心が折れました。
最近は残業などであまり進みません。作品も停滞気味……意味のない残業なんかさせないでよ!
愚痴でしたすみません。そんな自分の作品ですが、楽しんで貰えれば幸いです。
戦場に広がる静寂……神殿と平民の反乱軍が、豪華な服を着ていた爺さんの言葉に驚いている。エクスカリバーの剣先を俺に向けて、余裕の表情でこちらを見ているのだ。爺さんの言葉……
『わしに勝ったら神殿は俺に降伏する』
……色々と突っ込み所が満載だ。お前達はあれかな? いったい誰と戦っていると思っているんだ? 俺、個人と戦っていると勘違いしているんじゃないよ! 考えろ! 本当に少しでいいから自分達の立場を考えろ!
そんなんだから、空気も読めないわがまま坊主なんだよ!
「……貴様は相手が誰か分かっていないようだな」
「ほう、随分と余裕だな……わし相手にそこまでの態度をとるか」
空気を読めない爺さんが、デカイ声を出し続ける。このまま距離を取っていると危険だ! そう判断した俺は、最大限のスピードで爺さんの前に移動する。
肉体を魔力で強化してのその移動は、エイミ程ではないがそこそこ早く移動できる。あの子に教えたら、今では俺を超えて別次元まで昇華している。流石は本物の勇者様だよ。
そんな俺の移動に、爺さんは驚くでもなく喜んだ。
「ほう、その移動速度といい、魔力の使い方……まぁ、最強と言われるだけはあるか」
距離を詰めて正解だった。爺さんの声の音量は、確実に下がっている。そんな中で、俺と爺さんの会話が始まる訳だが……
「楽しみだ! 今代の最強勇者が、どこまでやれるか!」
……そう言ってエクスカリバーを振りかぶってきた。駄目だこの爺さん! バトルジャンキーのようだ。振り下ろされるエクスカリバーを避ける事は簡単だったが、俺はすぐに左腕で顔をガードしてそのまま後方へ飛び退く。
ついでに爺さんの二撃目が、今まで立っていた場所を通過する。
「ちっ! 気付いたか」
「おい! いきなり目つぶしとか卑怯だろうが!」
そう、この爺さんは、エクスカリバーを片腕で振り回して、左手を空けていた。そして左手に握りしめていた砂を俺の目に投げつけてきたのだ。
武術を極めたとは、違う強さを見せつけられた気分だ。剣術も我流なのか、大振りで避ける事は簡単だが、当たればヤバイと判断できる。
それにフェイントを絡めてくるから、大振りの剣筋でも当たりそうになる事が……まぁ、無いけどね!
「卑怯? それがどうした。戦闘では勝った方が偉いとしらんのか? これだから最近の勇者は……育ちがいいのも問題だな」
言っている事は理解できるし、俺も賛同してもいい。でも、お前は神官だろうが!
「あんまり調子に乗るなよ爺さん!」
今度はこちらから連続して攻撃を繰り返す。突きに斬撃と放つが、そのどれもが不格好な剣術で払われる。そうして今度は、爺さんの攻撃が俺に迫る。……何度かの攻撃をハルバードで受け止めるが、流石は聖剣(笑)なのか、ハルバードが欠ける欠ける!
……回復アイテムのくせに、俺の武器を破壊しようとはいい度胸だ!!!
「お前の聖剣は随分と凄いな。まるで欠ける事も無ければ、切れ味が落ちる事もない……それに持っているだけで体に力がみなぎってくる!」
そう言って攻撃をしてくる爺さん。俺は受け止める事を止めて、その一撃を受け流す。
「なら返せよ。神官が泥棒とか笑えねーな」
「欲しければ奪い返せばいいだろう? それに今の所持者はわしだ……ならば、今はわしの物という事だ!!!」
横なぎに振るわれる斬撃を紙一重で避ける。そうして隙をついての俺の攻撃は、爺さんに当たるも大したダメージを与える事にはならなかった。
「硬い! なんで筋肉がそんなに硬いんだよ!」
ハルバードでの突きをものともしない爺さん。そんな爺さんは、余裕の表情を見せる。こんな奴らが未だに神殿にはゴロゴロしていると言うのか……流石は歴史ある組織と言った所か?
「貴様のさっきの移動と同じだよ。しなやかなお前の肉体強化に対して、わしのはただ単純な強化だけだ。だが、そのおかげで防御と攻撃はけた違いだがな!!!」
そのまま今度は、地面をけって土を俺に……ついでに左手からは石が投げられた。何度も言うが、卑怯過ぎる!
そのまま決定力に欠ける決闘? は、しばらく続いた。お互いに爺さんの攻撃は当たらないし、俺の攻撃はあまり効果がない。それにエクスカリバーは地味に爺さんを回復し続けている。……それさえなければ、爺さんにも勝てる気がするのに……
しかし、爺さんも焦りだした。全くといっていい程に、攻撃が当たらないのだから無理はない。それにエクスカリバーが……扱いにくいらしい。
「……強力な聖剣なのはいいが、片腕では扱いにくいな。変に魔力を放出し続けて振るうのも苦労する……この剣は『使えん』な」
「だったら返せよその『回復アイテム』……」
……俺の一言か、爺さんの使えない発言か、そのどちらもなのか……兎に角、次の瞬間に、エクスカリバーは軽い金属音と共に折れてしまった。まるで心が折れたように……
「……」
「……」
無言になる俺と爺さん。しかし何を勘違いしたのか、爺さんはエクスカリバーが折れたのを俺の所為にしてきた! いや、絶対に爺さんの方が酷い事を言ったからな!
「貴様、今のは聖剣を破壊するキーワードか何かか? 成程、対策は講じていたか……だがな、対策を講じるのが貴様だけだと思うなよ!!! 貴様の使っている歴代勇者の武具には、今は滅んだ国の魔法技術によってわしの支配下にある! 『動きを止めよ』」
爺さんが声高らかにそう言うが、俺の使っている武器にしても鎧にしても……自前の装備だ。両親からもらった純白の鎧を何で歴代勇者の武具と勘違いしているんだ?
俺が平然としているのを見て、爺さんがさらに焦る。
「な、何故平気でいられる! このキーワードには、鎧に拘束される魔法が……き、貴様まさか!!!」
「……自前です」
俺の返答に顔を引きつらせる爺さん。
「貴様は分かっているのか! あの武具には、失われた魔道の技術で精製された特殊な金属……」
爺さんの話をまとめると、凄く強くなれる武具らしい。俺は一度しか装備して戦った事はないけど、確かに効果があったような……まぁ、一度破壊したから効果はないかもね。
そんな感じで間の抜けた俺と爺さんは、無言のまま向き合う。
しかし何時までもそのままでもいられない。実際に爺さんは無手で、俺はハルバードを所持している。見た感じは俺の方が優勢だろうが、攻撃の効かない爺さんには無意味かな?
「爺さん、引き分けにしないか?」
「馬鹿め! 勇者の勝負に引き分けなど存在しない。勝つか逃げるかの二択のみ!」
……この爺さんには、勝負をしないと言う選択はないのかな? 俺としては、勝負する前に勝を決めていたいけどね。昔の人がそんな事を言っていた気がするしね。
仕方ない……卑怯だと思っていたが、これは使うしかないようだ。俺は、左腕を上げて後方にいる味方に合図を送る。それを確認した味方は、準備へと取り掛かった。そして爺さんは俺の隙をついて攻撃をしてくる。……素手で!
踏み込んできた爺さんの正拳突きは、俺の顔面の横を通過する。それに応えて爺さんの腹に蹴りを入れるが、爺さんではなく俺の方が反動で吹き飛んでしまった! つ、強過ぎるぞ爺さん! 何でエクスカリバーなんか使っていたんだよ! そのままでも十分に強いじゃないか!!!
そのまま再び戦闘を再開する俺達の後方では、味方の陣地から魔法による光が空に向けて発光を繰り返していた。
反乱軍の追撃と言う追いかけっこから解放された私『ディジー・キャンベル』は、今はアーキス侯爵の私兵と共に誘い込まれた反乱軍と対峙していた。参加したのは、キャンベル家の今後の方針のためだ。アステア、アルトリアに挟まれてきたキャンベル家は、この戦いを通して無視できない存在となったレオンを見極めようとしていた。
真に信じられるのか? それとも野心を隠しているのか……そして実力は本物か? 正直に言えば、野心を持とうが関係ない。実力があり、キャンベル家に利があれば近付いて、利が無ければ距離を取る……それだけの事だった。
しかし……目の前の光景に声が出ない。倍以上の敵を前に、高い戦意を維持するアーキス家の私兵達。昔から小競り合いのある領地に居るから分かる。兵の装備している武具の質、そしてよく訓練されている兵士達。
一番の凄さは、空を支配できる事だろう。……数多くのペガサスに、一匹とは言えドラゴンとワイヴァーンを所持し、地上の騎士とも良く連携を取っている。地上は地上で……ナイトメアにユニコーンと希少ともいえる数々の名馬たち。
一糸乱れぬ騎士団の動きに蹂躙される反乱軍。……そしてひたすら前進してきた精鋭らしき一団から放たれる高位魔法の一撃は、何時の間にか陣地から離れたレオンは、それを左腕で何とも内容にはじくだけだった。
こうまで指示通りに動ける軍隊などアステア、アルトリアにも存在しない。本当に私は恐怖した……もしも敵対してこの軍隊に攻め込まれようなら、キャンベル家はすぐに滅ぼされる!
そして恐ろしいのは騎士だけではない。ギルドのメンバー達による追撃の容赦のなさ! 特に私と同じ勇者である平民出のエイミが酷い! そのスピードと闇を司る魔法による攻撃に、神殿の関係者は逃げる事も出来ない。
同じ勇者とは言え、私にはあれほどの実力は無い。それに……悔しいが、リュウとか言う馬鹿勇者よりも劣る。この戦いの前に共に戦ったが、自分の身の丈ほどもある大剣を振り回した勇者に対し、あの馬鹿は移動しながら的確に弓で動きを封じて捕えていた。
タークスの屑が、自慢の大斧でも勝てなかった勇者を平気で捕える事が出来る実力を持ったリュウを、ヘンリーのボンボンも恐れていた。
そして私達は考えた。何故にレオンは、馬鹿リュウをあそこまで鍛え上げたのか? 結論は出なかったが、いくつかの予想はたてられた。そして目の前の光景を見て確信した。
侯爵とは思えない程に充実した軍備は、すでに王国の正規軍と戦える。ギルドの情報網にアステアの姫が奥方である。関係も良好だろう……アステアの青竜騎士団が参戦しているのがその証拠だ。
そうして考え込む私は、目の前で開始された決闘に驚く。神殿の最高位と言える神官服をまとった老人が前に出れば、それに応えるようにレオンまで馬から降りて老人の前に出た。そうしていくつかのやり取りの後に……激しい戦闘が繰り広げられる。
目で追う事も難しいその戦闘は、周りの戦闘が一時中断するほどにこの戦場の雰囲気を一変させた。激しい老人の動きとは逆に、洗練され舞うように戦うレオン。その二人の戦闘は、すでに別次元だった。老人の一撃で地面は抉れ、大振りの剣筋は荒々しく素早くレオンに襲い掛かる。
しかしレオンは、その攻撃を紙一重で避けたり、槍でその攻撃を逸らして的確に老人の急所を狙う。鋭く変幻自在な攻撃に耐える老人も異常だが、レオンも異常だった。
「私では勝てない。いえ、あの領域には至れない……」
今まで武芸もやってきて、それなりに自信を持っていた私は理解した。頭ではなく、心でもない、本能だ。本能で勝てない、と私は理解した。
私の周りにいる部下達は、そんな私に声をかけようか迷っていた。
その時だ。老人の剣が折れると、レオンは左腕を上げて何かの合図を本陣に送る。その隙を突いた老人の攻撃を利用して素早く距離を取ると、また戦闘が開始した。……だが、レオンの本陣では意味もない発光魔法が点滅を繰り返すだけ。
「い、いったい何が……」
「ディジー様! 上です!」
部下の言葉に、私は空を見上げる。……そこには、見た事もない空を飛ぶ楕円形の物体が浮かんでいた。距離があるのか、または元から小さいのか、物体は小さく見える。
そうして一度視線を地上に戻せば、アーキスの私兵達は戦場から後退していた。その行動に慌てる反乱軍……
「何なのよ……いったい何が始まるのよ!」
「まだここに居たのか……ここは危険だ。すぐにキャンベル家の方々も後方へ下がられよ」
私達の上空に、ドラゴンに乗った嫌な女が私達を見下ろしていた。それに従うペガサスに乗った騎士達も急げといった指示を出してくる。
渋々したがって後方を目指すが、撤退というのは戦場では難しく、敵にとっては絶好の機会だ。それを勝っているのに実行する意味が分からない?
私達と並走? する嫌な女とその仲間たちが、私達の不満に気付いたのか答えてくれた。
「今から飛行船……上空から攻撃を仕掛けます。今回はただの煙ですけが」
その言葉と共に、風を切るような音と共に爆発音と地響きが私達を襲う。何度目かの爆発音と共に収まったが、後ろを振り返れば……白い煙が広範囲に広がり、反乱軍兵士達の叫び声が聞こえてきた! ま、まさか毒!!!
そうすると、その煙の中からナイトメアに跨ったレオンが現れる。それに続いて逃げ惑う反乱軍の兵士達が、武器を放り投げ、顔を手で覆って走って出てきていた。その顔は……涙を流し、鼻水を垂らしながら酷く苦しそうだった。
駿馬であるナイトメアが私達に近付いてくる。そしてそのまま嫌な女と騎士達が、レオンの周りに集まって陣形を築いた。
『勇者様目が痛い! 鼻が痛い! ついでにヒリヒリする!』
「分かってる。俺もさっきから鼻水が止まらない! でもここは全力で逃げろ! お前はあの『ポチ』の子供だから逃げる事に関しては優秀な筈だ!」
『そんな評価はいらないし、あの糞親父と一緒にするな!!! 虫唾が走る』
…………ナイトメアは喋るのだろうか? 今までに聞いた事のあるナイトメアとは、駿馬であり、寿命が長いため騎士としては保有したい馬だ、という事なのだが……喋るとは聞いた事も無かった。
そんなナイトメアが、私の乗る馬に近付いてくる。
『ねぇねぇ! 君の名前教えてよ!!!』
「わ、私?」
『馬鹿! 上の置物になんか興味ねーよ! そこの純白の御嬢さん、俺の遺伝子残さない?』
私は未だに世間知らずなのだろうか……
ポチの子供は喋ります。全部ではないけども……かなり数が喋ります。
最近の嬉しい悩みはネタバレの感想ですかね? 答えるのに困って、全然意味が分からない返しをしている自分を笑っています。
そのあとで後悔もしてますけどね。




