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やる時はやります……

 今回は長くなりそうなので分割しています。明日も投稿予定です。

 ヤバイです……神殿と平民が王国と貴族に対して反乱を起こしました。しかし、問題はその反乱がすでに起こる前から詰んでいる状態だったという事ですよ! もう、どこの誰が反乱に参加して、味方は準備万端! 敵は集結中……色々と敵が哀れになってくる情報が飛び込んできています。


 リィーネが領地に帰ってからは、エリアーヌも都市の護衛として連れて帰り、残ったのは……


「マジで楽しみですねレオン様! 俺が神殿騎士を片っ端から斬り捨ててやりますよ」


 自慢の片手剣を、良い音をたてながら振り回すバス。中々のイケメンであるのに、エイミに心酔しているからか、浮ついた話を聞かない可哀想な男だ。今は関係ないな……


 3姉妹を筆頭にした、やる気十分なギルドメンバーと自分の領地の騎士団だった。止めてくれよお前ら!!! 本当に勘弁して欲しい……


 王都に連行されて、そのまま今度は反乱軍の討伐に駆り出される。……色々と今後の事を考えたら、確実に回避したいイベント? だ。人の恨みは恐ろしい! このまま平民を討伐したら、何時か恨みを晴らすべく俺を暗殺……


 よし決めた! 今回だけは何としても回避する。それに実際問題として、うちのギルドメンバーがヤバイしね。何だろう……生き生きとしているんだよ。素振りをしたり、武器の手入れをしながら鼻歌を歌ったりさ。


 何でうちの連中はここまで神殿嫌いなんだ? それにこれから、王都で貴族を集めた会議が行われる。その場で今後の方針も話すはずだ。それを考えると、今から色々と情報を集めたり、下準備を始めようと思う。


 何事も準備をおろそかにする事は良くない。現に今、俺が準備もろくにしないで立ち上げたギルドが、俺に災厄を持ち込もうとしている。


 俺は、今日開かれる会議までの時間と、主要人物を頭に叩き込んでその場を後にする。王族には会えそうにもない。ならば、貴族の代表格である……


「どこに行くんですかレオン様?」


 後ろから、バスが不思議そうに聞いてくる。俺は振り返らずに、そのまま強い口調で告げる。


「バーンズの爺さんの所だ。……それからお前たち全員は、帰る用意をしておけ!」


 こんな戦争とも言えない、一方的な戦いに参加などできるか! その気持ちを胸に、頭では領地に帰る理由を考える。それは簡単だ……俺の領地は、魔王軍との最前線! これ理由にいかなる困難からも逃げ切って見せる! 幸いな事に、優秀な領主代理様……リィーネが防衛の準備を済ませてくれている。


 いくら内乱状態でも、魔王軍が来たらまとまる! と信じて行動しよう。……さぁ、根回しの時間だ。






 ……結果から説明しよう。根回しは成功したが、想像以上に反乱軍の扱いが酷い! すでに会議で話される内容も、今後どのように対応するか? ではなく……誰が何処を担当するか? である。決められた戦場で、決められた役割を果たすだけの手柄の取りあいだよ。


 それに、王妃様も今回の反乱を利用して自国の無用な貴族の大幅な粛清と、領地の整理がしたいらしい。数だけは膨れ上がった反乱軍に、加担している貴族も確かに居る。そうした連中を切り捨てて、領地を召し上げる。反抗的な勇者を保有した村や町は、今後の扱いが酷くなるかも知れない。


 黒いよ! 王妃様が想像以上に黒いです!


「それでは、今回の神殿と平民の反乱の対応について会議を始める。意見のある者もいるだろうが、ここは騎士団長であるルーゲルから説明を聞いてからにせよ」


 集められたのは、王城の大広間。そこに立ち並ぶ貴族達は、それぞれ違う顔をしていた。平然とする者、慌てだす者、顔を赤らめ怒り出す者……そうした大広間を見下ろす王妃様と王様は、とても落ち着いていた。


 その落ち着いた雰囲気と言葉に、貴族達もそこまで大きな反乱ではないのかも? と考えた時だ。


「すでに反乱軍は、3万の兵士を集結させている。その数は今後も増えて、最終的には7万には届くと考えています。今回の反乱軍に加担した貴族の領地を本拠地とし……」


 その説明に、多くの貴族達が慌て始める。7万の反乱軍……多過ぎるだろう!!! 俺も正確な数は聞いていたが、ここまで多いと事前に知って居なければ慌てた事だろう。


「しかし、今回はすでに騎士団を配置してあります。反乱軍の周りの領地も防衛に専念しており、我々の目的はこのままゆっくりと反乱軍を追い詰める事になるでしょう」


 大広間には、特別に用意された地図が反乱軍と俺達の戦力の配置を木製の駒を使用して表されている。大きな駒を囲む俺達の駒に、その周りには反乱軍の小さい駒が幾つも並べられている。


 その駒を騎士団の団員たちが動かして、今後の反乱鎮圧の説明をしていくが……これがもう酷い! 敵がこうしたらこう! それがほとんど決められているのだ。それに敵の情報から、敵の出来うる全ての行動が予想されている。


 詰んでいる以前に、終了している。ここまで酷いと、反乱軍が哀れになってしまう。


 会議中に説明するルーゲルさんの話を聞きながら、俺は真剣にこの後の事を考えていた。戦争の事など、正直理解しているとは言い難い俺は、戦略の事は置いておく事にした。それよりも……自分の領地に引っ込む事を考える。


 オルセス家を始め、キャンベル家や複数の貴族の派閥の長に有力者と面会と根回しは済んでいる。会議が昼過ぎに開催したのも運が良かった。その分だけ多くの貴族と面会できたしね。


 俺の貴族達に対する要求は


『今回の反乱鎮圧には参加しない!』


 これだ! 今まで頑張ってきたんだから、これくらい許せよ、みたいな感じで話した。それもあってか、貴族達は了承してくれたんだけど……問題は王妃様だ。


 俺の要求に対して、いくつかの貴族側の要求も出ている。


『今回の反乱鎮圧の総大将をこちらで決めさせて欲しい』

『出来れば俺以外の協力者を出して欲しい』

『王妃様への言い訳は、自分でしてね!』


 ……3つ目が問題なんだ。話がまとまると、バーンズの爺さんは自分の派閥と緊急会議に忙しくなり、他の貴族達も王妃様への報告は嫌がって押し付けてきた。まぁ、俺が参加拒否をする訳だから、俺の義務でもあるからいいと思うが……どうやって王妃様に納得して貰おう?


「……レオン殿、何か意見はおありかな?」


 真剣に悩んでいたら、貴族を見下ろす王妃様から声がかかる。その言葉に大広間全員の視線が俺に集まり、ざわついていた貴族達も誰も声を発していなかった。


 人が多い割に静かな大広間で、俺は素早く考えをまとめて行動に出る。……今回も『魅力』の能力に頼る事になるが、俺が今まで何もしてこなかったと思うなよ! 俺も成長しているのだ。この能力を最大限に活用して、自分の領地に引きこもる!!!






「……レオン殿、何か意見はおありかな?」


 静まる王広間に、王妃の声が響き渡る。それまでは自分達がいかに優勢か知った貴族達が騒いでいたが、一人だけ真剣な表情で悩んでいるレオンに気付いて、段々と静かになっていったのだ。


 静かになる王広間では、真剣に地図と駒の配置を見るレオンに皆の視線が集まる。完璧とは言わないまでも、これで負ける事など考えられない! と言える作戦を考えた騎士団や大臣達も、冷や汗をかきながらレオンを見ていた。


 根回しをしていたバーンズも、その真剣なレオンの表情に勘違いをしてしまった。


『この作戦にレオンは納得していない』


 誰もが認める勇者であると同時に、負ける事など考えられない人物が真剣に作戦を聞いて難しい顔をしている。誰もが不安になっていく……この作戦では不味いのかも知れないと……


「いえ、作戦自体にはありません。ただ、勝手ながら今回の作戦に私は参加できません」


 その言葉に貴族達がざわめく。期待していた戦力が、まさかの参加拒否。根回しの済んでいるバーンズ達は、周りに合わせて小声で話をし始め、王妃の顔は一気に不機嫌となる。騎士団や大臣達が、自分達の作戦に不備があるか不安になる中でレオンは


「私は領地にて魔王軍への防衛を行います。この機に乗じて進行するかも知れませんからね」


 その言葉に王妃が食い下がる。


「正論最も! しかし、この反乱はそもそもレオン殿が準備したも同然。作戦にも不備がないと言うのに、その直前で参加拒否となれば疑いたくもなるものだな」


 その王妃の言葉に、参加しているアバンデ家のタークスの父が割り込む。


「貴様はそれでも王国に仕える貴族か! 恥を知れ……戦に怯えるなど、勇者も名ばかりと見える」


 その言葉に目をつむるレオン……再び目を開いて


「私は参加しないが、ギルドの精鋭を残していきます。自由に使って頂いて結構です」


「っ! それでは困るな。この反乱には平民出の勇者が表に出てくる。こちらの代表として、レオン殿には全権を任せるつもりでいるのだが?」


「……私はオルセス家のヘンリーを推薦します。まだ若いですが、バーンズ卿や多くの貴族達が支えてくれれば問題ないでしょうし、有力貴族出身の勇者として向こうとも釣り合いが取れる」


 そのまま言い合う王妃とレオンに、今度はバーンズが


「まぁまぁ、お互いに落ち着かれては如何かな? 僭越ながら、レオン殿の意見は正しいと思われます。この機に乗じて魔王軍に攻め込まれるのは避けたい。それならば、レオン殿に国境に居て貰えれば後ろを気にせずに作戦を実行できると言うもの……如何ですかな王妃様?」


 そのバーンズの言葉に、王妃は一瞬だけ苦い顔をした。自分の手駒とは言えないが、思い通りに動いてくれるレオンが、反対したのも苛立たしいのだが、それ以上にバーンズの孫が表に出る事が嫌だったのだろう。


 貴族達の力を落とそうと言うのに、オルセス家のヘンリーに名声が集まるのは良くない。しかし、レオンは参加を拒否してヘンリーを推薦する。それに今までの功績から、無理やりに参加させる事もできそうにない。……無理に参加させて、あのリィーネが口を出してくる事は王妃も避けたかった。


 王妃の頭の中で、嬉々として要求を突き付けてくるピンク色の悪魔の顔が浮かんでくる。神殿対策でレオンと結婚させたが、その娘が想像以上に優秀で厄介で仕方がない。


 それに、レオンの意見も正論だけに、理由もなく強制参加させられないのも痛い所だろう。


「では、誰を残すのだ? 使える人材なのだろうな……レオン殿の代わりと言うからには期待しているぞ」


 少々の嫌味を含んだ王妃の言葉に、レオンは意外な人物の名前を口に出す。


「リュウと、ギルドの精鋭を残していきます。好きに使って下さい」






「なんて事してくれたんだよ! 俺だけ強制参加とか、レオンさんは鬼ですか!!!」


 会議から戻ると、バーンズの爺さんやその他の貴族達と話を済ませて再びギルドメンバーを招集して会議の内容を知らせる。しかし、リュウが俺の提案に乗り気ではない。


「一人じゃねーよ! ちゃんとギルドの精鋭も残すって言っただろ」


「……俺は平民出身の勇者ですよ? この戦争に参加して本当に大丈夫なんでしょうね!!! 敵にも味方にも注意しないといけないなんて……やっぱりアンタ鬼だろ!」


「安心しろ! この作戦が成功すれば、お前にも爵位が手に入る予定だ。それに折角メッサと結婚したんだ……地位も名誉も欲しいだろ?」


 実際には、うちの領地からゼタの村の住人達の住める領地を与えて、そこの領主にする事をリィーネが決めていたから、何もしなくても貴族になれるんだけどね!


「地位も名誉も命あっての物でしょう! それに……戦争に絶対の安全なんか……」


 アオイ君の事を思い出したのだろうか? しかし、今回の状況は前回とは全く違う。リュウは今回、王国軍に参加する事に意味があるのだ。戦闘も作戦も、他の連中が全て面倒を見てくれる。


「ハッキリ言うけどさ……今回の戦争は、もう勝負が決まってんだよ。お前は後方でヘンリー君と仲直りでもしていろよ」


「えぇ! 貴族と仲直りなんかしたくありませんよ! 大体、産まれながらにメイドに囲まれて……」


 こ、こいつ……俺が貴族だと理解しているのか? それに貴族嫌いがメイドに囲まれているから……駄目だ。本当に駄目勇者だ。


 そんな意見を言うリュウに、エンテがそっと肩に手を乗せる。……今回残るメンバーは、エンテを中心に理性的と思われる連中で固めてみた。リュウを確りとサポートして、危険なら引いてくれると信じているからだ。バスとか、3姉妹は無理だな。


 強いが、不利な状況でも無理しそうで怖い。それに、遠距離主体のリュウだから逃げるのも容易そうだしね。戦闘もないと思うが、もしかしたらを考えたら逃げ切れそうなリュウが一番いい。


「リュウ君、ようこそ妻帯者の世界へ……人生の墓場はつらいよ。だから今のうちに、地位と名誉を手に入れておこう。そうしないと後が大変だから……ね?」


 暗い笑顔でリュウに微笑むエンテ。その後ろには、妻帯者のギルドメンバーが手を叩いている。拍手に囲まれるリュウは、その祝福に対して


「お、お前達と一緒にするな! 俺の嫁は優しくて、美人で……兎に角! お前達の嫁とは違うんだからな!」


 俺のメッサのイメージは、ワイヴァーン戦の後にリュウに薬草か何かの気味の悪い飲み物を流し込む……あの時のイメージが強力過ぎて、いまいち優しいとは思えない。


 そんなリュウを優しい微笑みで見守るギルドメンバーが、これから仲間になるであろうリュウに色々とアドバイスをし始める。へそくりの仕方とか、浮気のごまかし方……そんな事をメッサにばれたらリュウは拷問にかけられるな。


 まぁ、リュウはどMだから丁度いいかも知れないけどね。ああ、ついでに駄馬にも残って貰うかな?


「駄馬、お前もここに残れ」


 その俺の発言に、後ろを向いてケツを見せている駄馬が無視を決め込む。こいつはすぐにでも自分のハーレムに帰りたいのだろう……しかし! 何時もの俺だと思うなよ。


「ここに居れば、国中から騎士や兵士が集まるし、戦場に出ればたくさんの牝馬が……」


『任せろ! 貴様の期待に答えつつ、下僕2号の面倒を見てやる』


「ツックン! 君はいい加減に下半身で物事を決めるのは卒業しなよ!」


 お前が言うな! メイド服に釣られて、俺をピンクに売り払ったお前が言うな! まぁいい。これで残るメンバーも決まったし、後は帰るだけだと思って準備をしようとした時だ。エイミが俺の前に立ちふさがる。


「……なんで、なんで私達は残れないんですか!」


 その場にいた全員が、エイミと俺に注目した。

 ついにここまで来ました! と言ってもあまり進んでいませんね……

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