リュウ子爵のお悩み相談
平民と神殿の反乱から三年の歳月が流れた。未だに魔王軍との先端は開かれていない……が!
もしも、選択しが幾つもあったして、それ選んで進んできた俺の選択は間違いであったと誰が決めるのだろうか……確かに失敗も多いが、それでも俺の選んできた道だ! 俺は全てを受け入れる……そう考えていたんだよ! 本当だよ! でもさ……
「父、きあい!」
「何でだよぉぉぉ!!!」
俺の可愛い子供達は、どうしてか俺の事を嫌う! 俺は床に両手をついてこの理不尽に嘆いていたら……
「……」
二人目の子供もそんな俺から目を逸らした。リィーネの子供である『ユリアナ』とエリアーヌの子供である『エリス』。二人の女児に恵まれ、今もリィーネのお腹には新しい子供が……このままだと、その子も俺の事を嫌いになるのだろうか?
「まぁまぁ、ユリアナ、旦那様に何て口をきくのですか! メッ!」
そしてリィーネが、ユリアナの額を人差し指で軽く突く。しかし流石はアルトリアの魔女の子供……そのままリィーネの指に噛みついた。……リィーネの人差し指になりたい。
「キャーーー!!! ユリアナ様可愛い!!!」
そしてそれを眺めているスタイリストのオカマが、くねくねと踊りだすが……魔女は、笑顔で躾部屋へユリアナを連行した。躾部屋……そこは俺の立ち入りを禁止している屋敷で謎の部屋だ。
そんな連行されるユリアナは、恐れて抱えられたエリーサさんから逃れようともがくが……無論逃げられい! そしてエリスはそんなユリアナを悲しそうに見つめるのだ。
「な、何が起こるんだ?」
この際エリスに聞いてみよう、と声をかけるが……
「……」
また顔を逸らされた。俺は今までに、これ程『魅力』の能力の効果があればいいのに、と思った事は無かった。畜生……本当に俺の能力は役に立たないな!
『それでまた俺の所に来たのか? お前は本当に馬鹿だな』
そして毎度の事だが、相談相手にポチのいる馬小屋に来ていた。……相談相手がポチとか、俺は末期かも知れない。だが、こんな時に限って役に立ちそうな連中は忙しいのだ。それに、エンテには近付きにくい。この前、エンテの子供達と面会したのだが……
五人の内、三人が女の子! そしてそんな時ばかり発動する俺の魅力に
「将来の夢はレオン様のお嫁さん!」
その発言を聞いたエンテの悲しそうな顔と言ったら……本当に申し訳なかった。
『それで、子供に好かれるにはどうすればいいかだったな?』
馬に馬鹿呼ばわりされた俺は、駄馬の意見を聞こうとする。しかし、本音では期待していない。俺の期待しているのは、反面教師としての駄馬の意見だ。こいつは子供に殺意を抱かせるほど嫌われているからな……
『基本的に、娘以外は一人立ちしたら敵だから興味ないな。娘はメスに任せて放任主義だ……でも最近特にいいメスに育ったと……』
駄目な馬であるポチの意見は、反面教師としても役に立たなかった。
「一人立ちって、一人前って事か?」
『ちげーよ! 産まれてから立ち上がるまでだよ!』
「早すぎるわ! 馬なんか産まれてすぐに立ち上がろうとするだろうが! 産まれて数時間で敵扱いとか、大人げないにもほどがあるわ!」
『はぁ? 俺のガキ達は数分で立ち上がるぜ。しかもジョンの糞ガキは、生れ落ちると同時に着地しやがった……あいつは可愛げがなさすぎる!!!』
ジョン? あれ……正夢になったのかな? あの駄馬にそっくりな子供が本当に実在するなんて……でも見た事ないぞ?
「どこに居るんだジョンは?」
『……さぁ? 興味ないし』
こいつは本当に最低だ!
「さぁ、悩みを話しなさい……この『リュウ子爵』に!!!」
ついに来た! 俺の時代がついに来たんだ。三年前の反乱鎮圧の功績で、男爵の地位から子爵と言うその上の地位を与えられた俺! 未だに家名は決められないが、それよりもこの事実を喜んだ!
それで調子に乗っていたら……ミーナさんのいなくなった神殿での仕事を押し付けられた。本当にレオンさんは大人げないよね。自分の子供に嫌われてるから、最近は八つ当たりが酷いんだ。
そして今日も、悩みを抱えた人物を前に決まり文句を言う訳だけど……
「娘が俺の事を嫌うんだ。……どうしたら好かれるだろうか?」
おいおい……しっかりしろよ領主様! お前の家庭の事なんか知るかよ!
「……取り合えず、お菓子でも渡せばいいんではないでしょうか」
投げやりに答えると、レオンさんは真面目な顔で俺を睨んできた。だから何で俺に相談するんだよ! ツックンにでも相談しなよ!
「フザケルナ! 俺は真剣なんだ。お菓子も服も花束もすでに試したわ! それでも俺の事を……どうしたらいいんだ」
そのまま俺の事を使えない奴とか、馬鹿リュウとか言って去って行った。何しに来たんだあの人!
そして次の相談者が現れる。……て、言うかツックン?
『はぁ、俺はどうしたらいいんだ? なぁ下僕、どうしたらいいと思う?』
「ツックン? 先ずは相談内容を話してよ……それからこれでも一応は子爵だから、下僕とか止めてよ」
そんな俺の発言に、ツックンは無視して話し出す。
『ケンタウルスって知ってるか? 上半身は人間、下半身は馬の魔物だ。それで相談だが……俺はケンタウルスと交尾できるんだろうか?』
……? 何言ってんのこの馬?
「すればいいじゃん」
『馬鹿かお前は!』
……馬であるツックンに馬鹿とか言われる俺って……相当に落ち込みそうになりながら、俺はツックンの話を聞く。
『いいか、上半身は人間なんだぞ! ……興奮できるか? お前ら風に言えば、体は最高でも顔が馬だったら興奮できるかって言ってんだよ!!!』
無理だね。
「なら、諦めたらいいじゃない」
『……チッ! 本当に役に立たない奴だな。これなら下僕一号の方がましだったな』
……なら帰れよ。
更に悩む人は俺の所に訪れる。……今度はエンテさんだ。ギルドメンバーの中でも仕事のできる凄腕の魔法使いであり、幹部でもある。周りから見れば勝ち組の人……でも家庭では……
「ああ、僕はなんて事をしたんだ!」
「お、落ち着いて! 話は聞きますから、先ずは内容を話して下さい」
「そ、そうだね……実は、先週の仕事帰りに仲間に誘われて『お姉さんのいる店』に行ってしまったんだ」
……? それがどうしたんだ? レオンさんなんか毎日遊び歩いているよ。ツックンを使って色んな都市に出かけて、遊び歩いているというのに……この人は、店に行ったからなんだと言うんだ?
「それで……」
「いや、それだけだけど?」
それだけで悩んでんのこの人!
「それくらいいいじゃないですか……」
俺は、簡単にこんな発言をして後悔した。いきなり能面のように無表情になり、俺に向かって色々と説教を!!!
「君は結婚して三年でまだ理解していないのかい? それともメッサさんが素晴らしいのかな? いいかい……僕の家では女遊びがばれたら剣の錆びになってしまうんだよ。それと同じようにそんなお店に通おうものなら……ああ恐ろしい!!!」
「ちょ! ちょっと!!! 落ち着いて下さいよエンテさん!」
「つい、気が緩んであんな店に……少し酔っていたのが不味かったんだ! いつもなら、鬼のようなあいつの顔が頭の片隅に浮かぶのに……もう、どうしたらいいのか分からないよ……レオン様には会い難いし……」
そのまま悩みながら帰ったエンテさん……同じ妻帯者の会のメンバーだが、俺にはあの人の気持ちが分からない。……怒られるなんてご褒美じゃん。
そして次の相談者……エリアーヌさんだった。この人は、ローブをまとって神殿まで来た。何かばれたらいけない相談……まさか浮気!!
「じ、実は相談がありまして……」
「い、いけませんよエリアーヌさん! 俺には妻も子もいるんですから!」
「はぁ……それで相談なのですが、レオン様との夜の生活が普通なのか私にはいまいち分からなくて……この前もリィーネ様とその会話になったんですが、話がかみ合わなくて……」
何だ。浮気とか、俺への告白じゃないのか……それよりも、俺に自分の夜の生活を話すなんて……この人も何処かズレてるよね。
「おねだりとか、前から後ろからとか目隠しに……どうされましたリュウ殿?」
俺は鼻を押さえて鼻血を抑え込んだ。何してんだよレオンさん! こんな無垢なエリアーヌさんに、なんてアブノーマルなプレイを!!! 想像したら興奮してきたよ。目隠ししたエリアーヌさんに、おねだりとかされたら……もう最高でしょう!!!
「だ、大丈夫です。それから相談の件ですが、愛の形は人それぞれ……問題ないと思います」
「そうですか、よかった。これからもレオン様にはおねだりしますね」
とてもいい笑顔で帰って行ったエリアーヌさん。姫勇者としてその反応は良いのかな? 男からしたら最高ではあるんだけどね。
そして今日も相談を終えた俺は、仕事をした実感と共に虚無感が襲う……
「俺はこんな事をしていていいのかな?」
なんだか貴族になっても、レオンさんやリィーネさんに騙されている気が……きっと気のせいだよね!
約束を破って数年進まなかったので、オマケとして仕上げました。かなり急いだので、話的に進展もありません。
少しエロくしたけど、どうかな?