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内政って難しいよね?

 今回は勘違い少なめ?

 その日は、私の誕生日でした。両親に頼んだ『兄の手紙』を貰って、自分達の部屋でその手紙を弟と共に読んでいます。あの『勘違い野郎』の化けの皮を何時か二人で剥いでやる為に、今は情報収集を優先しているんです!


「姉さま、なんか『帰りたい』とか『逃げたい』ばかり書いてますよ。……本当に凄い奴なんでしょうか?」


 可愛い弟のリートが、不審そうに手紙を見ています。確かに、ネガティブな言葉が並べられただけの手紙です……が!


「騙されては駄目よ! あいつの事だから暗号化しているかもしれないわ! それよりも弱味を見つける事を優先しましょう。」


 そして読み進めていくと……


「……神官を『ちょび髭』とか書いてますよ! しかも王様を『影薄過ぎて羨ましい』とか嫌味を書いてます!」


「私も見つけたわ! こっちのは『国外に逃げたい』……重犯罪者決定ね!」


 その後、喜んで両親に報告に行けば……


「なんだ、そんな事か……二人とも、これはレオンのジョークだよ。まだ二人には早かったかな?」


 父は、最初は驚いたけど内容を聞くと大した事は無いと……結構問題だと思うんだけどな? それとも、この程度だとあいつには問題にもならないのか! 敵は相当に手強い。


「姉さま、僕達はあいつに勝てるのかな?」


 弱気になる弟は、肩を落としている。私も勝てる気がしないけど……


「諦めては駄目よリート! 私達は、何時かあいつに勝って認めさせるの! あいつの代わりなんかじゃあ無いって! その為にもリートは立派な領主になって、私はあいつの情報をまとめるわ!」


「うん!」


 見てなさいよレオン……何時かあなたの化けの皮を剥いでやるんだからね!





 アステアの王宮は、忙しそうに人が働いている。何時もならこのような事は無いのだけれど、急遽予定が組まれたために、この忙しさと言う訳です。

 文官は書類に追われ、武官達も人員の選抜にと急がしそうに動いています。父上もその予定に合わせる為に仕事に掛かりきりです。


 そして私は……


「リィーネ様、こちらが調べさせた情報の報告書になります。そしてこちらは調査員が必要と判断した情報の報告書となります。」


 使用人から報告書の束を受け取ると、私はそれに目を通します。父上から言われた私の婚約者は、アルトリアの王子からレオン様に変更になりました。元々結婚など相手を選べませんから、気にもしていなかったのですけど……最高です父上!

 父上の判断と、これを思いついた大臣は天才です! 私がレオン様に嫁げば、レオン様とアルトリアに溝が出来て、レオン様はアステアを頼ることになる。

 アルトリアの王子が、私を気に入っていると言う情報は確かな物ですから、このまま行けば確実に祖国の為になります! ……そして私の為にもなります。


「……オセーンにも動きが有るのですか? オセーンの皇族には確かに多くの皇女が居ましたけど……アルトリアが認めた理由がわかりませんね?」


 報告書の中には、オセーンもレオン様との婚姻関係を望んでアルトリアと交渉を進めている、と書かれていました。

 アルトリアの王妃様はオセーン領を狙っていた筈では?


「……未確認の情報では、雌狐がアステアに対抗する為にこの話を進めているのではないかと。」


 ……私との話を進める為に、我が国は相当な無理をしたと言うのに


「資金に物資と色々と要求しておいて、ここでオセーンですか……流石はアルトリアの雌狐ですね。」


「り、リィーネ様! この話はまだ未確認で、」


「大丈夫ですよ。私は、この話を祖国の為にどんな事をしてもやり遂げますから……それで、オセーンからは誰が?」


 怯えている使用人に優しく聞くと、


「勇者でもある『エリアーヌ』様が候補に挙がっております。」


 ユーステアの妹? 切り札をここで切ると言う事は相当厳しいのかしら? この前からアステア、アルトリアにその周辺国からも相当抗議されたようだし……アルトリアに至っては、戦争まで考えているから焦っているのかしら?


「……それと、レオン様は年下好みでは無いようなのですが……胸にかなりこだわられる方のようでして……」


「それは、私の胸が小さいと言う事かしら?」


「ーーーー!!!!め、滅相もございません! ただ、情報としてお知らせしておこうと(誰も報告書に書こうとしないから、なんて言えない!)」


 気付いていた。確かに他の女性よりも控えめでは有るという事には、だけど無い訳じゃ無いのよ! 他よりも小さいだけなの!





 歴代勇者の武具を破壊した事を手紙で報告したら、ハースレイからの返答の手紙には、


『なんて事してくれたんだ! この事が総本山にしれたら私は殺されてしまう。だから、これからの対応を考えるから一度王都に来てくれ!』


 隠そうとしているね。そんな対応ではいけないと思うから……王妃様経由で他の神殿の関係者に報告しておいた。ハースレイは、ばれた時の事を考えたりしないんだろうか? 隠そうとした事実は伏せておく事にして、これでまた貸しを一つ追加しておこう。


「レオンさん! 助けてくださいよ!」


 俺の仕事部屋に駆け込んできたリュウは、息を切らしながら急いで扉を閉めて俺の机の前に歩いて来た。椅子に座っている俺を見下せるほどの身長も無いから、仕事をしながら聞く事にした。……こいつに見下されるのは腹が立つんだよね。


「セイレーンさんが、俺の内政案にケチを付けるんです。そればかりか……」


 話を聞くとリュウの考えた新しい農作業の方法を説明したら、セイレーンが切れたらしい。あの子もラミアも元は孤児だからか、食べ物の事に関しては厳しい。

 前に一度だけ説教をされた。夕食に出された野菜を残した時に、二人がそれを責めるから二人に食べて良いと言ったら、


「「絶対に駄目!!」」


 残す事を許さない二人に、最後まで食べるようにと言われて食べる俺は、転生前の学校の給食を思い出した。誰だって苦手な物くらい有るよな。


 その事を考えると、リュウの農作業の話には喜びそうなんだけど?


「糞尿を生活の場所に置くと病気の原因になるから、畑の肥料にしようと言ったら凄い睨んできてその説明を何度も聞き返してくるんですよ! しかも同じ質問を……」


 ああ、こいつ馬鹿だ。


「……なんて聞かれた?」


「なんで糞尿を片付けるのかと、それを何処に片付けるのか、この二つを物凄く睨んで何度も何度も聞いてくるんですよ! 最後のなんか許して下さいって言ったのに、それでも何度も何度も、」


 俺も、確かにそんな農業の方法を聞いた事が有る。でも絶対に出来ないって事がわかっていたから、その手の話には関わらない様にしていた。

 農業とか小学校の時の授業で少しやっただけだけど、素人が口を出すと碌な事にならないし、この世界で使えると証明するのに時間が掛かりそうだったから……面倒くさいから手をつけない。


「それよりも、お前って元は農業とかしてたの? 家が農家とか、農業高校とか大学とか、」


 それを聞いたリュウは腕を組んで、自慢げに


「全く有りませんが、知識だけなら有ります!」


「帰れ!」


「ひ、酷くないですか! 絶対に成功しますって!」


「はぁ、ならお前が証明しろよ。多分、10年以上掛かると思うけど、使った時と使わない時の収穫量とか質とかの違いを書類にまとめて、有効的な農法だって証明しろ。……因みに自腹でやれよ。」


 それ以上の問題が有るから、成功してもその農法が認められるとも思わないけどね。農業は失敗すると大変な事になるから、今までのやり方を変えようなんて誰も考えないんだよ。


「えぇぇぇ! 俺、農業したこと無いんですけど、」


 なら黙っててくれよ。大体、俺に報告するな! 俺は領主じゃ無いんだよ。それにお前は農業よりも戦闘技術を磨け! 農業の事に口を挟む暇が有れば、その能力で農家の人達を護る事だけ考えろ……お前は馬鹿だから余計な事をするなよ。


「レオンさんは、領民の生活を豊かにしてあげようとか考えないんですか?」


「……俺の領地じゃあない! 俺の仕事は、代理として書類なんかを片付けるだけなんだよ。後は、人を配置したり、金を集めて必要な所に配るのが仕事! それ以上はしたくないし、忙しくて出来ないんだよ!」


「良いと思うんだけどな……」


 そんな無駄な会話をしていると、俺の部屋の扉が開けられた。話題のセイレーンの笑顔に、リュウは恐怖している。あの笑顔は相当怒っているな。


「この馬鹿を借りて良いでしょうか?」


「好きにして良いよ。」


「俺を売る気ですかレオンさん! たす、ギェ!!!」


 喋っている途中に片腕で胸倉を掴まれたリュウが、そのまま持ち上げられて空中で足をバタバタと動かしているのを気にもしないで、セイレーンは俺に笑顔を向けてくる。


「父は、この馬鹿の意見に賛成なんかしませんよね? もし賛成するんだったら……」


 俺にも飛び火してきてるじゃないか! この馬鹿勇者が! セイレーンは適当に返事すると逆に怒るんだよ! 正直、俺にも容赦しないから怖いんだよな。


「有効なら考える。でも、リュウの説明だと駄目そうだから保留にした。」


「本当ですね?」


「……嘘です。面倒くさいから止めただけです。大体、俺の仕事じゃあないし……」


「父にはまた後で聞くとして、この馬鹿は連れて行きます。」


 締め上げられているリュウは、空中で俺を見て助けを求めているように見えた。多分気のせいだな。


「目を逸らさないで助けて下さいよ!!!」


 さて、仕事に戻ろう。書類仕事をしたら、今度は住民の苦情やらを聞いたりしないといけないんだから俺も忙しいんだよ。どうでも良い事で争う住民にも頭を悩まされる勇者……俺でなくてもいいよな?


 その後の苦情は、勇者リュウの言動に対する批判だった。農作業に口を出すな! と言う事らしい。素人に口出しされると経験者は腹が立つんだよね。……リュウの奴の所為で、何で俺が愚痴を聞かないといけないんだ! 俺だって被害者なんだけどな。





 それからしばらくして王都を目指して村を出た俺達は、久し振りに王都に行きたいと言う3姉妹とエンテと離れたくないと言うレテーネさんを連れている。エンテに憎しみの篭った眼差しが、降り注いでいるが気にしない。

 バスなんか、明らかにエンテの横で文句を言っている。お前はエンテの後輩だろうに、


「先輩、死んでください。」


「……本当に、パーティの解散を考える時期に来たのかもな。嫉妬も大概にしておけよバス。」


 馬車にレテーネさんと一緒に仲良く乗っている姿は、見ていて微笑ましい。微笑んでいるのは妻帯者だけだけどな!


「最初だけなんだよな……」


「俺の嫁さんも昔は良かった。……昔はな!」


「子供が出来るまでだな。賭けてもいい。」


 微笑みながらそんな会話をするギルドメンバーを見ていた俺は、自分以外がイチャイチャした雰囲気を嫌う駄馬の上に乗っている為に、その光景を見るしかない。


『……相手が馬なら速攻で寝取ったな。』


「イライラするよねツックン。レオンさんもお姫様と結婚したらあんな感じですかね?」


 俺の横を歩かせているリュウが、俺に質問してくる。代わりたいなら代わるぞ! 誰が好き好んで外堀から埋めて来る姫様と結婚したいと思うよ! ああ、こいつは思っているのか。


「良いか二人とも、あんな感じになる事なんか無い! 相手は王族なんだから、こっちが気を使いながら生活しなくてはいけないような相手なんだよ。……だから、結婚などするものか!」


「無理でしょう。外堀埋められてて逃げ場なんか無いですよ。」


『小さい野郎だな。俺は、王都に行ったら他国の牝馬と色々するから、時間を稼いでくれれば文句は無いけどな。』


 役に立たない転生者共が!!! ……? あれ、そう言えばなんか引っかかるな。王都に何か有ったような。


「結婚話よりも、歴代勇者の武具を破壊した事の方が重要ですよね。その辺の事って大丈夫なんですか?」


「今調べて貰っている所だってよ。神殿の書物を調べて貰っているから、その報告とかも聞く為に王都まで来いってさ。」


『本当にイラつくな。あのエンテとか言うガキは! 一度ボコボコにでもするか?』


 駄馬は相変わらず話に参加しないな。しても良い事は無いけどさ。……あ! 思い出した。王都には『ヒース』が居るんだった。

 俺が駄馬に忠告しようとすると、前方から物凄い土煙が近づいて来ていた。ギルドメンバー達全員が、戦闘準備を終わらせて待ち構える中、


『ゲッ!!!』


「レオン様! お迎えに上がりました。」


 ヒースに乗ったアルゴが、俺達の出迎えに来ただけだった。だが、ヒースは俺の所……駄馬の所まで全力疾走してきて、


『く、来るんじゃねーー!! 勇者様助けて!!!』


 都合の悪い時だけ勇者様か……ここは見捨てよう。嫌がる駄馬をその場に留まらせ、アルゴと会話をする事にした。手綱を使い無理矢理に駄馬の動きを封じるのも苦労する。


「王都は、受け入れの準備が済んでいるのでこのまま同行します。」


「頼むよ。」


『無視するなこの屑勇者!!! リュウ! お前も見ていないで助けろ。俺様の家来だろう。』


「え、嫌だよ。それに家来じゃあ無いからね。」


 騒ぐ駄馬が、ヒースに擦り寄られている光景を遠くからギルドメンバーが笑いながら見ていた。ただ、レテーネさんだけが、少し悲しそうと言うか、寂しそうに見ていた。


「もう王都はお祭り騒ぎですよ。レオン様の結婚話で持ち切りでしたから……それより、本当にアステアの姫様と結婚されるんですか? なんか王子様が、その事で相当王妃様と揉めたみたいなんですけど?」


 な、なんだと! そんな事になっているのか。だけどここは落ち着こう。大丈夫だ……確りと否定して、結婚なんかしないと言ってこの話を終わらせよう。


「それからオセーンの『エリアーヌ』皇女もお着きになっていますよ。」


『何で息が荒いんだよ!』


「……オセーンの皇女が何で居るんだ?」


 あれ、可笑しいな? なんだか嫌な予感がしてきたぞ。逃げるか? もう逃げて何もかも捨ててやろうかな。


「え? だって……お二人との結婚だって聞いてますよ。」


「羨ましいなレオンさんは、俺にもメイドさんを紹介してくださいよ。」


『ちょっ! 本当に勘弁してくれよ。』


 横から会話に割り込んだ馬鹿のリュウは無視して、俺はアルゴから聞いた情報を考えた。……王妃様、俺はそんな話聞いていませんよ!!!


「な、なんで! 何時からそんな話になっているんだ!」


「半年以上前から決まっていましたよ。でも、流石レオン様ですよね! 俺も尊敬しますよ。二人も同時に結婚するなんて、親父が言ってました。」


「なんて?」


「人生の墓場にようこそって! 人生の墓場って何なんですかね? お袋に聞いたら、親父を引き摺って何処かに連れて行ったんで聞いてないんですよ。」


 ルーゲルさんも色々と苦労しているんだな。だけど、ようこそって……そんなに結婚って酷いのか? 転生前も結婚はして無いからわからないが、同僚の話だと大変だとしか聞いていない。

 それよりも、問題が単純に2倍になった事が問題だ!


『擦り寄るな!!! 舐めるな!!! 誰か助けて!!!』


「俺は、普通の女性と結婚したいから……今回の話は断る積りだ。」


 俺の発言に目を見開いて驚いたアルゴは、


「ほ、本気ですか! ここまで準備が進んでいるのに、それを断れるんですか。」


「ん? 準備が進んでいるって言っても顔合せだろう?」


「だって、アステアの姫様はそのままアルトリア中央神殿で式の予約を……」


 何それ! 本当に怖いんですけど!!! それ以前に誰か止めろよ! どう考えてもその行動は可笑しいだろうが!


「婚約の式をする事には、周りも賛成していましたよ。王妃様が意外にもノリノリで驚きましたけど、」


『無視か! 無視なのか! お前等そんなに俺の事を妬んでいたのか!』


「……俺、嫌われているのかな?」


 嫌がって暴れている駄馬の上で、肩を落として本気で落ち込んだ! 有り得ないよね? 王族が、辺境の貴族の息子と結婚とかさ。


「安心して下さい! レオン様は嫌われてなんか居ませんよ。オセーンの皇女なんか、まだ11歳なのに、」


「ちょっと待て!!! 今、11歳とか言わなかったか? 聞き間違いだよな? 間違いだと言ってくれ!!!」


 俺の叫びに、アルゴは笑顔で止めを刺してきた。


「間違いじゃあ有りませんよ。エリアーヌ様は、11歳のオセーンの勇者でも有る皇女様ですから。王族の結婚に年齢なんか関係有りませんから、」


 最悪だ。俺の想像の2倍くらい斜め上を行くくらい最悪だ。結婚相手が11歳? 犯罪では無いだろうか……はっ! 弱気になるな俺! 何時もここで諦めているから状況が好転しないんだ。

 落ち着いて考えるんだ。この状況を乗り切る事だけを考えろ! ……あ、俺ってそんなに頭良くないや。


「誰か助けて!!!」

『誰か助けて!!!』


 俺の叫びが、駄馬の叫びと重なる……最後まで煩い奴だな。

 次回こそ王都でヒロインとの顔合せ! 長かった……気がします。それから沢山の感想やご指摘ありがとうございます。

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