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赤鬼さん

 久し振りの更新ですよ! なんかもう話を忘れそうで……

 アルトリアからイの国に来てから早くも半年経った。目的は果たしたが、この国の魔王討伐に協力するか、しないかで現在揉めている。正直な話、俺としてはこのままこの国に住んでいたい。


 魔王は、家の3姉妹に任せよう。ハッキリ言って俺より強いと思うんだ。


 それに監視はされているが、昨日は宿泊していた場所の近くの川でのんびり遊んでいられた。それを考えるとアルトリアより住みやすい。


 魔王討伐に関しては、情報不足で何とも言えないけどアルトリアよりもましな気がするね。神官も巫女さんみたいな人達だったし……本当に移住したいよ。


 遠い異国だからか、神殿の神官達みたいに権力やら金にそこまで執着していないのがいい! そう考えていたら


『今日から俺の事を『神馬シンバ』と呼べ』


 宿泊施設の縁側で座っていた俺に、近づいて来た駄馬が偉そうに告げてきた。しかも結構真剣な感じだった。


「シンバ? 何言ってんだよ。お前には立派なポチって名前が有るじゃないか」


『そう、名前はそれでも良い。きっと立派な意味が有ると理解している。だが!』


 駄馬には、一般的な犬の名前だと教えてないから勘違いしてるな。教える気も無いけどさ。最初に出会った時は本当に驚いてて、軽くパニックだったから『ポチ』なんて名前を付けてしまった。……もっと変な名前にしておけば良かったよ。


『神の馬と名乗るとな、馬を所有している連中が俺の所に来る事がわかったんだ! 子分その2に、俺が神馬と説明させてから毎日が薔薇色だ!! アルトリアに帰ったらすぐに広めてくれ』


 またヒースに刺されても知らないからな。しかし、将来的この駄馬の血を引いていない馬がいなくなるのでは? と思えてしまう。


「お前のハーレムを維持するのも大変なんだからな。そこら辺をよく考えて発言しろよ」


『貴様! 俺のハーレムを盾にするのか! 最低なクズだな』


「ハイハイ、お前から高評価なんか受けようなんて思ってないから……それよりさ、他の連中は?」


 周りを見れば俺以外には見張りと駄馬しかいない。最近は、アオイ君もリュウに連れられているから周りにいない。


『家来その2なら出掛けやがった。俺の家来のくせに子分を連れてやがって』


 お前の家来でもないからな。そんな事を考えながら立ち上がり、俺の周りにいる監視役の侍にアオイ君達の事を聞いてみる。その答えに俺は驚いた!


『なんでも城を見に行きたい、と申されたようです。イヌヅカ殿が案内していると思いますが……聞いておられなかったのですか?』


 なんて事だよ! あのお調子者を城に連れて行くとか……最近は落ち着いてきたから平気かな。昨日も川で3姉妹が、水に濡れてても目をそらしていたからだいぶ落ち着いてきているように感じた。


 むしろ、3姉妹があそこまでは無邪気に遊び回ると思わなかったけどね。薄着で水遊びとか、もう少し周りの目を考えてもいいと思う。


 ……あれ? これってチャンスじゃね。


「駄馬! すぐに出かけるぞ。このまま歓楽街に出陣する」


 急にテンションの上がる俺について来れない監視役達とは違い、駄馬だけは俺の言葉に賛成してくれた。


『任せろ……歓楽街の馬小屋を今日こそ制覇してやる』


 荷物などをまとめて準備をした俺達に慌てて聞いてくる監視役達も巻き込んで、そのまま出陣した。こんなチャンスは滅多に無い! 3姉妹の気持ちもわからなくも無いが、男の気持ちも理解して見逃して欲しい。


 俺には、国に2人の嫁さんが居るんだから、こんな時くらいしか羽を伸ばせないんだ。


「コツコツと調査していた甲斐が有ったな」


『お前はこの手の事は完璧だよな』


 駄馬に跨り、駆け出す俺についてくる監視役達……いや、もう友と呼ぼう。この国にも悪友達が出来て喜ばしい。今日は遊び尽くすぞ!!!






 歓楽街に着く頃には、夕暮れ時で人も増えてこれからと言う絶好のタイミングで到着した。建物も立派な物から安っぽい作りの物まで様々で、和風の作りが時代劇を思い出させる。


 喜んで歓楽街に出陣したけど、ここで大問題が発生した。金髪美人のミーナさんが、遊女として店先で客引きをしていた。……あんた何してんだ?


「レオンさん!! 助けて下さい。私なんだか買われたみたいで……道に迷ったら何時の間にかこんな事になってたんです!」


 いやいや、道に迷ったからって遊女になるとか、普通は考えられないよ。ミーナさんが少しズレていたとは気付いていたけど、ここまで酷いとは思わなかったな。


 その後は、監視役の人達に頼んで国家権力を使いミーナさんを救出した。まぁ、頼みに行ったらミーナさんを持て余した店の人も納得してくれた。言葉が通じなくて困っていたらしい。


「気を付けて下さいよ。大体なんで道に迷ったんですか?」


「実は、この辺りの病人の方々の家を回っていたんです。神殿の事を理解して貰いたくて……」


 俯いているミーナさんは、そんな事を言った。他の神官達は、大した事もしていないのに豪華な接待を要求している事を考えれば、立派かもしれない。それならいっそ、神殿から出ればいいのにね。


「色々と難しいよね」


 適当に慰めて、俺はすぐにでも歓楽街を見て回りたかった。しかし、流石はピンクと並ぶ勘違い女だった。


「まさか異国でレオンさんに買われるなんて、思っていませんでした」


 この女は絶対にわざと言っていると思う。こんな発言を家の家族に聞かれたら、俺はまた苦労してご機嫌取りをしなくてはいけないではないか!


「買ってない! 助けただけだからな……俺達は遊んでいくから、ミーナさんは帰って休みなよ」


「……そうします」


 そのまま、夕暮れ時の歓楽街を見ると多くの遊女達に、客引き達が俺達を待っている気がした。実際待っているのだろう。そして前に進もうとしたら……俺の袖を握るミーナさんに止められた。


「帰り道がわかりません」


「そうですよね……誰かに送って貰いましょうか。無理だよな……」


 しかし既に駄馬は馬小屋めぐりに出かけていたし、監視役の人達も遊ぶつもりのようだった。さらに悪い事に、この歓楽街で一泊して朝に帰るつもりだった。つまり、ここから宿泊施設までは遠いのだ。馬を借りようにもこの国の馬は小さく体力もその分少ない。ついでに、先程ここに付いたばかりで疲れている。


『泊まる所なら有りますよ?』


 悩んでいた俺に、監視役の一人が伝えてきた。そうか! 一晩何処かに泊まってもらい、その後に合流すればいいのか。


『すぐに手配してくれます』


 その言葉に監視役の人が宿を探して来てくれた。……二人部屋を探して来てくれた。


「私、ドキドキしてきました!」


 遊女の服装なため、和服を着ていたミーナさん。髪も結んで何だか夜の女にも見えなくは無い。このままだと確実に手を出してしまう!!!


 だが、この女だけには手を出さないぞ。流石に俺もここ五・六年で学んだんだ。危険な女には近づいてはいけないって! ……手遅れだけどね。人間は失敗をして学ぶんだよ。


 考えながら宿に向かっていたら、如何わしい宿に到着した。部屋に通されると、隣の部屋には監視の者が入って行った。遊女を連れてな!


「何で俺だけ……」


 折角こんな所に来たのに、遊べないとか考えてもいなかった。でも、ミーナさんには手を出せないから……夜になったら出かけて遊びに行こう。






「まさか未亡人と一夜を共にするとは……」


 日が昇りかけた薄暗く、人も居ない歓楽街の道を歩きながら俺は呟いた。何とかミーナさんから逃げ出して外に出たのだが、その時には遊女も客を見つけたあとで……少し遅かった。


 しかし、落ち込みながら居酒屋に入れば、そこには美人な女店主が! 声を掛けたらそのまま……いい思い出になったよ。


 浮かれながら借りた部屋に戻ると、ミーナさんが気持ち良さそうに寝ていた。まだ出発まで時間も有るから、俺もこのまま少し寝ておこう。久し振りに遊んで少し疲れたし……






 まだ外も薄暗い時に、レオンさんが部屋に戻ってきました。私は、寝たふりをしてレオンさんの事を見ていました。そうすると布団に入って寝てしまいます……流石にこれは酷いです!


「……でも、都合もいいかな?」


 寝息を立てたレオンさんに近付いた私は、レオンさんから外した『腕輪』を手に取ります。神殿の上層部からの命令で、レオンさんの腕輪について調べるように言われました。


「綺麗な腕輪……これが本当に『聖剣』なのかしら?」


 腕輪を見ても何もわからなかった私は、外が明るくなりだした事にも気付きませんでした。その時です。


『レオン殿、そろそろ出発の時間です』


 紙の扉の向こうから聞こえた異国の言葉に驚いて、私は腕輪を隠してしまいました。そのままレオンさんも起きてしまい……


「……酒も飲みすぎたな。凄く眠い」


 片腕で目を擦りながら、上半身を起こしたレオンさんに腕輪を返せませんでした。レオンさんの切り札と言われる聖剣を、私はそのまま隠す事にしました。


 あとでこっそりと返そうと考えて居たのに……






 昼を過ぎた頃に、宿泊施設に着いた俺達を待ち構えていたのは、想像通り3姉妹とリュウにメッサとアオイ君だった。でも少し様子がおかしい。リュウが縛り上げられて、木の上から吊るされていた。


「父には、言いたい事はたくさん有るんですが、それ以上に伝えなければならない事が有ります。……ここに居る馬鹿リュウが、この国の王の前で『魔王討伐』を約束しました」


 仁王立ちのセイレーンから伝えられたこの言葉に、俺はすぐにリュウを睨みつける。


「こいつは取引したんです。『魔王討伐後に姫を貰い受ける』って!」


 責めるようにリュウを睨みつけるエイミ。そしてラミアは、吊るされたリュウを下から槍で突いていた。時々『あっ!』とか言いながらリュウが顔を赤くしていた。


 そんなマゾ野郎を、見上げているメッサ。


「なんかドキドキする!」


 そんな事を言ったリュウから目をそらして、アオイ君から事情を聞く事にした。


『じ、実は……リュウ殿に殿と姫様が面会したのです。その時に魔王など倒して見せると言ってしまい』


『なんでこの馬鹿は……』


 俺が頭を抱えていると、アオイ君がリュウを庇った。なんでもアオイ君は姫様に恋心を抱いているのをリュウに話したんだとか、それを聞いたリュウが……


「そうなんですよ! このままだとアオイ君の恋は実らない……なら、俺がそれを何とかしてやろう、と思ったんです!」


 吊るされながら、大声で俺に言ってくるリュウ。お前はアオイ君を嫌いだった筈だろ?


「異国の言葉で話が進んでしまったので、私達にも止める事が出来ませんでした」


 セイレーンの説明を受けながら、俺はこの国でも魔王を討伐する事になったんだな、と頭で考えていたらアオイ君が


『すでに、この国の兵士達にも招集がかかりました。討伐は三日後を予定しています』


『早過ぎる! 大体、俺達はこの国の魔王の事を何にも知らないぞ』


『その事も伝えるように言われています。……この国では『赤鬼』と呼ばれている魔王は、鬼と言われる妖怪です。人の形をしてはいますが、その身体は赤く、そして人の倍以上の大きさで、額には二本の角を生やしているんです。』


 東方の国で鬼退治か……まるで絵本だな。だけど、聞いた話では結構強いよねその魔王。


『元々、鬼自体はそこまで賢く有りませんでしたが、奴だけは別格でした。その他の鬼と違い赤い色をして、角も一本多い。その上、人間の真似事をして鬼達を率いて戦うのです。甘く見ていた我々は、何度も奴に返り討ちに……』


 厄介だよね。まぁ、魔王と言う存在自体が厄介だけどさ。最初のリッチと同じかな? 数で攻めたり、戦術を使われると難易度が急激に上がる気がするよね。


『レオンさん! 俺達なら楽勝ですからすぐ、イッタ!!! ラミアさん血が出てますよ! 本当に許して下さいよ!』


「異国の言葉で、私達を誤魔化す気か? また迷惑をかけるならこのまま串刺しにするからね」


 会話に割り込んできたリュウを、ラミアが真下から槍で刺していた。本当に勘弁してくれよ……


「それはそうと、父は昨日から何処に出かけていたのですか?」


「私も気になります。レオン様が何処で一晩過ごしたのか……」


 手の離せないラミア以外が、俺の昨日の行動について聞いてきた。やましい事をしたと思うから怪しまれるのだ! 普通に遊んだだけだと思い込めばいい。こんな時に言い訳をすると口数が増えて逆に怪しまれるからな。


「昨日は……」


「昨日はレオンさんに買われて、一晩同じ部屋で寝ていたから大丈夫です!」


 俺の発言をさえぎって、更に問題発言をしたミーナさんが、腰に手を当てて自信満々に答えていた。……大丈夫じゃねーよ!!!


 見てみろ! セイレーンから魔力が炎のように漏れ出して、エイミなんか何時の間にかその両手にナイフを握り締めてあんたを見ているぞ!


「やっぱりこの女は放っておけない」


「これだから神官は……物理的に消えてもらわないと」


 真顔でこんな事を言う2人を何とかなだめ、その場を治めた。近頃は、戦闘スキルが伸びていて本当に恐ろしい。この子達を相手にする魔王が哀れに思えてくるよ。






 そうして、急遽決められた作戦に参加する事になった俺達。しかし……ハッキリ言ってこの国の兵士達とは連携が取れない! そんな俺達が、作戦の重要な部分に当てられるとか正気とは思えなかった。


 その上だ!


「なんで俺達が魔王の囮なんだよ!」


 この作戦は、単純に魔王とそれに従う鬼族を誘き出して数で攻めると言う物だった。俺でも聞いた事のある戦術だ。それはわかるが……それの囮にするとか無茶振りにも程がある!


「大丈夫ですよ父! 必ず『赤鬼』とか言う魔王の首を取って見せますから」


 元気に励ましてくれるラミア……言っておくけど俺達は囮だからね! その辺理解して行動してくれよ。


「新しい鎧と武器も手に入りましたから、今の私達なら絶対に勝てますよ!」


 エイミが、俺とお揃いの白い鎧に赤いマントの格好で、自慢の大鎌を肩にかけて声を掛けてきた。日が昇る前ということもあり、辺りは暗い。その所為か、大鎌の刃の部分が松明の光で鈍く光っている。


「……目立つ鎧とマントですよね。その所為で囮にさせられたんじゃないですか?」


 リュウはこの国の鎧を着込み、弓もこの国で用意した物を装備していた。刀まで装備している。


「黙ってろ! これは父とお揃いの鎧だ。文句が有るなら……」


 3姉妹の鎧は殆ど俺の鎧と同じだ。まぁ、俺のを参考に作ったから当然とも言える。違うのは装備くらいだよ。リュウの首筋に、セイレーンの大剣が当てられているし、ラミアにいたっては背中に4本の槍を抱えている。あとは、腰に短剣を装備しているくらいか?


『しかしよ……俺らを囮にするって言う事は、この国の連中は姫様を渡す気は無いんじゃないか?』


 珍しく駄馬が真面目な事を言ったので、驚く俺は周りを見て他の連中の反応を見た。……特に誰も何の反応もしていない。監視役のアオイ君とリュウの表情が変わっただけだ。


「ハッキリ言って姫様には興味が有りません。それよりも私は腕輪の事の方が……あの腕輪は狙っていたのに!!!」


 セイレーンが言う通り、俺はエクスカリバーを無くしてしまった。酒を飲んでからの記憶が少し曖昧で、何処に落としたかなんて覚えていない。……あれを失くすなんてとんでもない事をしてしまった。


「レオン様、偵察に出ていたメンバーが戻って来たんですけど、敵の住処には鬼なんて居なかった、と報告して来ました」


 待機していた俺達に、バスが報告をしてきた。後ろには偵察してきたギルドメンバーが控えている。うちのギルドメンバーでも、初期から偵察などを専門にしている奴だから間違えたとも考えにくい。


 俺がその事をアオイ君に伝えると、アオイ君は考え出した。そして


『今までは、あまりこちらから仕掛ける事が有りませんでした。ですが住処に居ないとは……鬼族にだって女子供は居る筈です』


 逃げ出した? それとも、ただ移動したのかな……そう考えていたら、今度はこの国の伝令の兵士が慌てて現れた。俺とアオイ君を見つけると、すぐに跪いて報告してくる。


『赤鬼率いる軍団が、待ち伏せをしていた我等の後ろから攻撃を……レオン殿達には至急救援をお願いしたく!』




 作戦は早くも失敗してしまった。

 引越しが決まりまして、それの準備とか色々有って……また更新が先になりそうです。

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