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実はこっちが23話……ごめんなさい。

 今回の話は長い気がする。適当に一話で纏めればよかった。こんな感じですが楽しんで頂けたら幸いです。

「申し訳ありませんでした!」


 朝のアルトリア中央神殿で、俺はハースレイの前で頭を下げています。破壊してしまった歴代勇者の武具を前にして、疲れ果てたハースレイは溜息を吐いています。


「全く、これだけの事をして許された事に感謝して下さいよ。総本山からは、資料の内容が届けられました。……元に戻すのは不可能だそうです。」


 流石に難しいよな。歴代勇者の皆さんごめんなさい。


「ですが、東方の国に技術を伝承している鍛冶師が居るかもしれない、と報告が来ています。これに望みをかけようと考えて、総本山から『船』を寄越してもらう事になりました。」


 船? アルトリアにも港は有るのに、わざわざ神殿の総本山から寄越すのか……


「見たらきっと驚きますよ。『エルガーネ』はただの船では有りませんからね。」


 自慢げに言ってくるハースレイに腹を立てながら、今回の自分のした事を考えてここは黙っていた。聞きたい事も有るが、必要なら言って来る筈だ。その時に説明を受ければ良いかな。


「それよりも、昼からはアステアの姫君との勝負をされるのでしたな。これ以上、面倒な事を起こさないで欲しい物です。」


 話を逸らしたいのにネチネチと……歴代勇者の武具が『それよりも』で済む方が可笑しいとも思うけどな。


「しかし今回の件には驚きました。あの王妃様が、他国との結婚を認められるとは……何か裏が有るのですかな?」


 俺に聞くなよ。俺だって詳しい事は聞いてないんだ。予想しても俺の結婚に利益が有るなんて想像出来ないのは確かだ。俺の逃げ道を作るようなものだし、王子様達との関係が修復不可能に感じられる。


 ……もしかして、使い潰す気かな? その為に理由作りをしているとか? 結婚を破談にするのは間違いじゃあ無かったな。今後も敵意が無いように振舞っていこう。


「無いと思いたいな。エルガーネは何時ごろ港に来るんだ?」


「港には来ませんよ……この王都に直接来るのですから。」


 また訳のわからない事を言ってるよ。ここに直接来る船……飛行船のようなものかな? でも、そんな乗り物は今まで見たこと無いんだが?





 それからしばらくして、俺は家族とその他を連れて昨日の顔合せをした場所に来ている。昨日の条件から考えて、セイレーンにラミアは問題無いし、エイミも大丈夫だと思う。駄馬は、俺がハレームを維持している事を知っているし、リュウに至っては問答無用で拒否するように言い聞かせた。


「完璧じゃないか!」


「何が完璧かはわかりませんけど、お姫様達も来た見たいですよ。」


『帰りてー、早く済ませろよ。これから昨日回れなかった馬小屋を巡るんだからな。』


 何時もの様に役立たず共が騒ぐ中、俺達が待ち構える前方からピンク頭を筆頭に、エリアーヌ皇女と女性騎士がそれに続いて歩いて来た。その後ろには、黒いローブに身を隠した3名が控えている。

 騎士団の連中も、俺やピンク頭の周りを囲んで緊張している様だ。しかし、見るからに戦闘力の才能の無い連中を黒いローブで隠している意味はなんだ?


「こんにちはレオン様、書類にサインをして貰いますよ。」


「昼なのに寝ぼけているのか? サインなどしないからな!」


 笑顔でお互いに挨拶を済ませたが、その内容は食い違っているままだ。周りを見ると、騎士団が道を空けた所から王族の方々のご登場だ。だが少し様子がおかしい。


「父、王子様達が父を哀れむ様に見ています。なんだかリィーネを恐れている感じもしますよ。」


 セイレーンが、俺の袖をつまんで軽く数回引きながら聞いてきた。確かに昨日の反応とは違うようだな。まあ、問題無いないな。これで王子様達もリィーネと結婚できる事になるんだから、喜んでくれている筈だ。


「それに、アステアの人達もなんだか祈る様にこっちを見ていて……気持ち悪い。」


 ラミアはセイレーンの隣に立ち、アステアの王様と大臣、そして青竜騎士団を見て感想を述べた。意外と二人とも怖い物知らずだな。王族相手には、気をつけて発言して欲しい。


「レオン様、こちらの用意は出来ていますよ。誰から納得させれば宜しいのですか? 因みに、御実家のご家族からは了承を得ていますからね。」


 抜け目の無い奴だ。だが、俺の勝ちは揺るがない!


「私は、絶対に納得しません! レオン様の結婚には反対です。」


 流石はエイミだ。先陣を切り、前に出たエイミが両手を腰に当てて反対だと明言した。これをどう納得させるつもりだピンク頭!


 しかし慌てる様子も無いピンク頭は、黒いローブを着た者を一人呼び出した。ローブを脱ぎながら歩いて来たのは、鍛え上げられた肉体を見せ付けるかのようにピチピチの服を着た男だった。

 髭が濃く剃っているのに青く見えているのに、肌は異様に綺麗だ。髪も確りと整えられている。……なんだろう、近づいてはいけない気がする。


「私の相手はお嬢ちゃんかしら? 良いは、魅せてあげる。」


 構えた男が、エイミに近寄る! 普段なら止めるが、これも勝負だ。酷くなるようなら止める事にしよう。しかし……戦闘向きの才能も有るんだが、この男は明らかにエイミよりも弱い感じだ。ピンク頭め何を考えている!


「く、くるな!」


「怖がらないで、そう先ずは……その黒い服からかしら? それから髪型も変えてみたらいいと思うの。最近の流行は……」


 構えたエイミに接近した男は、何時の間にか多くの服や装飾品を騎士達に持ってこさせエイミを人形のように髪を整え始めた! 女性の使用人達が更に参加して、即席の個室で着替えも始めたのを見ていた俺は唖然とする事しか出来なかった。


「どうかしら?」


 個室から出て来たエイミは、大きな鏡を持つ男の言葉に嬉しそうにしている。


「こ、これが私? なんか今までと違う……」


 その嬉しそうなエイミに、ピンク頭が後ろから近付いて何やら耳打ちすると、エイミが俺とピンク頭を交互に見始めた。どうしたエイミ! そこで拒否すれば終了だ。服なら買ってあげるから悩まないで!


「まだ納得出来ない様ね。それなら今度はこちらから……リュウ殿とポチ殿に納得して貰いましょう。」


 ピンク頭が、悩むエイミを保留にして今度は指名してきた。搦め手で来る計画か! 恐ろしい奴だ……しかし、今度の二人は服や装飾品になど釣られない。俺がそう信じて二人を見ると、


「凄い! 完璧な『メイド服』ですよ! これなんですよ俺の求めていたメイド服は! 機能だとか目立ってはいけないとかそんな事を無視した本物のメイド服……完璧だ!」


『降りて来いよ! 降りて来て俺と交尾しようぜ!!!』


 もう、俺の事を無視して欲望に身を任せた馬鹿達がそこに居た。リュウは、黒いローブを脱いだ同じくらいの年齢の少女の着ている、フリルの付いた仕事着でないメイド服に夢中だった。


「お、お前等! 約束が違うじゃないか! リュウ、何考えてんだよ。早く拒否しろよ!」


 リュウに声をかけるが、全くこちらの意見に耳を貸さない。そればかりか、またも耳打ちするピンク頭に物凄く頷いて、


「俺は認めます! リィーネ様がレオン様の奥さんになるべきです。」


 こ、こいつ裏切りやがった。こうなれば駄馬のハーレムを盾にして駄馬だけでも……


『俺のペガサスちゃん! 降りてきてよ。でないと俺からそっちに行くよ。』


 駄目だ。もう相手のペガサスに夢中で、二足歩行で空に前足をバタつかせていて聞いていない。空を飛んでいるペガサスは、オセーンの騎士……顔合せの時にいた女性騎士が乗っていた。

 オセーンの近衛騎士は、数頭のペガサスを所持していると聞いていたが、まさかこの王都に持ってきていたのか。


『もう地上に居ながら天国に連れて行ってやるからさ!』


「ポチ殿、いかがですか? これで結婚の件をみとめ、」


『帰れ小娘! 馬になってから出直して来い。見てわからないのか? 俺は忙しいんだよ!』


 声を掛けたピンク頭になんて事を……ヤバイ、凄く面白かった。固まったピンク頭が間抜けに見える。二足歩行で前足バタつかせている馬に怒られている姿は、一生忘れられない光景だよ!


『そこの勇者なら好きにしろ……だが、俺の邪魔だけはするな! ペガサスちゃん降りて来てよ! 俺のハーレムのメンバーになったら後悔なんかさせないよ。』


「駄馬!!! 何言ってんだよ。認めないで何時もの様にしていれば問題なかったのに……」


「……レオン様、これで後三人ですね。最後のカードは強力ですよ。」


 固まった状態から復帰したピンク頭は、自信を取り戻したのか強気になった。……まだだ! まだ諦めない! 残りの3人は、頼りになる3姉妹だから問題など無い。


 俺の諦めない目を見たピンク頭が、最後の黒いローブを着た者を呼び出す。搦め手で来ると思っていなかったから、才能を見る時に戦闘能力を中心に見てしまって気付かなかった。下手に三人とも強かったのも気付くのを遅らされた原因だろう。


 次の相手はどんな奴かな? ……最悪だ! セイレーンとラミアにとって最悪の組み合わせだ!


「さあ、セイレーンちゃんもラミアちゃんもあちらに用意が出来ていますよ。」


 ピンク頭が示す方向には、火を起こした上に鉄板を置いた……この世界のバーベキューだろうか? 問題はそこでは無かった! 相手が料理人と言う所が問題だ。


「気安く『ちゃん』を付けないで欲しいですね。」


「お、お姉ちゃん! あれを見て!」


 用意された鉄板の上で腕を振るいだした料理人を見たラミアが、セイレーンの腕を引いてその場に近付く……ま、負けてしまう。このままでは負けてしまう!


「何このお肉! 色が何時も見ているお肉と違うわ!」


「ああ、なんて美味しそうな……はっ! ちょっと厚く切り過ぎてるじゃない。」


 料理されているのはステーキなのかな? あの二人の好きな物だ。一度だけ家の庭で焼肉風な事をしたら、二人の奉行に散々怒られたな……懐かしい思い出だ。


「大丈夫です。最高の焼き加減にしてご覧に入れますよ。」


 自信満々に答える料理人は、腹も出ていて何処にでも居る中年の男性だが、その腕は太くて顔は自信に満ち溢れていた。白い服装に赤いスカーフが似合っていて格好良い。


「そんな裏技が有ったなんて!」


「でもバランスが悪くない? 野菜が無いなんて考えられないんだけど。」


「まだですよ。ここでこれを用意して有りますが、まだ調理しません。最高のタイミングで……」


「凄いよお姉ちゃん。このまま行くと野菜まで美味しく食べられるよ。完璧だよ。」


「なんて腕なの……お名前をお聞かせください。」


 ねえ、忘れてないよね。これが勝負だって忘れてないよね? そう考えていると、ピンク頭が二人に近付いてまたもや耳打ちをしている。


「それ反則だろう? さっきから卑怯だと思うんだけど。」


「……父、結婚おめでとうございます。私もラミアも賛成します。」


「おめでとう。」


 ああ、やっぱりか……この二人には相性の悪い戦いだったな。それよりもおめでとうを言う時くらいお肉から目を離そうよ。そんなに美味そうなのかな? 俺も食べていいかな。


「レオン様おめでとうございます。」


「え、エイミまで……その服可愛いね。」


 褒めると喜んで違う服を見せる為に着替えに行くエイミを見送る俺の横に、ピンク頭が嬉しそうに立っていた。


「俺もお肉食べに行きたいんだけど。」


「では、サインをして頂けたらご用意しますよ。」


「……それだけは嫌だ!」


 現実逃避を諦めて再び現実と向き合う俺は、強敵たるピンク頭を前に構える。手加減など出来ない……いや、許されない戦いだ。そう思っていたら視界にルーゲルさんが入って来た。俺を呼びに来ているみたいだ。


「レオン殿、王妃様達がお呼びです。」


 助けてくれるんですね王妃様! やはりあなたは俺の気持ちを理解していてくれた……そんな筈無いな。何時も勘違いしてたし、


「王子達が、一言言いたいと言っているので聞いて頂けますかレオン殿。」


 王族に囲まれた俺に、拒否権など無いから頷いて王子様達の方を見る。嫌味の一つでも聞いてやる度量くらい俺にも有る。この内の1人があのピンク頭と結婚すると思うと哀れに思えるしな。


「リィーネを幸せにして繋ぎ止めておいて下さい。レオン殿にしか出来ない事です。」


「え?」


「私も兄上と同じ気持ちです。あの性格にはたえら、私達には勿体無い。レオン殿みたいな勇者ならばきっと耐えられます。」


「……ぴん、リィーネ様の事が好きなんですよね? ここで諦めてはいけないと思いますよ。」


 二人の態度と言葉から、大体の事は理解できた。この二人も気付いたのだろう……あのピンク頭の本性に! その上で俺に押し付けようと言うのか。


「レノールの言う通りです。私達には勿体無いから、是非レオン殿に……このまま破談したら私にリィーネとの結婚の話が来てしまうんです! お願いだから助けて下さいよ!」


 本音が出た! そんなに嫌な相手を俺に押し付けようとしている事に気付いてるよね!


「あの女は無理! 私達は性格に難の無い女性を求めます。国の為にここは犠牲に……父上からも一言お願いします。」


 その言葉を聞いて、俺の前に出て来た王様が、俺の肩に手をおいて一言、


「毒を持って毒を制す。」


「流石ですね父上!」


「やはり最近の父上は違いますね。」


「何時もこうなら良いのに……」


 ご家族で盛り上がっている所を悪いんだが、何を言ってるのかわからないよ。毒って何? 何の事だよ。


「レオン殿、わしからも頼む。このままではリィーネは行き遅れてしまう……あんな子になるなんて……昔は良い子だったのに、」


 アステアの王様が、昔を懐かしむようにハンカチで目元を拭いている。振り向いてピンク頭を見ると勝利を確信したのか高笑いしていた。嫌だよ! そんな女と結婚なんかできねーよ。


「レオン殿は少しこちらへ、」


 それでも否定的な顔をしていた俺に、王妃様からお呼びがかかり二人して席を外して少し離れた場所で騎士団に囲まれて話を始めた。


「結婚なさい。これは命令です。」


「真剣にお断りさせて頂きたいです。大体、俺が他国のお姫様と結婚なんて何の利益も有りませんよね?」


「どうしても嫌ですか? 今なら王子達もレオン殿に感謝しますよ。自分達を救ってくれた恩人として、今後も大切にしてくれます。」


「なんで急にこんな事になったんですか? 昨日と全然違うじゃあないですか。」


 少し考え込んだ王妃様は、何かを思いついたのか悪戯っぽい笑顔を浮かべた。そして顔を近づける……む、胸が!!!


「実は昨日の飲み屋での一件は、あの子達の仕業なのです。それで情報が届くと結婚する事が嫌になったようで……それでも、この結婚が破談してもアステアとの友好の為にどちらかは結婚しないといけない、と朝方話した時には顔を青くしていましたね。」


「嫌になったって事ですか? 俺も嫌なんですけど……」


 話しているが、内容が上手く頭に入ってこない。どうしよう……凄く柔らかい。


「結婚と言う事実さえあれば問題無いのです。後で、自分の好きな女性を囲んでしまえば良いではないですか。」


「ま、まぁそうですけど。」


 いかん、どうしても胸に集中してしまう。だがここでいい加減な判断をしたら、一生後悔してしまう。それだけは避けなければ、


「大丈夫ですよ。屋敷に押し込めて仕舞えば、問題なんか有りません。それに、今回の結婚を乗り切ったとしても良い事なんて……王子達には恨まれて、アステアの王族を敵に回します。それなら……ね?」


「い、いやでも」


 そんな会話をしている時に悲劇は起きた。





『ちょっ、お前……それは洒落になら……な、い』


「ツックーーーーン!!!!」


 叫び声の方向に目を向ければ、そこには倒れた駄馬とそれを見下ろす黒い馬……ヒースの姿があった。駄馬にリュウが駆け寄り必死に声を掛けている。


「ヒース! 何て事をしたんだ。」


 ルーゲルさんがヒースを駄馬に近づけない様に離そうとするが、ヒースはその場から動こうとしない。騎士団の連中が、梃子摺っていた。


 角からは駄馬の血が滴り落ちている。あの角で刺したのか! そんな事よりも駄馬の様子が心配で、俺も駄馬の傍に駆け寄る。


「大丈夫かポチ!」


 俺の言葉に反応は無いが、何かを呟いていた。リュウと一緒に駄馬の傷口を手で塞ぎながら、俺はその呟きに耳を傾ける。擦れて、時々血まで吐いている駄馬の呟きは、


『ぺ、ペガサス……』


「お前は、こんな時まで……大丈夫だぞ。助かるから今は喋るな。」


「レオンさん! 血が、血が止まらないんです。このままだとツックンが!」


 慌てる俺達の周りには、騎士達が周りに立っていた。傷口から助からないと判断したのか悲しそうな顔をしている。俺だってこんなに深い傷で助かるなんて思っていない! けど、


「何突っ立ってるんだよ! すぐに治療できる魔法使いでも呼んで来いよ。ポチが死んだら……」


 俺の傍にピンク頭が来ると、血を見て気が動転しているのか声が出ないようだ。今は相手をしている暇は無い。


『…………俺は……あき、らめ……ない!』


 傷口を押さえていた手を力強く押し返すように立ち上がろうとするポチは、空を飛んでいるペガサスに頭を向けてふらつく脚で立ち上がった。


「駄目だよツックン! 死んじゃうよ!」


「ポチ、もう良いよ。もう良いから、お前の好きにしていいから今は、」


 そう言って傷口をまた押さえようと手で触れると、駄馬の身体が光り輝いた。金色に光輝く駄馬の傷口は、まるで傷など無かったかのように塞がっていた。それどころか、その輝きのように更に力強くなったかのように錯覚すらする。


『俺は……飛べる!』


 そう叫んだ駄馬は、いきなり走り出して周りを囲んでいた騎士達の頭の上をジャンプして……着地をしなかった。正確には、そのまま空を走っていた。唖然とする血だらけの俺達を残して、駄馬は空を駆けている。


『今行くぜ!!! 俺のペガサスちゃん!!!』


 この気持ちをどう表現したらいいのだろう? 俺は、逃げるペガサスをそれ以上のスピードで追いかける駄馬の姿に、昔からの疑問を心の中で呟く事しか出来なかった。お前は本当に馬なのか! これだけしか思えなかった。


「リュウ様、血を拭き取らせて頂きます。」


 空から声のした方へ視線を変えると、そこには唖然としているリュウの身体や服に付いた血を拭き取っているメイドの姿が……この子が一番立ち直りが速かった。他の連中はまだ空を見ているし、


 そして空からは、オセーンの女性騎士が何やら叫びだした。


「く、来るなーー!!」


『逃げんなよ。直ぐに済むから……』


 確かにあんな状況になったら俺でも泣き叫ぶな。俺達の上空で、泣いている女性騎士を責める事の出来る奴はいないだろう。居ないと信じたい。


「これだから帝国の騎士は……それよりレオン様、サインをお願いします。」


「……」


 まだ完全に立ち直っていなかった俺は、言われるままにサインしていた。正直、それからしばらくはサインの事なんか考えられなかったんだ。だって、


「レオン様の馬は空を飛べるのですね。少し驚きました。」


「俺も初めて知った。……一度夢で見たけど、まさか正夢になるなんて……」


 隣に来ていたエリアーヌ皇女が、俺を尊敬している様な目で見てきていた。この子も勘違いを……今はどうでもいいか、問題は駄馬が空を飛ぶ夢が正夢になったと言う事だ。


「ジョン達は……喋らないよね?」


 騎士団や王族が、唖然としている中で王女と皇女達が喜んで、メイドがせっせとリュウの世話を焼いているこの状況を誰もなんとも出来なかった。






 夕暮れの光の中を空を飛んでいる一隻の船が、全速力で逃げていた。海の上を、空中を滑る様に飛んでいるその船は、海で使われる船と細部は違うが殆ど一緒の形をしていた。だが、所々から煙が上がっている。


「逃げ切れないのか!」


「駄目です。向こうの方が速度が有る様で……」


 神官服を着た男が、船員に詰め寄り答えを聞くと上空を見上げて舌打ちをした後に呟いた。


「ワイヴァーンが、この付近に居るなどと聞いた事が無い。攻撃魔法が大して効かないのもおかしいな……それにまだ幼い様だが、大きさが異常だ。」


 船の更に上空を飛んでいるワイヴァーンを見つめている神官は、時々来る敵からの攻撃に備える為に魔法使いに檄を飛ばし始める。このいたぶる様な攻撃を不思議に思いつつも、それ以上の対処を思いつかなかった神官は目的の事だけを考えようとしていた。


「もうすぐアルトリアに着くんだ! それまではなんとしても持ち堪えろ!」


 その言葉に反応したのか上空の敵、ワイヴァーンからまた攻撃が繰り出された。炎の塊が船に近付き、それを防ごうと水の盾が張られるが……その盾を突き抜けて炎は船に命中する。しかし船を沈めるほどの火力では無い。


「奴め……遊んでいるつもりか!」





 そのワイヴァーンも船と同様に、アルトリアを目指している。

 飛んでしまいましたね。駄馬の能力ってかなりオーバーしているんじゃないかな? 深く考えて設定してないから自分にもわかりませんが(笑)


 レオンは結婚ルートですね……ピンク頭の不人気に一時はストーリーの変更も考えましたが、最初に考えたストーリーにしました。


 一応重要キャラですし、王子様達との友好イベントですから……

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[良い点] 最初からヒドイン作家としての才能が溢れてたのか…
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