二人は転生者! ……なんかタイトルみたい
今回は転生者のお話です。ユーステアとベーン……忘れられてないといいんですけどね。実際自分でも忘れそうに……
そこは戦場となったオセーンの城内。そして皆の気持ちを表したのか空は厚い雲に覆われ、皇帝の椅子に座るユーステアを守る騎士達が覚悟を決めた顔をしている。
「皇帝陛下……宜しかったのですか? 今ならまだ間に合います。囮を使いこの城から脱出して頂けませんか?」
一人の大臣が、持ちなれない武器を手に持ち皇帝であるユーステアに告げる。他にもそれに同意する騎士や兵士達……それを聞くユーステアは手で顔を隠し、大声で答える。
「もう決めた事だ! エリアーヌさえ生きていれば血は残る。そのために……親衛隊は犠牲になったんだぞ。この上、俺まで生き残ろうなんて虫が良すぎる」
顔を隠した手から涙が零れ落ちる。それを拭い再び正面を向く。この数時間前に眠らせたエリアーヌをアルトリアに逃がすため、囮となり上空の魔物を引きつけた近衛騎士とエリアーヌの影武者……そしてこの状況に恐れて逃げ出した他の勇者達も魔物を引きつけるのに役に立っていた。
「この国をここまで追い込んだのは俺だ。……責任はとれないが、最後くらいは妹の逃げ出す時間ぐらい稼いでやるさ。それに残ってくれたお前達にも悪いしな」
ユーステアの魅了と魅惑……それにより忠誠を誓った騎士や兵士、そして文官達を見渡して答える。最後まで付き合ってくれる彼らに対して、ユーステアは今になって後悔していた。
「き、来ます! 敵の大将らしき魔王が、こちらに向かってきます」
広間に駆け込んだ伝令の騎士が、息を切らして状況を伝えてくる。その内容はどれも絶望的な物ばかり……味方は全滅覚悟で突撃したが、魔王には傷一つ付けられなかった。それを伝えた騎士も、そのままその場に倒れる。
「……父を謀殺し、兄弟を追い落としてきた俺が魔王に殺される。何のためにここまで血を流してきたのかな……肉親で争って、俺は馬鹿だな……」
その呟きに誰も答えない。その時、扉を切り刻み魔物の軍勢が現れた。ユーステアと向かい合う形で現れたのはアゼル。人間の魔王だった。
「失礼しますよ。……ふーん、やっぱりこの国の新しい皇帝は怪しいと思っていたけど、本当に俺と同じ転生者だったのか。それじゃ先輩一つ質問だ」
いきなり現れ皇帝に無礼な口をきく魔物に、即座に切りかかった騎士達を見えない斬撃で斬り捨てたアゼルは、淡々と質問する。
「俺に従ってこの世界を救うか、それともこのまま死ぬか……どっちがいい?」
アゼルの周りにいる魔物達は、余裕の表情でユーステア達を見ている。負ける事など考えてもいないのだろう。
「簡単だ……お前が死ねばいい!」
そう叫んで消えたユーステア。次の瞬間にはアゼルの護衛をしていた魔物の首がアゼルの前に転がっていた。
「流石は転生者! こうでないとつまらないよな。でもさ……先輩は能力を使いきれてないな」
次々に転がる魔物の首に、オセーンの騎士達は歓声を上げる。しかし、アゼルの首に斬撃は放たれない。そのまま姿を現したユーステアが、息を切らしながら左腕から血を流していた。
攻撃しないのではなく、出来なかったのだ。
「お前も転生者? なら、あの時の冴えないサラリーマンかよ……何でこんな事をする」
「ん? 何勘違いしてるんだよ。俺はお前達の後に転生した三人の内の一人だぜ? もしかして誰かと勘違いしてるなら気を付けた方がいい。俺はお前らと違って望んだ能力は『情報』だ。お前らが知らないこの世界の事を知ってんだよ」
「この世界の事?」
「そう、魔王と勇者の関係とか、神殿の目的とか……色々聞いてるんだよ。そして正しいのは俺で、間違っているのはアンタ達だ」
呼吸を整えたユーステアは、再び能力を使用するタイミングを計る。周りではアゼルの護衛と味方の戦闘が始まり、このままではいずれ負けてしまう。そう考えたユーステアは賭けに出た。
「……お前の言っている事の証明はできるのか?」
「出来る訳ないな。俺の事を信じてくれたらいい目を見せてやるぜ……せんぱ、い!」
その時のユーステアは、瞬間移動を駆使してアゼルに近付く……フェイントを使って、能力の限界を超えて接近してきた斬撃にアゼルも慌てて後退する。
目の錯覚で残像が見えるほどに増えたユーステア。残像がアゼルに近付くと共に切り裂かれていくが、刃は胸を貫き口から血を吐く……その光景を見て周りは動きを止めた。
「お、遅いじゃないかユア! こいついきなり能力を使いこなしやがって……冷や冷やしたぜ」
そう言いつつ、ユーステアの剣を受け止めていた。アゼルがそのまま周りを見渡すと、ユアの周りには複数の剣が浮いており、次々に騎士達を討ち取っていく。その光景を見ながら
「流石は魔人族の魔王! 念力で剣を操るとか卑怯にもほどがあるぜ」
銀の長い髪を揺らしてユーステアを掴んだユア。その瞳は青く、肌は雪のように白い。
「あ、く、くそ……もう少しだったのによ」
苦しむユーステアを冷たい視線で睨みつけるユアは、魔力を放出しそのままユーステアを燃やしてしまう。
「は、ハハハ! これで最後だと思うなよ! レオンに殺される前に精々喜んでおくんだな」
燃えていくユーステアは、最後まで笑っていた。そして最後を見届けたアゼルとユアは
「おいおい、笑いながら燃えるとか怖すぎるぜ」
「……」
黙っているユアの拳に力が入る。レオンの殺したワイヴァーンの事を思いだしていた。
「はぁ、お前はお前で喋らないし……このまま周辺の国々に進行する! アルトリアに攻め込みたいが、向こうは向こうで防衛に力を入れているから後回しだ。それに……レオンが来ようが、もう手遅れなんだよ」
周りの魔物に支持を出し、そのまま皇帝の椅子に座るアゼル。まさに血の海の光景を前に笑みをこぼす。
「このまま神殿の総本山を攻め込んだら、アルトリアを攻める必要もない。神官は皆殺しにしろ、勇者も一人残らず始末する。そうすればこの世界は俺の物だ」
そこにある村は、神官もいない片田舎ののんびりとした村だった。そこには、一人の青年が畑を耕していた。その青年は『ベーン』……かつて異端者として故郷を追放された青年だ。
「今日はここまでかな……」
一仕事終えて、畑のそばにある切り株に腰を下ろす。そこには一振りの木刀が立てかけてある。追放されてから流れ流れてようやく落ち着ける生活をしていたのだ。
「おっさん! 剣を教えてくれよ」
そこに一人の少年が、木の棒を持ってベーンに近寄ってくる。数年前に少年を魔物から守ったベーンは、この村に住む事ができるようになったのだ。それ以降はこうしてベーンに剣を習おうと毎日足を運んでくる。
「おっさん……せめてお兄さんと呼んでくれよ。それにしてもお前も飽きないよな?」
「俺は強くなって、母ちゃんを守らないといけないからな!」
自信満々に答える少年のために用意した木刀を手にすると、構えて見せるベーン。それを目を輝かせて見つめる少年にとって、ベーンは憧れだった。
まだ幼い少年に基本的な事を教えたベーンが、再び切り株に腰を下ろすと少年もその隣に腰を下ろす。すでに日も傾いて大分たつ。
「おっさんは強いな! 騎士様になればよかったのに」
「騎士ねぇ……俺には無理かな。昔は我がままで、迷惑ばかりかけてたからさ……そのおかげでずいぶん苦労したよ」
思い出すのは一人で生きていたころの事ばかり、魔物から逃げたり倒したりを繰り返し、日銭を稼いで生活していた。貰った能力を使いこなせるようになったのも最近の事で、それまでは剣を振り回していただけだったのだ。
「おっさんなら最強の騎士になれるって! この国一番のレオンを超えて、最強の騎士様さ!」
レオンの名を聞くと城門でみじめに追い出された記憶がよみがえるベーン。あの時はどれ程レオンを憎んだ事か……今ではそれも思い出の一つにすぎないが
「最強ね……俺は駄目だな。力があっても意志がない。レオンには意志があるから、あそこまでの事を成し遂げているんだろうな」
臨んだ能力は漫画やゲームの剣術。それをこの世界の魔力を使い再現しているだけの能力。使おうと思えば、誰でも使える……本当にもう少し考えて能力を貰えばよかった、とベーンは考えていた。
「この村を魔物から守ってくれてるだろう? それだけ強いんだから意志とか関係ないよ……おっさんが騎士になれば母ちゃんもきっと……」
その時、村の向こうから火の手が上がるの見えた。それを見て駆け出すベーンは、少年をその場に残し村へと急ぐ……
そこに広がる光景は、魔物に蹂躙される村の変わり果てた姿だった。建物は全て焼かれ、人を殺して回る魔物の軍勢……それは地獄の光景かとベーンに思わせた。
「こ、これは……何でこんなに……」
立ち尽くすベーンに数匹の魔物が襲いかかる。それを持っていた木刀で仕留める。木刀に魔力を流し込んで斬撃を放つだけで、魔物達は切り裂かれてバラバラになってしまった。その斬撃の起こした木々や建物を切り裂く破壊音に、魔物の軍勢が動きを止めた。
『ほぉ、これ程の使い手がいたのか……そこの剣士よ我と戦え』
その魔物が歩いてベーンを目指すと、他の魔物達が道を開ける。その姿は半獣人型の魔物が全身を鎧でおおい、腰には数本の剣がぶら下がっていた。ベーンには持つ事も出来ないような魔剣や高価な剣である。
「くっそ、見せびらかして……こっちは木刀だってのに」
愚痴をこぼして木刀を構えたベーンに近くにいた魔物の一匹が、人間から剥ぎ取ったらしい剣を投げてきた。ベーンの近くに落ちた剣は、地に突き刺さり炎で不気味に輝いていた。それを拾い上げると木刀を捨て構えなおす。
『ククク、せめてもの情けだよ。我も木刀一本の人間を相手にした、と他の魔王どもに言われたくないのでな。それにしても……こんな何もない場所の探索を命令された時は、退屈だと思っていたが……これ程の剣士を相手にできるのだ! 我は満足だ!』
周りを囲んだ魔物の群れは、その声に合わせて雄たけびを上げる。手に持った武器を高々に掲げ、まるで大地を揺らすような雄たけびにベーンは飲まれそうになる。
(なんて数だよ……半獣の魔物なんか聞いた事しかない。それなのにこの数は……それにこいつが魔王なら俺に勝てる訳がない)
魔物の目が自分に集まるのを確認した村人達は、一目散にベーンを見捨てて村から逃げ出していく。それを横目で見たベーンは魔王に集中する。
集中しているベーンに向かって踏み込んでくる魔王の剣をかわし、そして防ぎながら後退する。自分から攻撃しようにも、相手の攻撃は速度も重さもベーン以上なのだ。
『どうした! この程度ならまだこの国の騎士が食い応えがあったぞ!』
「好き勝手言いやがって……お前の魔剣と違って、こっちはただの鉄の塊なんだよ!」
渡された剣は刃こぼれも酷く、あまりいい作りをしていない。それを何とか持たせながら魔王と戦うベーン。相手の魔剣はその力を存分に使って使用者の能力を底上げしているのか、輝く度にその剣の斬撃は重さを増していく……
息も上がり体中から汗が流れ出ているベーンに対して、魔王は涼しい顔をしている。それでも諦めないベーンは、相手の攻撃に合わせて渾身の力で必殺技を繰り出した。
『な! ……今のは?』
「どうだ!」
互いの攻撃が交差すると、魔王は左目を失い、ベーンは左腕を失ってしまう。魔王の鎧に傷をつけ、むき出しの顔に放った斬撃が左目を奪うが……それ以上にベーンの失ったものは大きい。
『いいぞ、貴様は我に最初の傷をつけた事を誇って死ぬがいい!』
見えなくなった左目の事を無視してベーンに斬りかかる魔王。左腕を無くしたベーンには戦う時間は残り少ない。大量の血を失いながらも諦めないベーンは、この村の住人が逃げ切れる時間を稼げればそれで良かった。
思い出すのは、流浪の日々が終わり村での安心できる生活と村人達との交流だ。……斬りかかる魔王の剣をその身に受けるベーン。しかし
『貴様!』
「もう遅いぜ魔王さん」
魔王が後ろに跳びながら腰にある剣を抜こうとするが、それよりも早くベーンは自分の剣を捨て魔王の腰の剣を抜き、そのまま魔王の胴を切り裂く……上半身ごと地に落ちる魔王。それを見て周りの半獣達が叫びながらベーンに群がってくる。
「……生きろよみんな……あとは頼むぜレオン!」
一方、東方から帰還したレオン一行は
『なんだと! この俺に自分のハーレムを前に留まれと言うのか、このちょび髭神官!』
ああ、また駄馬が騒いでるよ。飛行船から降りた途端に神殿騎士に囲まれたから悪い予感はしていたけど……王都に留まって防衛しろって言われてもね。
王都にある飛行船の発着場で言い争う駄馬とハースレイ。飛行船で長い期間何もできなかった駄馬は、到着と同時に領地に戻って自分のハーレムを心行くまで楽しもうとしていた。だが、そこで待っていたのは武装した神殿騎士の一団で、しかも帰る事は許さないと言っている。
「現在は緊急事態なのです! 魔王軍が決起し、オセーンは滅ぶのも時間の問題……この王都には各地から逃げ延びた神官達が集まって居ます。この重要である王都の防衛にレオン殿を当てるのは当然です!」
顔を真っ赤にして説明するハースレイ。……その状態だと俺の領地って最前線になっているよね? そこよりも王都を防衛とか何考えているんだ?
「……セルジまでいますよレオンさん。それに他の勇者達まで集めて……俺達の家は大丈夫ですかね?」
リュウに言われて周りを見れば、どこかで見たような顔が不安そうにしている。セルジなんか偉そうに神殿騎士を従えてハースレイに指示を出しているし
「神官長、馬に何を言っても無駄です。レオン、あなたはこの王都を守るためにこの場に留まりなさい。時期に神殿の総本山を取り戻すために、軍を出す時も協力するのですよ」
上から目線のセルジは放って置くとして、問題はこの国の権力者だ。王妃様がこの発着場にいないので近くにいる騎士達に話を聞いてた。
「神官達がこの王都に流れ込んできてから本当に大変なのです。彼らの要求する衣食住にかかる費用は莫大で、その上王都の住人達とも争いだしています。まるで強盗ですよ!」
神官達を睨みながら答える騎士。話をまとめると、魔王軍から逃げえきた各地の神官達はこのアルトリアの王都に集まってきているらしい。更に神殿の総本山まで奪われて最高権力者である『宗主』様までこの王都を目指しているんだとか……それだけならいい。
問題は神官達の生活費の工面をこの国がしているという事だ。人の金だからか、やたらと使いまくる神官達は朝から酒を飲み、神殿騎士達は王都を我が物顔で歩き回り店では飲み食いしても金を払わない。迷惑だ! この国に税金を納めている俺としてもこれ以上の無法は許せない! ……来年の税金は、確実に増税方向だな。
「迷惑だな……総本山なんか放って置くか? それだと王都で永遠とたかるから駄目だけどさ」
俺の一言にセルジが噛みついてくる。
「決定事項に口出ししないで欲しいですね。大体あなたが国を離れている間に我々がどれ程苦労したか……」
いや! 国から追い出したのお前等だから! 何俺が自分の意志で国から出ていたように言うの? 本当にこのガキムカつくわ!!!
『俺は……俺は! 俺のハーレムに帰るんだ!!!』
「別に帰らなくても、この王都にも牝馬くらい沢山いるよツックン……グボッラ!!!」
事実を告げただけのリュウに、駄馬の後ろ脚がさく裂した。吹き飛ぶリュウは、空中で錐もみ飛行をしながら吹き飛んで地に落ちてから動かなくなる。
『黙れ!!! 俺様のハーレムには夢と希望が詰まってるんだ。ペガサスだけじゃねぇ……ユニコーンにナイトメア、その他の種類も揃えている俺のハーレムに勝るハーレムなど存在しない!』
「いい加減に諦めろよ。きっとお前の集めた牝馬達も、お前のいない間に他の牡馬の子供身ごもってるって。それなら王都で再出発を……あぶねっ!」
言い終わる前に、俺の顔面の横を駄馬の後ろ脚が通過した。その風圧は物凄い! お前……普段からこれくらい本気だせや!!!
『お前もか! 言っておくぞ……俺様のハーレムは俺を裏切らない!』
「……つ、ツックンは裏切りっぱなしだけどね」
立ち上がろうとするリュウが、駄馬に真実を告げる。確かにどこに行っても浮気している駄馬なんか……まぁ、所詮は動物だから仕方ないか。
「……お話は終わりですかな? では早速中央神殿の警護を行いなさい」
セルジがそれだけ告げると、神殿騎士や他の勇者を引き連れて帰ってしまう。俺も王妃様に報告に行くかな。そう思ってセルジ達とは逆の方へと歩き出した。
「あれ? レオンさんは中央神殿に行かないんですか?」
「行くわけないだろ。俺の上司はこの国の王族で、神官じゃない」
そのまま王妃様に報告しに行く事にして、神殿の決定を無視する事にした。歩き出した俺達に、一人の騎士が慌てた様子で駆けてくる。
「レオン様、オセーンが落ちました! 皇帝は亡くなり、エリアーヌ様は行方知れずに……報告ではこちらに逃げ延びようとしていると」
報告を聞いた俺は、飛行船から降ろされた積み荷の方に歩き出す。積み荷の中に、俺の鎧や武器がしまってあるのだ。
「……駄馬、支度をしろ」
『待ってたぜ! 流石は自己中勇者だ。帰還祝いの最初の相手はペガサスで決まりだな! オセーンのペガサスは俺のハーレムに含まれるから、俺には何の問題もない!』
鎧を積み荷から取り出そうとすると、他のメンバーもそれを手伝ってくる。セイレーンが武器を運び、ラミアが念力で鎧を用意しているし、エイミは馬具を駄馬に持って行った。
「いや、歴代勇者の鎧は使わないからな! 俺の何時もの鎧を用意してくれ……歴代勇者の鎧は二度と装備しない」
「折角作ったのに……職人さんが可哀想」
ラミアの一言に心を抉られるが、もともと俺の物ではない。難癖つけられそうな今回の件にそんな大事な鎧を持ち出せるか!
「……エリアーヌが分かりやすい格好がいいだろ? それにあの鎧は、父や母……領民がくれた大事な鎧だからな」
渋々、前から使っていた純白の鎧を用意するセイレーンとラミア。正直に言えば歴代勇者の鎧は純白であると同時に何かしらのキラキラとした光を放つのだ。……きっと悪い意味で目立つだろう。その状態で二番目の奥さんを救出に行ったら、何か勘違いがおきそうで嫌だ。
『おら、行くぞ家来1号』
「黙れ腐れ駄馬! 二度と家来とか言うなよ」
「待ってくださいよ! 俺も一緒に行きますから!!!」
鎧を準備しながらついてくるリュウ。背には弓を担いで、腰には日本刀を装備している。……こうして再び三人? で空を駆ける事になったのだ。
彼らの行動は後に評価されそうな感じですかね? 妹である勇者を逃がしたユーステアと一般人でありながら魔王を倒したベーン。
感動話と勇気を与えてくれる話に、後で解釈される……かな? 事実なんか捻じ曲げられますしね。
それはそうと、新しい職場への通勤時間が往復二時間を超えている! 電車通勤になったんですけど……通勤だけで疲れますね。