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魂の言語!!! って事で良いよね。

 今回も書き方を変えてみました。

 海の上を飛んでいる『アルトリア号』の中では、慣れない環境で選抜された連中の殆どが身体を壊していた。例外はアルゴの馬……ヒースだけだ! あの駄馬ですらヒースから逃げられない為に体調を崩している。飼い主のアルゴが寝込んでしまい誰も注意しないからヒースの行動を誰も止められない。


『もう……帰りたい』


 そんな駄馬が1度だけ外に飛び出した時が有った。飛行船にスピードだけなら並んだが……体力が続かずに再び中に戻って、ヒースに擦り寄られた上に疲れただけ。


 駄馬の苦しむ姿が面白過ぎる。


 そんな駄馬を見ていて笑っていた俺も、人事ではない状態だ。参加したメンバーの中に、ミーナさんが居たんだよね……この人の勘違いのレベルはピンクのリィーネといい勝負だと思うんだよ。


「私、空を飛ぶなんて思ってもいませんでした。凄いんですねレオンさんは」


 嬉しそうに飛行船の窓から外を見みてしゃいでるミーナさんは、治療が出来ると言う事で神殿が押し付けてきた内の1人だ。確かに割りとまともで家の領地でも人気はある。


「何だかドキドキしますよね」


 この人はわかっていないんだろうけど、発言には注意して欲しい! そのんな言葉を聞いた3姉妹の反応が、笑えない状態になってきている。


 最近は大きくなって、その辺の知識も付いてきたのか敏感に反応してくるから怖い。


「レオンさん……何でレオンさんの浮気の所為で、俺に被害が出るんでしょうね?」


 リュウの姿はボロボロで、所々の服が破けている。その上、俺の目の前に転がされているから恨めしそうに見上げてくる。そんなリュウに、メッサが傍に確り控えているから正直笑ってしまうよ。


 こんな賑やかな旅をしているが、問題も多いから技術者とかも多く乗り込んでいるし、船員達もここまでの長旅は初めてで緊張感が半端じゃない。そんな中で騒いでいる内の連中が凄いのか、馬鹿なのか……俺も含めて馬鹿ばっかりだな。


「父、ソフィー達が戻ってきました」


 立ち尽くしていた俺に、セイレーンが告げてきた。偵察に出していたラミア達が戻ってきたのだ。偵察目的と言うより、海で食事させる事が目的だ。餌の量とか聞いた時は本当に固まったね。


 空中で飛行船の倉庫を開けると、そこに2匹のトカゲが入り込んでくる。最初の時よりは上手く出来るようになっているな。……スピードを落として2匹の着艦を成功させている船員のレベルの高さが何気に凄いと思う。


『なんだこの野郎! 少しでかくなったからって威嚇して来てんじゃねーよ! やんのかこらぁ!!!』


 それなのに飛行船の中で暴れる家の連中……駄馬とトカゲの仲の悪さと言ったら、倍以上でかいトカゲに喧嘩で勝てる駄馬も異常だよな。


 馬鹿でかい魚? を咥えたソフィーが美味しそうにそれを食っている横で、駄馬とアンナが喧嘩を始める。この状況をなんとかしたら、船員の皆さんに後で謝っておこう。





 目的地の東方には、神殿の書類を見せれば大丈夫と言われて目指していた。そして目的地には着いたんだけど、やっぱり


「なんで俺達囲まれてんですかねレオン様?」


 ギルドからの参加メンバーのバスが、俺の横に来て聞いてくる。俺も聞きたいよ! 神殿の書類を見せたらしいが、責任者らしき人物は何だか反応が悪い。これは相当警戒されているね。


「説明したのに囲まれるとか……なんて言ったんだよ」


 通訳の出来る奴が、今回のメンバーに参加していない。と言うより、参加させる事が出来なかったんだ。東方の通訳自体居ないからね。それでも神官達が交渉する為に話をしに行くと、現在の状態になった訳だよ。


 本当に役に立たない連中だ。


 そう考えていたらミーナさんが、こちらに走ってきた。俺にどうにかして欲しいらしい。


「無理」


「そんな事言わないで、お願いします。誰も話が通じなくて困っているんですから」


 そう言われて、神官達と東方の兵士達を遠くから見る。神官達が明らかに大声で罵声を浴びせているのを、雰囲気で察した兵士達が怒っている。得物に手をかけている奴まで……なんで高圧的なんだよ。


 このままでは話が進まないから仕方なく近付いたら、なんと驚くべき事実が判明した!!


「何故、神殿が認めた言語を喋れんのだこの馬鹿共が! 神殿の庇護に有るならそれぐらい出来て当たり前だろうが」


『……隊長、この偉そうな男達って明らかに俺等を馬鹿にしてますよね』


『いきなり現れて騒いでる、と聞いて来てみれば……神官服に似ている物を着ているが怪しいな』


 なんと兵士達が話している言語が日本語だったのだ! 嬉しい! 本当に嬉しいです!


『すいません。彼等は頭が悪いんで許してやって下さい。俺の名前はレオンといい西から来たんですけどこの国の代表に会わせて貰いたいんですが……』


 そんな感じで近付いた俺に、逆に驚いた東方の兵士達が距離をとって近づけない。しかも何だか化け物でも見ている様な目で俺を見てくる。何故!!


『そこの後ろにいる妖怪を下がらせろ! 何なんだ……その馬鹿デカイ白い喋る馬は!』


 え?


 驚いて振り返ると、そこには東方の兵士の牝馬に愛を囁いている駄馬の姿が……


『ねぇ、可愛いね。どこの出身? イの国? 知らないけど君はとっても小さくて可愛いよ。俺の子を産んでみない?』


 ……そこには日本語で喋る駄馬の姿と、周りに集まりだした野次馬に絡むリュウの姿が有った。


『日本語ですよレオンさん! 本当に日本語が通じています!』


 この状況も不味いね。東方の国の人々が怯えているよ! 喋る馬なんて妖怪と勘違いしてもしょうがないと思うね。この際妖怪として駄馬を葬るか?


 しかしこのお陰で通訳の事は悩まなくても良くなり、そのまま自分達の事を伝える事が出来たし、目的も伝える事が出来た。だけど、かなり怯えられたのかかなりの兵隊に監視される事になった。






『勇者殿、何か必要な物は有りますかな?』


 俺の護衛、と言うか監視役をしている『アオイ・イヌヅカ』君が、厄介になっている神殿の施設……見た目は神社で俺に聞いてくる。かなりの腕前らしく、数百名の部下に指示を出しながら俺達の監視をしている。


 見た目は長い黒髪を後ろで縛り、着物を着て腰に刀を差していると来れば『武士』の美形の少年だった。もう、リュウが対抗意識を燃やして大変だよ。そんな彼も俺達の護衛をしているが、異文化に大変興味が有るのか連れて来た職人や技術者と俺を通して会話をする事もある。


『今は特に無いな』


 懐かしい日本語を話しているが、その所為でこの国の『イの国』の文官さん達と会話もする事になったり、と仕事が出来たんだよね。勇者の武具を直す為に来たのに、商人との交渉に職人同士の喧嘩の通訳とか勘弁して欲しい。


 この国に来てから早くも数ヶ月。その間にしている事と言えば、通訳と翻訳に神殿の素晴らしさを伝えようとする神官達の言葉を伝える事……ムカついたから中身はそれなりの事に変えておいた。神官は偉い、とか言ってる神官を見てドン引きしたよ。


『そうですか……しかし『飛行船』とは凄いですね。船よりも早く、そして空を飛ぶのですから』


 宿泊施設から、海に浮かんでいるアルトリア号を見ながら会話するアオイ君は、興味深々だった。確かに空を飛ぶなんて簡単に想像できない。この世界だと、空を飛ぶ魔物を飼いならす方に目が行くから余計に新鮮なのかもね。


『今までに西から来た人々は少なかったですから、神殿と言っても我々には場所を用意する事ぐらいしかしていませんでした。今回の件で我々も外に目を向けるべきだと話が出ています』


『その為に偵察かい? いや、調査か』


 少し気まずいのか、鼻の先を指でかいたアオイ君が


『あの飛行船はそれだけ脅威ですから……それにこの国にも『祝福』をする習慣は伝わっていました。その所為で姫様が……あの飛行船なら、妖怪の親玉も倒せるのではないかと』


 大した武器は付いてないんだよね。上空から岩でも落とす事くらいかな? 魔法が有ると銃とか作ろうとしないから……この場合は良い事かな。


『この国の姫様が、勇者なんて聞いてなかったけどさ。大変なんだろう?』


『姫様には生きていて欲しいです。でもこのままでは』


 この国にも魔王が居る事はわかっているらしい。けれど問題は、その関係を理解してなかったと言う事だ。その姫様に戦闘技能など無いと言うのだ! 何でもそんな事を姫様がする必要は無いと判断した。


 正解だと思うんだけど、それでこの国は魔王の対策に行き詰っているらしい。最近現れた魔王に全く歯が立たないこの国の兵士達。この国の王様も姫様を討伐に加える事を考え出している。


『あれは軍事機密の塊だから無理かな』


『そう……ですよね』


 そんな会話を聞いていた男が1人いた。


『話は聞きました! その姫様を救う事が出来れば、俺がその姫様を貰い受けられるんですね』


 俺達の後ろから現れたのは、アルゴとバスを引き連れたリュウだった。引き連れられた2人は、苦笑いを浮かべている。


「何の話かわかりませんけど、厄介事みたいですねレオン様」


 アルゴがアオイ君とリュウを交互に見ながら聞いてくる。リュウのアオイ君嫌いは本当にどうにかして欲しい。何故揉める事に率先して首を突っ込むのか理解できない。 アオイ君嫌いも、顔が良いからという理由かもしれないなこいつの場合は!


『これでも俺は、レオンさんの所で鍛えられた勇者ですから! そんな魔王くらい倒して見せますよ!』


 何でこんなに元気なのこいつ!


『本当でございますか! それなら私からも上に報告させて頂きます。是非ともリュウ殿のお力をお貸し下さい!』


 あれ?


『え、いや、そんなに言われるとは思っていなかったんだけど……まぁ良いか。任せろ俺の本気を見せてやる!』


『期待させて頂きます!』


 威張り散らすリュウに、アオイ君が頭をこれでもかと言うくらい下げている。その光景を不思議そうに見ていたバスが


「何の話をしてるんですか? リュウがまた勇者だって威張り散らしているなら、お嬢に報告して絞めてやりますけど?」


「お嬢って、エイミにか? 止めとけ……あの子の拷問が一番酷い事になる」


 しかし簡単に決めて貰っても困るかな?


『盛り上がっている所を悪いけどさ。俺達が魔王討伐……妖怪退治に参加するのは難しいからな。許可取ったり、準備したりするから時間かかるぞ』


 俺が2人に言うと


『え! 魔王ですよ? ここが勇者の出番ですよ』


 何でそれでお前が動こうとするんだよ! 他国の事は、基本その国の人間で何とかする物だろうし、武装してうろつくなんて考えられないよ。この国の人間も、胡散臭い俺達に動き回られたら迷惑だろうしね。


『……確かに難しいかもしれませんね』


 この話は一応流れたが


『詰まんないですね。何か面白い事無いんですか?』


 リュウのこの一言で、アオイ君が気を利かせたんだよね。放っておいて良かったのに


『では、観光でもされますか? この近くに精神の洞窟が有ります。中は危険ですがその手前までなら景色は中々の物ですよ』


『なんか良い響き! 『精神の洞窟』ってまさか修行場所ですか?』


 やたらとその洞窟について聞いてくるリュウに、アオイ君が引いている。そんなに修行したいのかこいつは? マゾだとは思っていたけどここまでとは……


『は、はい。大変危険で、何十年前まで修行に用いられていました。今では誰も使用してはいません。精神の洞窟ではその人物の最も見たくない自分と向き合うらしいですから……最悪は心を壊されるか、自分に殺されると聞いています』


 よく聞くパターンだな。それで心の弱さを克服するイベントか? 俺なら全力で拒否するけどね。人間誰しも心にやましい事の一つや二つ有る物さ。


『自分を超える……格好良い』


『馬鹿言ってないで観光で我慢しとけ。俺はこれから職人達の所に様子を見に行くから……間違っても洞窟に入るなよ?』


『わ、わかってますよ!』


 リュウに自重するように言っている俺を見ているアルゴとバスが、話の内容がわからずに困っていた。すぐに説明しておいてリュウを見張らせて置くかな。


「何を話してるんだろうな。騎士さんはわかる?」


「……レオン様が良い事を言った気がする! 俺にはわかる」


「マジで!! なんて言ったのか教えてくれ。お嬢に報告しておかないと」


 しまった! こいつ等に見張らせても問題がおきそうだ!






 イの国の兵士に囲まれながら、俺は鍛冶師の所を目指す。実家からも鍛冶師を連れて来ているから、歴代勇者の武具の作成も進む筈と思っていた。だって壊したなら、その時の状況も知っているだろうから役に立つかと思うだろう。


 そんなに上手く行くとも考えていなかったけど、俺の想像以上にイの国の技術が高かった為に職人達もいい刺激になっているようだ。その所為で通訳の仕事が増えるんだけどね。


『勇者殿失礼ですが、先程のイヌヅカ殿との話の事は本当ですか?』


 俺の監視をしている若い兵士が聞いてくる。歩きながら他の兵士達も興味が有るのかこちらに耳を傾けている。


『どうかな? 倒した事も有るけど、この国の妖怪なんか見たこと無いしね』


『倒した事はお有りなのですよね?』


 やけに食いつくな。倒した事も有るけど、その内まともに戦ったのは相性の良かった1体だけなんだよ。他の奴は数の力と自然の力で倒したもんだしね。


 適当にはぐらしながら鍛冶場を目指して歩いていたら、鍛冶場から雄たけびが聞こえて来た。職人達が喜びの声を上げていたんで俺も何か良い事が有ったと思い走ってその現場に向かったら


「見て下さいよレオン様! 遂に完成したんです」


『これは中々の出来だぜ……もう壊したりするなよな』


 そこには喜んでいる職人達の姿があった。完成した、いや、生まれ変わった歴代勇者の武具は、輝いて見えるくらい存在感を放っている。全身鎧の横には、前は鞘に付けられていた宝石を付けられた槍が置かれていた。


「凄いな。まさかここまで凄い物を作るなんて……ありがとう」


 俺が、職人達に握手して喜びを表していると聞きたくない一言を言ってくる。耐性が付いている俺でもその一言には叫ばずにはいられなかった。俺は自分専用にしてくれなんて一言も言っていない。『元に』戻してくれと言ったんだ!


『ああ、お前専用の特注だ。大事にしてくれよ』


「え?」


「レオン様の鎧を参考にして有りますから、使いやすいと思います。なんでも凄い加護を附加された鉄らしくて加工が大変でした」


「ちょっ!」


『この後は、お前んの所のお嬢さん方からの依頼で鎧を仕立てる事になってる。何でもお前の鎧とお揃いが良いらしいから先に仕上げたんだぜ』


「セイレーン様の要望だと大剣と大盾になるんですけど、本当に片手で扱えるんですかね? あと、ラミア様の槍を4本って予備が欲しいと言う事ですか?」


『大鎌って武器なのか? あの金髪のお嬢さんは、他にも隠し武器が欲しいとか言ってたけどよ。隠し武器って言っても種類とか多いから困ってんだよ』


 職人達が次の仕事の事を聞いてくる中、俺は自分専用に仕上げられた鎧を見ながら困り果てていた。


『しかし、相当お嬢さん方に好かれているんだな。鎧の造形とかに口出ししてきた時は、腹も立ったけどよ。大事にしてやるんだぞ』


 まさかの3姉妹の所為でこの状況か! 俺の鎧を仕上げるように職人と交渉するとか思っていなかった。……あれ? 3姉妹はこの国の言葉を話せない。なら一体誰が……リュウか!!


「ポチ殿が通訳にこられた時は驚きましたけど、流石はレオン様の馬ですよね」


「あの駄馬!!! 最近見ないと思ったらなんて事してくれたんだ!!!」






 その頃、観光に精神の洞窟に来ていたリュウとアオイの後ろを付いていく一団がいた。見張りと称し洞窟付近の景色を楽しんでいる6人……3姉妹とアルゴにバスの5人は、アオイの説明をリュウに通訳させながら観光を楽しんでいた。メッサは、相変わらずリュウの傍に控えている。


「お姉ちゃん、この木の実美味しいよ」


 アオイに教えて貰った食べられる木の実を頬張りながら、ラミアは姉のセイレーンにも進めている。


「ラミアも食べてないで、作戦を考えてよ」


 アルゴは、そんな2人の作戦の事を可愛い物だと思いながらほのぼのとした雰囲気で歩いている。その後ろには、バスを従えたエイミが近くを流れる川を見ていた。


「綺麗な川ね。……ここにレオン様を誘えれば雰囲気作りは完璧よね!」


「間違いないです! お嬢は流石っす」


 そんな後ろの一団を見ながら、リュウはため息を吐く。この猫かぶりの3人の事をいっそレオンに伝えようか悩んでいるのだ。この前もポチを脅してレオンの鎧作成に口を出していたのを思い出している。


「死んで欲しくないのはわかるけど、勇者の武具を受け取ってもレオンさんは喜ばないと思うけどね。大体、ツックンを脅した時とレオンさんへの対応の差が酷過ぎるよ」


 呟いた言葉にメッサが珍しく答える。誰も反応しなかったのを、哀れんでいるのかも知れない。


「何時もの事かと……レオン様は気付いておいでですよ。ここ最近の3人の露骨な誘いにも呆れておりましたし」


「……知ってる。だから余計に厄介なんだよ。何で嫌がるのかな? レオンさんも女は大好きで、それこそ隠れて遊んだりもしてる。でも3人にリィーネさん……エリアーヌにも手を出そうとしない。贅沢なんだよ!!!」


 そんな会話にアオイが興味を持ったのか質問してくる。


『レオン殿がどうかされましたか? 先程から名前が何度か聞き取れましたが』


 その言葉にリュウが、何時も言えない不満を3人の前で堂々と日本語で喋りだす。今のこの集団で力関係的に底辺のリュウが、強気に出る事は出来ない。


『大有りだよ! あの人にどれだけ苦労させられてきたか……あの人の女性関係で、俺とツックンがどれだけ被害を受けているか!! 後ろにいる3人なんか特に酷いんだ。レオンさんが他の女の人を見るだけで嫉妬するし、八つ当たりする。そこが駄目だって、馬鹿だから気付かないんだよね』


 リュウの凄い剣幕にドン引きのアオイは、表情を悟られないようにして話を聞く事にした。


『目立ちたくない! とか言いながら一番美味しい所を持っていくんだからたまらないよ。結婚の時も最後まで反対して……嫌なら形だけでも良かったんだ』


『……きっと理由が有るのかも知れません』


 真剣に聞いていたアオイが、リュウに答えた。その表情は何処と無く悲しそうだ。


『理由?』


『あ、私は余り詳しくありませんが……目立つ事を好まないのも、結婚を反対したのも何か考えが有るのかと。とても頭が良いとお聞きしましたので』


 その返答に笑い出すリュウ


『無い無い、あのレオンさんが頭が良いなんて冗談みたいな話だよ。目立ちたくないのに組織を作ったり、飛行船を完成させるし、もう目立ちたいの? って聞きたいね。聞いたら殴られるから言わないけどさ』


 その会話を無表情で聞いているメッサは、アオイの表情をそれとなく観察していた。今の話の内容はわからなかったが、名前が話に出てきた所を考えて女性関係の話だと考えていた。


 その話で、悲しそうにしているアオイに好きな人でも居るのかと思っていた。ついでに、主を後ろの集団が睨んでいる事を伝えようか悩んでもいる。


『好きな方が居るのかも知れませんよ? それにレオン殿が居なければ大変だった、と職人も言っておりました。話を聞くと馬鹿とは思えません』


『好きな人か……何時だったか昔の事を聞いたら、結婚前だったとか言っていたけどそれ以上聞けなかったんだよね』


 そんな話をしているリュウの後ろでは、メッサが諦めた顔をしていた。言葉は理解できないが、名前を何度も出せば誰の事を言っているのかはわかる。


 そして話しているリュウの性格を理解している3姉妹には、リュウの態度からどんな事を話しているか大体わかってしまう。……わかってしまったのだ。


「おい。そこの変態野郎……今の話を通訳して私達にも教えろよ。それとも喋れるように手伝ってやろうか? 毒か、呪いか、それとも下半身を石に変えてやろうか? 選んでいいぞ」


 リュウが振り向くと、とても悪い笑顔のエイミが自分の隠し武器を取り出していた。その後ろでは、バスが指を鳴らし、セイレーンとラミアが微笑んでいる。アルゴだけが、のほほんと状況を見守っていた。


「え! あの……今の話は別に大した事は」


「リュウ様、あれほど何度も名前を連呼して、あの喋り方とアオイ様の態度を見れば大体の事は理解できるかと」


 メッサがリュウに止めを刺す。そしてリュウの悲鳴は、その場から少し離れた場所まで聞こえていたと言う。

 リュウも駄馬も苦労している? 今回は3人称の練習もかねてこんな形に……難しいよね。


 次回の更新は期間がかなり開くと思います。

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