを告白した……折角、娘とも和解したばかりなのに、ユリアナとエリスが冷たい視線を向けて来るし、三姉妹であるセイレーンにラミアとエイミは


「あの時ですね……やっぱり駄馬を殺しますか?」

「でもお姉ちゃん、あの子は父にそっくりだね。……可愛いな」

「私も子供欲しいな」


 ゆ、許してくれ! 本当に出来心だったんだ。優しかった飲み屋の未亡人に心を奪われて、そのまま関係をズルズルと続けたら出来たんだよ! まさか来るとは思っていなかったのに……


「はぁ……仕方ありませんね。『私たち』は忙しいですから、面倒を見るのは旦那様がしてくださいね」


 そう言って解散した緊急家族会議は、俺の予想を超えて平和に終わった。


「やっぱりご迷惑でしたか父上」


「そんな事ないぞ! だが……時期が悪いのも事実かな。もうすぐ忙しくなるから、お前はその前に帰った方が良いな」


「えっ! シシオ様を返してしまうんですか」

「何でですか! 次期当主として育てれば……」

「残念」


 古株共が声を上げるが無視してシシオを連れて城内を案内した。そこで俺はシシオが持ってきた手紙を受け取る。何でも母が持たせた俺宛の手紙なんだとか。内容は


『シシオに父親という物を教えて下さい』


 そういう事が書かれた内容だった。父親……俺も前世の父親を思い出してみたが、朝早くから遅くまで働いてろくに会話もしていなかった。休みの日も家で寝ているイメージしか思い浮かばない。それでも……一度だけ魚釣りに連れて行ってもらった事がある。


 特に会話をした訳でもないが、楽しかったな……



「と、いう訳で釣りに出かける事にした」


「何が、と、いう訳ですか……出かけるのは構いませんが、怪我だけはさせないようにしてくださいね。もしかしたら次期当主になるかも知れませんから」


 夜になり、リィーネに今後の予定を話したら呆れられた。しかし、意外な事にシシオの事を受け入れている。次期当主にシシオがなってもいいと考えているようだ。


「その時は絶対にユリアナかマリアを正妻にします。エリアーヌのエリスにだけは、絶対に渡しませんからね」


 リィーネも丸くなったと思ったが、やっぱり魔王だった。シシオを確保する気満々だ。


「それよりも! 私も早く男の子が欲しいんです旦那様」


 いきなり俺の手を引いて寝室に向かおうとするリィーネに断りを入れようと思う俺。今日は久しぶりに父親の事を思い出して、そんな気分じゃないんだ。しかし、次第に周りをメイドたちに囲まれて逃げ道を塞がれて……


「え……いや、今日は疲れていてそんな気分じゃ……待って! 本当に気分じゃないんだ! お前は男の繊細な気持ちを大切にしようとか思わないのか!」



 そして次の日、俺はシシオを連れてユリアナとエリスと訪れた湖に来ている。最近来たばかりの湖だが、魔物がいなくなって安全は確認済みだし、隠れるようについてきた護衛たちもいるから大丈夫だ。


 俺とシシオは、駄馬の息子であるジョンに乗って湖に着くとすぐに釣りを開始した。だが……やっぱり何を話していいか分からない! もしかしたら俺の親父もこんな気分だったのか? 何だこの気まずさは!!!


『それにしても親父は兎も角、兄弟たちもいないのが不思議だな。ハーレムをかけて戦う準備をしてきたのに、全部無駄になった』


 ジョンがいう事は、確かに俺も不思議に思っていた。シシオとジョンが来てからという物、駄馬をはじめとしたオスたちが逃げ出したのだ。何かを恐れるにしても、このジョンを恐れての行動で無いのは確かだ。


『俺の凄さに恐れをなしたか……俺以外のオスは屑ばかりだな!』


「本当にお前を含めて屑ばかりだよ。それよりもシシオ……こいつと一緒で苦労するだろう?」


 話題が思いつかないから適当に駄馬の話題を振るが


「い、いえ、ジョンには色々と教えられて助かっています。何でも神馬の血を引く気高い一族らしく、遠くからもジョンの種が欲しいと家に来る客も多くて……種が欲しいというのはどういう事なんでしょう? 母上もあまり詳しく教えてくれないので、父上に聞こうと思っていました」


 ……どうも駄馬の一族は、俺を困らせる事まで遺伝しているようだ。本当に害獣として駆除した方が、世界平和の為になる気がする。


「大きくなったら教えてやる。母親も元気そうで何よりだな……糸引いてるぞ」


「は、ふぁい!」


 慌てて釣竿を引いたシシオ。そんな感じでシシオとの時間は過ぎていった。……本当にこんな対応でよかったのだろうか? 俺も、もう少し親父と話をしておけば良かったな。



 そして数週間後のシシオとの別れの時が来る。王都の飛行場まで送る事が出来ないので、城門の前で見送ろうとしたのだが……泣いて別れを惜しむ娘と、励ましの言葉をかけるギルドメンバーに騎士団の団員たち。それに領民が集まり、盛大な見送りとなっていた。


 俺も実家を出る時は必要以上に見送る人が多くて驚いたのを思い出す。それと同時に、シシオに懐く娘たちを見て、シシオに対して軽く嫉妬してしまった。


「随分と仲良くなったな」


「はい父上! 二人とも仲良しです」


 元気に応えるシシオに対し、娘の反応が怖い。


「あっちに行っても私の事忘れたらダメだからね!」


「変な女に引っかかったら許さないからね!」


 ユリアナにエリスも、シシオとこの数週間おままごとをしてすっかり仲良しなのは良い事だが、それがシシオが演じる夫を取り合う妻と愛人のおままごととか……エリアーヌに昼ドラを教えた自分が憎い。


 それにこっちともお別れになるのだが、なんとジョンも東方へ戻ると言いだした。


『よくよく考えたら、親父のハーレムを奪うより自分のハーレムを作る事にした。それに向こうには、俺のハーレムも出来てきたしな』


「そしたら何か? お前は俺を困らせに来ただけか? この駄馬が!!! 殺してやる!!!」


 俺がハルバードを取り出して振り回すと、近くに居たリュウが止めに入る。


「ちょっ! レオンさん止めて下さいよ! 折角のお別れが台無しじゃないですか。ここはシシオ君の為に押さえて下さいよ。……みっともないなぁ」


「お前も一言多いんだよ!」


 一言多いリュウの頭に拳を振り下ろす。


「いっだ!!! ……レオンさんからシシオ君みたいないい子が生まれたのは奇跡ですね」


 最近反抗的になったリュウを無視して、今度はシシオに向き直る。


「まぁ、あれだ……色々あったが、また会う時まで元気にしてろ」


「はい」


 そうして別れた俺とシシオは、二度と出会う事は無かった。

 久しぶりに更新してみました。最後に向けて、ここからは外伝的な物も無しにしていこうと思います。


 久しぶり過ぎて脇役勇者のノリを忘れそう……

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― 新着の感想 ―
[一言] 全体的に主人公がカス過ぎるストーリーも展開が意味不、途中で嫌気がさす。
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